テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.07.13

スマホにイヤホン…自転車事故の実状とは?

 日常的に自転車を利用している人も多いと思いますが、きちんと交通マナーを守って安全な走行ができていますか?

 2017年12月、神奈川県で起こった自転車事故で、自転車に乗っていた女子大学生が左手にスマホ、右手に飲みもの、左耳にはイヤホンをしたまま走行し、歩いていた高齢女性に衝突して死亡させてしまった事例があります。そこまではしない、という方もいるかもしれませんが、ついスマホをしながら、つい音楽を聞きながら、といった乗り方に心当たりがある方もいるのではないでしょうか。

 平成29年中に発生した自転車事故はおよそ9万件、1日平均約246件も起こっていて、私たちの身近で起こりえる事故だということが分かります。今回は私たちが起こすことも、巻き込まれることも考えられる、自転車事故の実態を紹介しましょう。

年間9万件の自転車事故が発生

 警察庁交通局の調べによると、平成29年中の全交通事故の発生件数は47万2165件で、その中で自転車事故の発生件数は9万407件にのぼっています。いずれの数値もここ10年で減少傾向にはあるものの、交通事故全体で占める自転車事故の割合はおよそ2割程度で推移していて、一定数の自転車事故が起こっていることが分かります。

 特に自転車の事故が多い年代はシニア層だと思われがちですが、実はもっとも高い割合を示すのは若年層なのです。自転車の事故による死傷者の割合を年代別に見てみると、もっとも多いのが15~19歳で、全体の19%も占めています。これは高校進学を機に自転車通学を始める人が多いことに加え、交通ルールに対する意識がまだまだ希薄であることなどが理由として挙げられます。

事故の原因の大半は「安全不確認」

 では、なぜ自転車事故が起こってしまうのでしょうか。交通事故の原因の多くは安全を確認しないで走行する「安全不確認」によるものが大半を占めています。自転車の事故は対自動車の割合が半数を占めていますが、出会い頭、右左折時の事故が特に多くなっています。車道で路上駐車の車を避けるときに後方を確認しない、右折時に左右の確認をしないなど、ちょっとした「大丈夫だろう」という気のゆるみが大きな事故につながってしまうのです。

 こうした不注意で、自転車に乗っているときに自動車や自転車と衝突して、自分がケガをする危険性もありますが、自分の運転する自転車で歩行者にケガを負わせてしまうこともあります。対歩行者の事故は自転車事故の約3%程度と、その割合は多くないように見えますが、場合によっては高額な賠償金を請求されてしまう可能性もあるのです。

小学生に対して9500万円の損害賠償のケース

 当時小学5年生の男児が夜間自転車で走行していたところ、歩いていた年配の女性と正面衝突してしまった事故で、女性は意識が戻らない昏睡状態に陥ってしまいました。裁判の結果、慰謝料や医療費などを合わせて、小学生側に総額9500万円もの損害賠償の支払いを命じられたのです。

 これだけの高額賠償になってしまったのは、この事件が相手にケガを負わせてしまい民事責任を問われてしまったことが要因のひとつに挙げられます。そして自動車と異なり、多くの人は自転車の自賠責保険に入っていないことも、当事者の負担を大きくしてしまっているのです。この事故を受けて、兵庫県では自転車の任意保険の加入を義務づける条例が制定されるなど、多くの人に自転車の任意保険の加入を勧める声が広がっています。

たかが自転車、されど自転車

 未成年なのに、たかが自転車事故なのに、と思われる方もいるでしょう。しかし自転車も軽車両の一種、事故を起こしてしまえば相手に重大なケガを負わせてしまう、場合によっては死亡させてしまうことも十分にありえるのです。

 同じように、かなりのスピードが出ている走行中の気のゆるみで、自分が大ケガを負ったり、死亡してしまう場合もあります。左側通行、信号を守る、危険な運転をしない、そうした当たり前の交通ルールを守って、安全に自転車を使うようにしましょう。

<参考サイト>
・交通事故弁護士ナビ:【2018年最新版】自転車事故による交通事故の発生件数と実態
https://jico-pro.com/columns/82/#toc_anchor-1-20-2
・警察庁交通局:平成29年中の交通事故の発生状況
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/H29zennjiko.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

青春期は脳のお試し期間!?社会的ニッチェと信頼の形成へ

今どきの若者たちのからだ、心、社会(2)思春期の成長、青春の脳

思春期にからだが急激に成長することを「思春期のスパート」と呼ぶ。先行して大きくなった脳にからだを追いつかせるための戦略である。脳はそれ以上大きくならないが、脳内の配線が変化する。そうした青春期の脳の実態を知るた...
収録日:2024/11/27
追加日:2025/07/12
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長
2

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果

会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査

日本の財政をくまなく検査し、その収入と支出を把握する会計検査院。日本のメディア報道などでは、予算の決定や補助金などの政策決定については詳しく報じられるが、それがどのように実際に使われたかは、ほとんど言及がない。...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/11
田中弥生
東京大学客員教授
3

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

正岡子規と高浜虚子の論争、その軍配と江藤淳暦年のテーマ

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(3)正岡子規と高浜虚子の「リアリズム」

正岡子規の死後、高浜虚子が回想で述べた師・子規との論争。そこに「リアリズムとは何か」のヒントが隠されていると江藤淳氏は言う。子規と虚子、それぞれの「リアル」とは何か、そしてどちらが本当の「リアル」なのか。近代小...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/09
與那覇潤
評論家
4

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

AI時代の「真のリアル」は文芸評論の練達の手法にあり!

編集部ラジオ2025(14)なぜAI時代に文芸評論が甦るのか

どんどんと進む社会のAI化。この大激流のなかで、人間の仕事や暮らしの姿もどんどん変わっていっています。では、AI時代に「人間がやるべきこと」とはいったい、何なのでしょうか? さらにAIが、驚くほど便利に何でも教えてく...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/07/10
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

マネへの強烈なライバル意識…セザンヌ作品にみる現代性

作風と評論からみた印象派の画期性と発展(1)セザンヌの個性と現代性

印象派の最長老として多くの画家に影響を与えたピサロ。その影響を多分に受けてきた画家の中でも最大の1人がセザンヌだが、その才覚は第1回の印象派展から発揮されていた。画面構成や現代性による解釈から、セザンヌ作品の特徴...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/10
安井裕雄
三菱一号館美術館 上席学芸員