社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
ドラえもんのひみつ道具「通り抜けフープ」はもう完成している!
実在するのは「通り抜けフープ」
タケコプター、どこでもドア、スモールライト、もしもボックス、暗記パン、タイムマシン…。小さな頃、ドラえもんの「ひみつ道具」があったらいいのに、と思ったこと、ありませんか。東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授・大関真之氏は、そのひみつ道具のうちの1つがすでに開発されていると言います。そのひみつ道具とは、壁に貼ると穴が開き、壁を通り抜けられるようになる「通り抜けフープ」です。そして、現代の通り抜けフープとは、「超電導」です。超電導という言葉、どこかで聞いたことがある方が多いかもしれません。実は、今まさにJR東海がリニア中央新幹線で実用化を進めている「リニアモーターカー」や、病院で身体や脳のなかを詳しく覗くときに使われる「MRI」に、超電導が使われています。
では、超電導とは何なのでしょうか。大関氏は著書『先生、それって「量子」の仕業ですか?』の中で、「電気抵抗ゼロ、つまり、何の抵抗もなく電気を容易に流すことができるという現象です」と書いています。実は特定の金属を冷やすと、その金属の電気抵抗がゼロになります。すると、電気がその金属の中を通り抜けられるようになるというわけです。超電導は、まさに現代の通り抜けフープなのです(人間が通り抜けできるわけではないですけどね)。
リニアモーターカーもMRIも太陽電池も「量子」の仕業
ところで、超電導はなぜ起こるのでしょうか。それは「量子」の仕業です。量子とは「物理量の限界単位」で、子どものときに学校で習った「原子」や「分子」は、量子世界に存在しています。この量子世界では、私たちの世界で考えられないような現象がいくつも起こっています。たとえば、量子世界の小さな粒は、物質をすり抜けることがあります。2015年、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授がノーベル物理学賞を受賞しましたが、その梶田教授が研究している「ニュートリノ」という小さな粒は、何と「人間の体はもちろん地球ですらまるごとすり抜けていってしまいます」と同書にあります。また、先ほど説明した超電導は、金属の中を電気の粒たちが通り抜けやすくなる現象です。量子世界では、「すり抜け」が当たり前のように起こるのです。こうした量子の不思議な現象を利用した技術は、実は超電導以外にも数多くあります。コンピューターを動かしている「半導体」は量子の特性を上手に利用していますし、「太陽電池」「デジタルカメラ」「レーザーポインタ」なども量子現象を活用した技術です。さらに最近は、「量子コンピューター」という画期的なコンピューターの開発も進んでいます。あれもこれも、実は量子の仕業なのです。
量子を研究すれば、タイムマシンができるかも?
そんな量子世界ですが、研究はまだまだ発展途上だと言われています。しかし、これから研究が進んでいくと、どんなことが可能になるのでしょうか。大関氏は同書に中でこんなことを語っています。「宇宙には過去に生まれて散らばっているたくさんの小さな粒がいます。この小さな粒を捕まえて、どこから来たのかを訊ねることができたら、タイムマシンはできるのではないでしょうか」
つまり、もしかするとドラえもんの「ひみつ道具」の1つである「タイムマシン」が今後、開発される日が来るかもしれない、ということです。量子研究には、このように、さまざまな夢と可能性が秘められているのです。
<参考文献>
『先生、それって「量子」の仕業ですか?』(大関真之著、小学館)
https://www.amazon.co.jp/dp/409388515X/
<関連サイト>
大関真之氏の研究室ホームページ
http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~mohzeki/
『先生、それって「量子」の仕業ですか?』(大関真之著、小学館)
https://www.amazon.co.jp/dp/409388515X/
<関連サイト>
大関真之氏の研究室ホームページ
http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~mohzeki/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた
55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと
戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか
5Gとローカル5G(1)5G推進の背景
第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
マスコミは本来、与野党機能を果たすべき
マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える
政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
BREXITのEU首脳会議での膠着
BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着
2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
健康経営とは何か?取り組み方とメリット
健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~
近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21