テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.05.11

日本人の国際結婚で最も多い組み合わせは?

日本人に多い国際結婚の組み合わせ

 日本人の国際結婚というと、どんな組み合わせをイメージするでしょうか。日本人夫とフィリピン人妻と答える方が多いかもしれませんが、それはもう過去のデータになっています。新型コロナウイルス感染症による影響前のデータになりますが、厚生労働省の「人口動態統計」をもとにニッセイ基礎研究所の天野馨南子研究員が作成した日本国内における国際結婚カップルの国籍組み合わせランキングによると、確かに1996年は日本人夫とフィリピン人妻が全体の23.4%で1位ですが、2016年には日本人夫と中国人妻が全体の26.1%で1位になっています。

 このランキングの2016年分をさらにたどると、2位は15.9%で日本人夫とフィリピン人妻、3位は11.1%で日本人夫とその他の国の妻、4位は9.6%で日本人夫と韓国・朝鮮人妻と続きます。そして5位に、9.5%で日本人妻とその他の国の夫がランクイン。これが日本人妻との組み合わせの1位ということになります。さらに6位は7.7%で日本人妻と韓国・朝鮮人夫、7位は5.0%で日本人妻とアメリカ人夫で、ここまでが日本人妻との組み合わせの上位3位。

 その他の国はヨーロッパ圏が大半を占めるとされており、日本人男性がアジア圏の女性と国際結婚することが多いのに対し、日本人女性はより広い範囲の国の男性と国際結婚することが多いとわかります。

 このようにいろいろな国の人との国際結婚のデータを見ると、日本でも国際結婚が増えているように感じますよね。しかし意外なことに、日本国内での国際結婚は2012年ごろから婚姻数全体の3%台を横ばいしている状態で、増えていないのです。

なぜ国際結婚は増えないのか

 なぜ、日本国内での国際結婚は増えないのでしょうか。まず、日本人が結婚に対して保守的な点が上げられるでしょう。特に日本人男性は、もともと自分より年上だったり高学歴だったりする女性を敬遠する傾向が強く、結婚のハードルを上げがちです。このため、2015年の国勢調査では50歳時点での未婚率が女性より高く、女性は7人に1人が未婚であるのに対し、男性は4人に1人という結果が出ました。ここに外国人という条件が加われば、多くの日本人男性がためらうのもうなずける話です。

 実は日本国内での国際結婚が婚姻数全体の3%台を推移しているとはいえ、日本人女性の国際結婚の割合は増えています。この点から、女性のほうが結婚に対して自由で柔軟な価値観を持っていると考えられます。日本人妻との組み合わせの1位がその他の国の夫であるのも、多様性を受け入れていることのあらわれといえるでしょう。

 また、2005年に出入国管理及び難民認定法、いわゆる入管法が改正された影響もあるといわれます。当時の日本には、バブル期に急増したフィリピンパブで働くフィリピン人女性がたくさんいました。しかしこの女性たちに違法な労働をさせる事件が多発したため、入管法の改正によって在留資格の審査を厳格化します。こうして日本に来るフィリピン人女性が減少したため、日本人夫とフィリピン人妻の国際結婚も減ったというわけです。

今後は増える可能性が高い

 それでは今後も国際結婚は増えないのかというと、そんなことはなさそうです。なぜなら、コロナ禍以前には日本が国策として外国人の受け入れ態勢を拡大していたからです。以前から日本は少子化問題に頭を悩ませていますが、その要因のひとつに労働人口の減少があります。そこで、この人手不足を補うために入管法が改正され、労働目的での入国も認めることになりました。現在はコロナ禍に伴い規制がされている中ですが、いずれは多くの職場で外国人が雇用され、一緒に働くことになる未来がくるかもしれません。

 実は、現状の国際結婚の件数は少ないものの、多くの日本人が国際結婚を「あり」と思っているデータもあります。婚活アプリを運営するマッチアラーム社が、アプリ会員である20代・30代の独身男女1516人に実施したアンケートによると、「国際結婚はあり」という回答は男性で63.3%、女性で69.9%と男女ともに過半数を大きく超えました。また現在は思うように外国に行き来できない日々が続いていますが、オンラインを利用したコミュニケーションの場も増えてきています。「好きになったら国籍は関係ない」と考える人が多く、このような意識の傾向も将来的に国際結婚が増える要因になるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・ニッセイ基礎研究所 日本国内における「国際結婚・この20年の推移」-未婚化社会データ考察-「その先に在る運命の人」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=56881?site=nli
・PR TIMES <独身男女の意識調査> 20・30代女性の約7割が「国際結婚はあり」と回答
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000005816.html
・行政書士武原広和事務所 法改正・新制度情報2005年
http://takeharahirokazu.com/gozonjidesuka2005/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
4

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授