社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
なぜ血液型と性格は関係あると思ってしまうのか?
血液型で人間性が決まるなんて
あなたは「血液型による性格診断」を信じていますか?たとえば「A型だから几帳面」といった感じに。血液型による性格診断は血液型別の本などが発売されて、ブームにもなりましたが、最近では、血液型と性格は根拠なく結びつけられている、という話をよく耳にします。それでは、血液型による性格診断とはいったいどういうことなのか。今回はそんな血液型と性格の謎について調べていきます。関係ない説が濃厚?
2014年、縄田健悟氏の論文「血液型と性格の無関連性―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―」によると、血液型と性格の関連性がない可能性を示すものとして、松井豊氏によって、1980年代、4回にわたって行われた実験が大きな意味を持つと記されています。そこでは、血液型と性格のあいだには特別な関連性は見られなかったとのことでした。では、そもそも、いつごろから血液型と性格は関係がある、とされたのでしょうか。一説には1927年、教育学者の古川竹二氏が発表した論文『血液型による気質の研究』からだといわれています。古川氏は知識重視の入試方法に疑問を抱き、性格によっても判断されるべきだという考えのもと、血液型の性格分類の研究を始めました。
のちにこの研究がテレビ番組によって広められ、それを見た視聴者が血液型と性格の関係を信じるようになったということです。
海外では信じられないこと
ところで、血液型の話で盛り上がるのは日本だけ、という話をよく耳にしますが、実際のところはどうなのでしょうか。そもそも、海外では自分の血液型を知らないという人が多く、性格との関係も気にしません。日本人が何かと血液型の話を持ち出すのに違和感、不快感を示している人もいるといいます。不快感の一番の原因は、やはり差別的なイメージがあるからでしょう。血液型で性格や人柄を決めつけて、相手に不快な思いをさせる「ブラハラ(ブラッドタイプ・ハラスメント)」は嫌がらせからいじめにまで発展する場合もあります。
謎の「当たっている感」バーナム効果
ただ、「根拠がない」といわれているにもかかわらず、「当たってる」と思うことはありませんか。これは、なぜなのでしょうか。これを心理学の領域では、「バーナム効果」といいます。これはアメリカの心理学者・ポール・ミール氏が提唱したもので、誰にでも当てはまりそうな内容を指摘されたとき、「自分のことかもしれない」と思い込んでしまう心理のことです。「今、迷っていますね」「先が見えませんか」と聞かれると、多くの人が頷くでしょう。それはまさに「自分にも当てはまる」と思い込んでしまっているのです。そのため、「血液型が〇〇だとその人は××」というイメージがあると、自分も「そういうところがある」と当てはめてしまいます。それが「当たっている感」につながっているのです。
それでも話題になるのはなぜなのか
しかし、ここまで「関連性はない」とされながらも、話題にのぼってしまうのはなぜでしょうか。考えられる理由の一つは、人間は「〇〇系」と分類することが好きだ、ということ。もう一つは、「傾向」という「可能性」をどこかで信じているからでしょう。NEWSポストセブンの『「血液型と性格に関係なし」に7万人調べた血液型研究家反論」』という記事では、
“九州大学の講師が、「血液型と性格との関係に科学的根拠はない」との論文を発表。日米1万人を対象に調査を行って執筆されたこの論文は、血液型性格診断が大好きな日本人にショックを与えた。しかし、統計学による血液型の傾向を研究する血液研究家の金澤正由樹さんはこう話す。「これまで、7万人以上の血液型を調べ、統計を取った結果を見ると、やはり血液型と性格は、関係があると思います」”
と書かれています。
また、血液型の話は、話し下手な人が話のきっかけをつかむテクニックとしてもたびたび紹介されており、関係の如何を問わず、ポジティブな面で活かされています。いずれにしても、血液型と性格に関する議論は今後も続いていきそうです。
<参考サイト>
・縄田健悟氏論文:血液型と性格の無関連性―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_85.13016/_pdf
・NEWSポストセブン:「血液型と性格に関係なし」に7万人調べた血液型研究家反論
http://www.news-postseven.com/archives/20141022_281167.html
・縄田健悟氏論文:血液型と性格の無関連性―日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_85.13016/_pdf
・NEWSポストセブン:「血液型と性格に関係なし」に7万人調べた血液型研究家反論
http://www.news-postseven.com/archives/20141022_281167.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23


