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DATE/ 2019.03.20

バイトテロはどのように発覚して拡散するのか?

 2019年1月から2月にかけて、「バイトテロ」とも呼ばれる飲食店やコンビニエンスストアなどのアルバイト店員によるインターネットへの不適切動画の投稿や発覚が相次ぎ、大きな騒ぎとなりました。

 主なケースに、1月29日「すき家」での“氷を投げる、おたまを下半身に当てる”、2月6日「くら寿司」での“ごみ箱に入れた魚をまな板に載せようとする”、2月9日「セブン‐イレブン」での“おでんのしらたきを口に入れて出す”、2月10日「バーミヤン」での“調理中の鍋から上がった炎でたばこに火を付ける”、2月16日「大戸屋」での“ズボンを脱いで下半身をトレーで隠す”などが挙げられます。

 なぜこのようなバイトテロは起こるのでしょうか。そしてどのように発覚して拡散しているのでしょうか。その背景には、会員制のインターネット交流サイト(ソーシャル・ネットワーキング・サービス;SNS)の普及と、さらにはSNSの機能拡張があると考えられます。

トレンドは「バカッター」から「バカスタグラム」へ

 バイトテロは2013年にも相次いで発生しています。例えば、「ローソン」での“アイスクリーム用冷凍庫に横たわる”写真、「バーガーキング」での“大量のパンの上に大の字になる”写真などがインターネットに投稿され、拡散しました。

 当時は「Twitter(ツイッター)」への投稿に端を発することが多く、そのことから「バカッター」とも呼ばれ、社会問題ともなりました。

 2013年の現象は“第一次バイトテロ”ともいえ、当時は写真投稿が主流でしたが、冒頭で紹介したような今回の“第二次バイトテロ”ともいえる現象の特徴は、動画投稿が主流となっている点です。

 仲間内での受けを狙った動画が外部に流出・拡散するケースが目立つようになっており、特に「Instagram(インスタグラム)」での投稿による発覚・拡散が多いことから、「バカスタグラム」と揶揄されるようにもなってきています。

仲間内の24時間限定の「ストーリー」のはずが大炎上

 ではなぜ、数あるSNSや写真・動画共有アプリのなかで、特にインスタグラムの利用が目立っているのでしょうか。その背景には、2016年から通常の投稿とは別に追加された機能、「Stories(ストーリーズ;通称・ストーリー)」の存在があります。

 「ストーリーズ(ストーリー)」の特徴は、写真や動画をスライドショーのような形式で投稿できることと、24時間限定の公開で自動的に削除されることにあります。さらにユーザー指定で非公開にすることもできるため、限られた仲間内で動画を共有することを前提とした利用ができます。そのため、心理的抵抗が希薄になりやすく、盛り上がるために過激な投稿もしやすくなるといった素地ができあがります。

 しかし、ツイッターのリツイートやフェイスブックのシェアのように他者の投稿を拡散できる“リポスト”という機能があること、コミュニケーション戦略が専門で東北大特任教授・人事コンサルタントの増沢隆太氏が「一定時間で消えるといっても、画面越しにカメラで動画撮影するなど、拡散する方法はいくらでもある」と提言しているように、たとえ限定的なSNSであったとしてもインターネットを介して発信した情報は、常に世界に拡散し大炎上となるリスクをはらんでいます。

 実際、元小学校教員でITジャーナリストの高橋暁子氏が「投稿を見ている仲間のネットリテラシーも低く、面白がって不用意に転載しているケースが多いのではないか」と述べているように、一度投稿した動画をすぐに削除しても拡散してしまうケースは増えています。さらには、悪意をもった第三者が過去の動画を探し出し、多様かつ利用者の増加したさまざまなSNSを使って再び拡散し、収集がつかなくなる事態も多発しています。

当事者たちのその後と「バイトテロ」の今後

 その後、当事者たちはどうなったのでしょうか。まず、「バイトテロ」被害にあった会社側の対応は、厳罰化に向かっています。2019年2月8日、くら寿司を展開するくらコーポレーションは「バイトテロ」を行ったバイト2人を退職処分としたうえで、偽計業務妨害容疑での刑事告訴や損害賠償請求などの民事での法的措置の準備を進めていることを発表し、「多発する不適切行動とSNSの投稿に対し一石を投じる」としています。

 他方、すき家とバーミヤンは退職処分に、セブン‐イレブンと大戸屋は退職処分のうえに法的措置の検討もしています。企業法務に詳しい弁護士の多湖翔氏が「バイトテロは業務妨害罪に問われる可能性がある<中略>企業側が法的措置を取ることで、いたずら心を抑制する一定の効果はある。アルバイト側も、不適切な動画の投稿が刑事や民事事件に発展する恐れがあることを認識する必要がある」と述べているように、今後はさらに、アルバイト側にもモラル意識の向上と最低限の法認識が必要になってくると思われます。

 一方、研修サービスを行うホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長の有本均氏が「数年前、問題が注目された際に企業は一時的に研修を徹底したが、バイトが入れ替わり、研修を受けていない層が大半になっている<中略>企業側はバイトが過ちを犯さないよう教育する仕組みを構築することに力を入れるべき」と述べているように、企業側にもアルバイト教育を通した、社会に対する責任がより問われることとなってくるでしょう。

 そして、安易に不適切な動画を拡散したり惑わされたりしないために、社会の一員である私たち一人ひとりのネットリテラシーの向上と適切な運用が、今こそ社会インフラとして何よりも求められているのかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・「悪ふざけ写真投稿/バカッター」、『イミダス2018』(集英社)
・「インスタグラム」、『デジタル大辞泉』(小学館)
・「セブンのバイト 不適切動画投稿 2人を解雇」(『読売新聞』2019年2月10日付)
・「「バイトテロ」事業者が科す「厳罰」の効果」(『産経新聞』2019年2月13日付)
https://www.sankei.com/life/news/190213/lif1902130037-n1.html
・「外食・コンビニ 従業員が不適切動画 「バイトテロ」拡散」(『読売新聞』2019年2月19日付)
・「悪ふざけ動画、拡散止まらず バイトがSNS投稿 」(『日本経済新聞』2019年2月19日付)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41440830Z10C19A2CC0000/
(10MTV編集部)

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