テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.09.06

世代・地域別にみるタバコ喫煙率の実態

 職場や飲食店での分煙や禁煙の流れはかなり速いスピードで広がっています。国も受動喫煙対策を推し進めていますが、特に東京都では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国に先駆けて条例が定められています。こういった状況にともない、タバコをやめる人も増えているようです。ここでは実際にデータを見ながら喫煙率の実態を確認してみましょう。

2018年の喫煙率は17.9%

 JTの「全国たばこ喫煙者率調査」によると、2018年5月時点での喫煙率は年代別、またそれぞれ男女別に以下の通りです。

20代:男性23.3% 女性6.6%
30代:男性33.1% 女性11.1%
40代:男性35.5% 女性13.6%
50代:男性33.0% 女性12.0%
60代:男性21.3% 女性5.4%
全世代平均:男性 28.2% 女性8.7%

 男女ともに40代を山の頂点として、その前後、40代から離れるほど低くなっています。男性の方が喫煙率は高いです。これを男女合計での喫煙率でみると、17.9%となります。この数値を2017年と比較すると、男性は0.4%減、女性で0.3%減です。喫煙人口でみると、男性で20万人減、女性で17万人減、計37万人減という数字です。1年間で合計37万人がたばこをやめた、というのはなかなか大きな変化だと言っていいでしょう。

 この変化について、調査を発表したJTは「要因は複合的であり一概には言えませんが、高齢化の進展、喫煙と健康に関する意識の高まり、喫煙をめぐる規制の強化や、増税・定価改定等によるものと考えております」とコメントしています。こういった状況を受けて、現在のJTは医療や加工食品事業を展開するなど、経営を多角化しているようです。

昭和40年代の喫煙率はなんと80%超え

 もう少しさかのぼってデータを見てみましょう。男性の喫煙率に絞ると大きな変化が起きています。

 1965年(昭和40年)以降でもっとも男性の喫煙率が高かったのは、1966年(昭和41年)の83.7%です。対して、2018年の男性の喫煙率は28.2%、つまりおよそこの50年で55%以上減少しています。また、男性は2002年まではどの世代も50%を超えていますが、グラフはほぼ右肩下がりで推移しています。一方、女性の喫煙率は年代による変化はあまりなく、ほぼ横ばいです。今から考えると、男性喫煙率80%超えというのはちょっと信じがたい数値です。

成人喫煙率の高い地域、男性トップは佐賀県

 2016年に国民生活基礎調査(厚生労働省大臣官房統計情報部の行った調査)によると、都道府県別成人喫煙率が高い都道府県トップ5は以下の通り(熊本地震の影響により熊本県のデータは含まない)。対象者は、『現在習慣的に喫煙している者(これまで合計100本以上又は6カ月以上たばこを吸っている(吸っていた)者のうち、「この1カ月間に毎日又はときどきたばこを吸っている」と回答した者)』です。

・男性
1位:佐賀県
2位:青森県
3位:岩手県
4位:北海道
5位:福島県

・女性
1位:北海道
2位:青森県
3位:群馬県
4位:神奈川県
5位:千葉県

 男女ともにランクインしているのは青森県と北海道です。もしかしたら、人口密集度が低いといった、副流煙の問題が比較的起きにくい地域では喫煙率が高いのかもしれません。ただ、女性4位の神奈川県、5位の千葉県といったところは、この理由からは説明しづらいので、もっと他の要因も関係しているでしょう。

 ちなみに喫煙率の低い都道府県は男性では、京都府、奈良県、東京都、徳島県、石川県。女性では島根県、鳥取県、鹿児島県、福井県、岐阜県といった地域です。このあたりの理由に関しては、年代別で一番喫煙率の高い40代の人口比率や、その他の地域特性を細かく分析してみる必要はありそうです。

オリンピックへ向けて規制はもっと厳しくなる

 たばこの値段はここ数年で一気に値上がりしています。たとえば、2008年度から2017年度の日本での販売一位銘柄はセブンスターです。現在の価格は460円。2006年は300円だったので、160円値上がりしています。これは主に消費税やたばこ税の値上げに関連した価格の上昇です。

 最近では病院や学校、オフィスはもとより、喫茶店でも全面禁煙というところも増えています。繁華街では比較的広い道路に喫煙所が設けられていますが、少し離れたエリアに行くとコンビニの喫煙所に人だかりができている光景も目にします。筆者の知り合いの喫煙者は「職場も家も禁煙。いまはコンビニの喫煙所が唯一のオアシス」だといいます。

 多くの先進国では屋内を全面禁煙とし、喫煙室の設置もできないという基準になっているそうです。また国際オリンピック委員会(IOC)も「たばこのない五輪」を目指しています。この先、東京オリンピックを控える日本で規制が今以上に厳しくなることは避けられそうにありません。

<参考サイト>
・JT:2018年「全国たばこ喫煙者率調査」、男女計で17.9%
https://www.jti.co.jp/investors/library/press_releases/2018/0730_01.html
・公益財団法人健康・体力づくり事業財団:厚生労働省の最新たばこ情報
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
・国立がん研究センターがん情報サービス:喫煙率
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/smoking.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

医療から考える国家安全保障上の脅威(3)NBC兵器をめぐる最新情勢

2006年ロシアのKGB元職員暗殺には「ポロニウム210」というNBC兵器が用いられた。これは、検知しやすいγ線がほとんど出ない放射線核種で、監視の目を容易にすり抜ける。また、2017年金正男氏殺害に使われた「VX」は、2種の薬剤を...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/15
山口芳裕
杏林大学医学部教授
2

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
3

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!

『法華経』といえば紀元1世紀から3世紀に成立したといわれる大乗仏教の代表的経典である。厳しい修行や哲学的思索を行う出家が中心だった当時のインド仏教に対し、誰もが平等に成仏できると説く『法華経』は画期的なものだった...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/04
鎌田東二
京都大学名誉教授
4

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

健診結果から考える健康管理・新5カ条(5)コレステロールは運動では減らない

コレステロールは中性脂肪と混同されがちだが、まったく異なる性質の脂(あぶら)である。コレステロールには、消化酵素になるなど3つの使い道があるが、摂り過ぎると運動しても簡単になくならないため、血管の変化を引き起こし...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/13
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
5

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授