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DATE/ 2019.11.02

「世界遺産」が最も多い国は?日本は何番目?

 フランスのモンサンミッシェル、カンボジアのアンコールワット、アメリカのグランドキャニオン……。世界遺産は世界各地に点在し、人生に一度は行ってみたいスポットとしても人気を集めていますよね。しかし、世界遺産って何?と聞かれたときに、はっきりと説明できる人は多くはないでしょう。今回はそんな世界遺産について紹介していきましょう。

世界遺産とは?

 世界遺産とは、1972年に国連の機関であるユネスコ総会で採択された世界遺産条約(正式名称「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)に登録されたもののことをいいます。貴重な建造物・遺跡などの「文化遺産」、稀少な動植物の生息地や特徴的な自然などの「自然遺産」、そして両方の特徴を併せ持つ「複合遺産」の3つに分けられ、2019年時点では世界中で1121件の世界遺産が登録されています。

 世界遺産に登録される前提条件には「移動が不可能な土地・建造物に限る」というものがあり、移動可能な仏像など移動可能な美術品はその対象になりません。また、真実性や完全性の条件を満たしていること、適切な保護管理体制がとられていること、そして登録基準となる10の項目のいずれかを満たしていることが条件になります。こうした条件を満たした上で、条約締結国の推薦、専門委員会の調査、世界遺産委員会の審査を経て、はじめて世界遺産へ登録されるのです。

世界遺産がもっとも多い国は

 1位 イタリア/中国:55
 2位 スペイン:48
 3位 ドイツ:46

 2019年時点の世界遺産の数は1121件で、その数がもっとも多い国は同率1位でイタリア、中国でした。かつては国全体が美術館といえるほどのイタリアが単独1位でしたが、多くの自然遺産を持つ中国が年々世界遺産の数を伸ばし、イタリアに並ぶようになっています。

 2位スペイン、3位ドイツと続きますが、世界遺産の分布を見ても約5割を占めるのがヨーロッパ。人類の歴史を考える上でもその数が突出しているのは納得できるでしょう。

日本にある世界遺産

 2019年時点、日本にある世界遺産は23件で、その数は世界12位にランクインしています。日本で初めて世界遺産が誕生したのは1993年、文化遺産2件(法隆寺地域の仏教建造物、姫路城)、自然遺産2件(屋久島と白神山地)で、以降徐々に国内の世界遺産の数は増えています。

 富士山も世界遺産に登録されていますが、意外なことに自然遺産ではなく文化遺産としての登録になります。単なる自然としての価値ではなく、信仰の対象や芸術の源泉としての価値が認められたことがその理由となっています。

 2019年には百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されたことが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。2020年に向けて奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島の世界遺産登録を目指していて、その動向がどうなるかは注目を集めているところでもあります。

人類の宝でもある世界遺産

 世界が認めた世界遺産は素晴らしいものでもありますが、その根本にあるのは人類共通の宝を守っていこうという考え方です。世界遺産が観光地として有名になり多くの人が訪れるのは好ましいことですが、ゴミのポイ捨てなどでその場所が汚されてしまうのは本末転倒というもの。

 世界遺産におもむく際にはその場所が文化的にどんな価値があるのか、希有な自然としてどれだけの価値があるのか、そうしたことを考えて訪れてみると、よりその素晴らしさを感じることができるのではないでしょうか。

<参考サイト>
・日本ユネスコ協会連盟
https://www.unesco.or.jp/
・世界遺産オンラインガイド
https://worldheritagesite.xyz/
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授