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DATE/ 2017.09.27

マイホーム、5つのリスクと賢い選び方

 近年、住まいにまつわる状況が激変しています。たとえば、リーマンショック以降、中古マンション市場が大きく盛り上がり、2016年には首都圏の中古マンションの成約戸数が新築マンションの供給戸数を初めて逆転しました。

 2019年には「日本の世帯数が5307万戸でピークアウト」を迎え、2022年には「生産緑地の2022年問題」、2030年には「空き家が2167万戸を超え、3戸に1戸は人が住まなくなる」と言われており、今後は大量の土地や住宅が市場に供給されることが予想されています。

 「生産緑地の2022年問題」とは、簡単にいうと、都市部で生産緑地に指定された農地の特別な減税措置が2022年に終了するため、その多くの農地所有者が土地を手放すだろうと予測されている事案です。

マイホームの5つのリスク

 かつて日本はマイホームを異常に重視してきました。しかし、そうした状況も変わりつつあります。将来の物件の値上がりが期待できないなか、マイホームのリスクを強く意識する人が増えてきています。

 『週刊東洋経済』2017年8月合併号「わが家の賢い選び方」という特集では、『サラリーマンは自宅を買うな―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方」』の内容をもとに「自宅を持つ5つのリスク」を指摘しています。

 まず、「01長期ローンを返済しきれるかどうか」。次に「02買って気がつく見えない費用」があること。たとえば、固定資産税やマンション購入の場合は管理費、修繕積立金が発生します。

 それから「03自宅は機会損失を生む」。自宅購入によって住居地が縛られると留学や転職の機会が失われることになります。

 「04収入の拡大が制限される」。住居費が増加にともない、生活費以外の余力に乏しくなり資産形成が困難になります。

 最後は「05資本の活用を考えると割に合わない」。この章の冒頭でも述べたことですが、将来の物件の値上がりは大きくは期待できないため、資本の活用という点では損する可能性が高いのです。

12年以上住み続けたら購入の方がお得

 住宅を購入する際は、前述の「02買って気がつく見えない費用」に気をつける必要があります。

 『週刊東洋経済』では、「見えないコスト」を見える化したうえで、賃借と購入を比べ、実際にどちらが得するのかを検証しています。

 もちろん、条件によって損得は変わります。本誌では、物件価格5500万円、そのうち頭金400万円として、住宅ローン5100万円を35年固定金利1.5パーセントでシミュレーションしています。

 その結果、12年住み続けたら購入の方がお得という結果になりました。

 自分の条件に合わせてシミュレーションをしてみたいという方は、不動産価値可視化ツール「HowMa(ハウマ)」を検索してみてください。本誌のシミュレーションも「HowMa(ハウマ)」を使って行われています。

「住む」ためだけでなく「稼ぐ」住宅

 既存の価値観に縛られていては、マイホームを賢く選択することはできません。たとえば、家は自分や家族が「住む」ではなく、「稼ぐ」こともできます。「稼ぐ」といっても、念頭に置いているのは、不動産投資ではありません。

 不動産投資も「稼ぐ」の範囲に含めることはできますが、プロの投資家と勝負するのはそう簡単ではありません。それよりも、もっと手軽にできることがたくさんあります。たとえば、今ホットな「民泊」や「副業」の商材として家を活用する人たちが増えてきています。

 あえて京都の古民家を購入して、最初の10年は自宅として使い、その後は民泊施設として活用するプランを持つ人について『週刊東洋経済』で紹介されていました。

買うなら、郊外の良質で手頃な中古物件が狙い目

 『2025年東京不動産大暴落』の著者・榊淳司氏も近い将来、都内の不動産が暴落することを予測しています。「ZUU online」のインタビュー記事では、今後の住居の購入について「今は賃貸にしておいて購入はもう少し待ったほうがいいですね。ただ、子供を落ち着いた環境で育てたいが、あまり住居費かけたくないといのであれば、郊外の安いマンションを買えばいいのです」とアドバイスしています。

 都心と異なり、郊外では新築と中古の価格の乖離が激しいため、郊外でマンションを買うなら、高い新築にこだわるより、良質で手頃な中古物件を狙う方が良いでしょう。

 都心では、この先も土地の価格が下がらない見込みで、都心の新築マンションについては「今後は一部の富裕層のみが購入できる、特殊な市場が形成されていくのではないでしょうか」と予測しています。

 専門家によって多少の意見の差はありますが、将来的に都内の不動産がリーズナブルな条件で借りられる時代がやってくることは、ほぼ間違いなさそうです。それにともなって、平日は都心で賃貸、休日は郊外の持ち家でという暮らし方も増えてくるかもしれません。

 「colocal」(マガジンハウス)によると、すでに栃木県宇都宮市は、宇都宮ともう一つの地域との関わりを持つ「ダブルプレイス(二地域生活)」というライフスタイルを打ち出して、移住者を募っています。

 いずれにしても、選択肢が広がり、幸も不幸も損得も、知恵の絞り方次第となるでしょう。

 賃貸も持ち家も、それらの立地も、ライフステージに合わせて住み替えていける柔軟さを持つことが賢いマイホーム選びの鍵となりそうです。

<参考文献・参考サイト>
・『週刊東洋経済 2017年8月12日・8月19日合併号』(東洋経済新報社)
・『サラリーマンは自宅を買うな―ゼロ年世代の「自宅を買わない生き方」』(石川貴康著、東洋経済新報社)
・『2025年東京不動産大暴落』(榊淳司著、イースト・プレス)
・不動産市場の未来はどうなる?『2025年東京不動産大暴落』で伝えたかったこととは
https://zuuonline.com/archives/171868/2
・新しい暮らしの楽しみ方。「宇都宮ダブルプレイス」のすすめ。
http://colocal.jp/topics/think-japan/local-action/20150501_46776.html
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