社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
プロサッカー選手の年俸査定の方法って?
シーズン終盤に行われる査定会議
日本ではここ近年、各競技がプロスポーツ化に向けての動きを強めています。その中でもメディアで報じられる機会の多い競技の一つはサッカーのJリーグです。選手によっては年俸1億円を超えるとも言われる競技ですが、選手の年俸を決めるうえで必須になるのが一般的な社会人と同じ「査定」になります。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」が発行している「Jリーグ選手名鑑2017」によると、最も高い年俸を得ているのは、日本代表で史上最多の出場試合数を誇るガンバ大阪のMF遠藤保仁選手の1億5000万円と推定されています。また昨年度のJリーグMVPに輝いた川崎フロンターレのMF中村憲剛選手、横浜F・マリノスのDF中澤佑二選手らも推定年俸1億円を超えています。
さて、この年俸、クラブ側はどのように査定しているでしょうか。同雑誌ではかつてJリーグの強化スタッフを経験した小見幸隆氏が査定方法の一例を明かしています。
インタビューによると年俸の査定会議は、クラブの強化部長やゼネラルマネジャー(GM)といったフロント陣で行われ、現場を統括する監督が同席するケースはないそうです。会議が開かれるタイミングは、シーズン最終戦前の2週間ほど前から、予算に応じて各選手への年俸の割り振りを決めていく仕組みとなっています。
その年俸の割り振りの決め手となるのが、査定となります。ではその査定とは、どのように行われているのでしょうか。
ポジションによって評価基準が違う
サッカーはプロ野球と比べると、結果に残る数字が「出場試合・時間数」「ゴール数」「アシスト数」と数少ないです。ただクラブ側も各種データを仕入れることで、選手一人ひとりの評価を詳細に行っているそうです。あるクラブは独自の評価表を用意しており「ABCDE」の5段階ないし「ABCDEF」の6段階をもって評価します。ただサッカーにはゴールキーパー(GK)、ディフェンダー(DF)、ミッドフィールダー(MF)、フォワード(FW)と大まかに4つのポジションがあります。そのため選手のプレーするポジションによって査定内容を変える必要があります。
例えばFWやMFといった攻撃的なポジションの場合、重要視されるのはチームを勝利に導くゴール数、もしくはゴールをアシストした回数などになります。その一方で守備面も評価の要素となりますが、攻撃面に比べると査定の優先度として低くなる傾向になります。逆にGKとDFはタックルや失点数など、守備面への貢献度に比重がかかります。
また査定には知名度も考慮されます。最も分かりやすいのは日本代表への選出でしょう。W杯予選など全国的に注目度の高い試合に出ることはクラブにとっても有意義なことで、もちろん代表選出にはクラブでの活躍ぶりが土台となっています。そのため日本代表クラスになれば3000~5000万円くらいの年俸が“相場”となってくるそうです。
若手はツラい!?代表で大活躍したあの選手の意外な年棒
その一方で若手選手はどうなのでしょうか。Jリーグの規約上、新卒入団時には「C契約」、「B契約」と年俸上限が480万円に決まっている契約方法からスタートし、出場時間数を伸ばすことで年俸上限のない「A契約」を勝ち取るプロセスを踏みます。ただA契約となってもまだ実績で評価できる材料が少ないので、比較的安価な年俸の選手が多いです。その代表的な例は、今年5月から6月に行われたU-20ワールドカップに出場した堂安律選手(G大阪)です。堂安選手は同大会で4人抜きのスーパーゴールを決めるなど4試合で3得点の大活躍を見せました。ただ昨季、J1リーグ戦ではわずか3試合出場だったこともあり、今季の推定年俸は480万円となっています。しかし今季はG大阪でも活躍を見せているため、来季以降、年俸の大幅アップも可能性があると思われます。
前述した遠藤選手、中村選手、中澤選手は長年にわたって所属クラブ、日本代表でも安定したプレーで勝利に貢献してきました。安定したプレーを見せ続ける選手はクラブ側にとって“計算できる選手”で、年俸は自ずと上がっていくことになります。
<参考文献>
『エル・ゴラッソ Jリーグ選手名鑑2017』(株式会社エス・アイ・ジェイ)
『エル・ゴラッソ Jリーグ選手名鑑2017』(株式会社エス・アイ・ジェイ)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏によれば、AIが不得手なのは、暗黙知・常識に基づく高度な判断である。人間の役割はこうした暗黙知を捨てず、個々の状況での判断力を磨いていくことだ。暗黙知を支...
収録日:2017/07/24
追加日:2017/10/30
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13


