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収入や学歴よりも幸福度を上げる要素とは?
幸福とは何でしょうか。たとえば、高学歴で大企業に勤め、収入がたくさんあって世間の羨むようなステータスをもっていること、これはたしかに幸せの一つの形かもしれません。
しかし、果たしてそれだけが幸せの形でしょうか。どんなにお金をもっていても不幸な人は不幸ですし、たとえ高学歴でなくても、有名企業に勤めていないとしても、また収入がそれほど多くなくても、幸福度が高い人はたくさんいるはずです。では、ほんとうの幸福とは何なのか、「自己決定」をキーワードに考えていきたいと思います。
さらに、調査結果に対しては所得、学歴、自己決定、健康、人間関係の5つの要素と幸福感との関係について分析がおこなわれました。冒頭にも述べた「自己決定」とは、読んで字の如く、「自分の意思で決める」ということです。
「自己決定度」を評価するにあたっては「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、つまり「自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否か」について尋ねました。
「所得」と幸福感の関係をみると、やはり所得が増加するにつれ幸福感も増加しました。やっぱりお金は大切です。ただし、その幸福感の増加は1100万円で最大となりました。2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンも同様のことを指摘しました。年収900万円くらいまでが幸福度の増加のピークにあたるという話です。
「自己決定」をしてきた人というのは、自分で目標を設定し、それに向かって努力し、目的を成し遂げ、「達成感」を味わっている人たちです。あるいは失敗したとしても、人のせいにすることなく、結果に対して「責任」と「誇り」、高い「自尊心」をもっています。こうした人たちは幸福感が高いのではないかという結論を論文では示しています。
ただし、残念なことに、国内全体をみてみると、国連の世界幸福度報告書が指摘しているのですが、日本は「人生の選択の自由度」が低いとされています。
また、自分で選択することは「集中力や持続性を高める効果があるため、選択した分野で成功する可能性も高くなる」のだそうです。棋士の藤井聡太さんが受けていたモンテッソーリ教育や、同じくオルタナティブ教育と言われているドイツのシュタイナー教育は自己決定や自発性を重視しています。
「選択の自由」があれば、自己決定できるようになり、幸福感も高まり、責任をもつようになります。逆に言えば、選択の自由が少ないと、幸福感が減るだけでなく、主体的に関わることを避け、責任をとることをも避けようとするようになるのではないでしょうか。
いま、無責任な態度は個人だけでなく日本社会全体にも広く蔓延していますが、もしかすると、それを根本的に解決する鍵が「自己決定」という要素にあるのかもしれません。
しかし、果たしてそれだけが幸せの形でしょうか。どんなにお金をもっていても不幸な人は不幸ですし、たとえ高学歴でなくても、有名企業に勤めていないとしても、また収入がそれほど多くなくても、幸福度が高い人はたくさんいるはずです。では、ほんとうの幸福とは何なのか、「自己決定」をキーワードに考えていきたいと思います。
日本人の幸福感の最新動向
神戸大学の社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と、同志社大学経済学研究科の八木匡教授は、2018年2月8日から2月13日にかけて全国の20歳以上70歳未満の男女2万人に対して幸福感に関するアンケート調査を行いました。2018年2月ということは、できたてホヤホヤの調査結果です。日本人の幸福感の最新動向を知ることができます。さらに、調査結果に対しては所得、学歴、自己決定、健康、人間関係の5つの要素と幸福感との関係について分析がおこなわれました。冒頭にも述べた「自己決定」とは、読んで字の如く、「自分の意思で決める」ということです。
「自己決定度」を評価するにあたっては「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、つまり「自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否か」について尋ねました。
幸福感の増加は年収1100万円がピーク
調査結果によると、「年齢」と幸福感の関係では、若い時期と老年期に幸福感が高いことがわかりました。だいたい、35歳から49歳頃に幸福感は落ち込んでいくのだそうです。つまり、幸福感の高い若い時期とは、40代くらいまでということですね。「所得」と幸福感の関係をみると、やはり所得が増加するにつれ幸福感も増加しました。やっぱりお金は大切です。ただし、その幸福感の増加は1100万円で最大となりました。2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンも同様のことを指摘しました。年収900万円くらいまでが幸福度の増加のピークにあたるという話です。
「年収」や「学歴」よりも「自己決定」
5つの要素のうち幸福感に与える影響が大きかったのは、上から順に「健康」、「人間関係」、「自己決定」でした。「年収」や「学歴」よりも「自己決定」の方が大きかったのが驚きです。ちなみに「学歴」は幸福度にはほとんど影響はありませんでした。「自己決定」をしてきた人というのは、自分で目標を設定し、それに向かって努力し、目的を成し遂げ、「達成感」を味わっている人たちです。あるいは失敗したとしても、人のせいにすることなく、結果に対して「責任」と「誇り」、高い「自尊心」をもっています。こうした人たちは幸福感が高いのではないかという結論を論文では示しています。
ただし、残念なことに、国内全体をみてみると、国連の世界幸福度報告書が指摘しているのですが、日本は「人生の選択の自由度」が低いとされています。
無責任社会と子育て
ほんとうの幸福とは何かを考えることは、ほんとうの教育とは何か、を考えることと通じています。アンケート調査を主導した西村和雄さんは、出演したTOKYO FMの番組「クロノス」において、子育てに関して「子どもが何かをやりたいと言ったときには、やらせてみることが大切」と述べていました。また、自分で選択することは「集中力や持続性を高める効果があるため、選択した分野で成功する可能性も高くなる」のだそうです。棋士の藤井聡太さんが受けていたモンテッソーリ教育や、同じくオルタナティブ教育と言われているドイツのシュタイナー教育は自己決定や自発性を重視しています。
「選択の自由」があれば、自己決定できるようになり、幸福感も高まり、責任をもつようになります。逆に言えば、選択の自由が少ないと、幸福感が減るだけでなく、主体的に関わることを避け、責任をとることをも避けようとするようになるのではないでしょうか。
いま、無責任な態度は個人だけでなく日本社会全体にも広く蔓延していますが、もしかすると、それを根本的に解決する鍵が「自己決定」という要素にあるのかもしれません。
<参考サイト>
・神戸大学:所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査
http://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html
・神戸大学:所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査
http://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html
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