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DATE/ 2020.02.08

外国人が働きたい国ランキング、日本の順位は?

 厚生労働省によると、2018年10月末時点の日本における外国人労働者数は1,460,463人。この人数は前年同期比181,793人・14.2%の増加で、2007年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新しています。

 多くの外国人が働くようになった日本ですが、日本は世界的にみて働きやすい国なのでしょうか。「働きたい国ランキング」の一例から、考察してみたいと思います。

「働きたい国」の上位国の特徴とは?

 2019年7月、イギリスの金融大手HSBCホールディングスより、「Expat Explorer survey」(2019年版)の調査結果が公表されました。「Expat Explorer survey」は、毎年自国から離れて暮らしている駐在員を対象に実施されているその国での生活に対する意識調査で、2019年で12年目となります。

 そして、「Expat Explorer survey」の中で、以下の「各国の駐在員が働きたい国ランキング」が発表されました。

 「各国の駐在員が働きたい国ランキング」(2019年)
【順位/国・地域(2018年順位)】
1位:スイス(8位)
2位:シンガポール(1位)
3位:カナダ(4位)
4位:スペイン(14位)
5位:ニュージーランド(2位)
6位:オーストラリア(6位)
7位:トルコ(24位)
8位:ドイツ(3位)
9位:アラブ首長国連邦(10位)
10位:ベトナム(19位)
11位:バーレーン(5位)
12位:マン島(英王室属領)(※初登場)
13位:ポーランド(25位)
14位:アイルランド(18位)
15位:香港(17位)
16位:マレーシア(15位)
17位:フランス(11位)
18位:インド(12位)
19位:ジャージー(英王室属領)(※初登場)
20位:スウェーデン(7位)
21位:メキシコ21位(15位)
22位:タイ22位(21位)
23位:アメリ力23位(23位)
24位:フィリピン24位(28位)
25位:ガーンジー(英王室属領)(※初登場)
26位:中国(27位)
27位:イギリス27位(22位)
28位:イタリア28位(※初登場)
29位:サウジアラビア29位(26位)
30位:南アフリ力(29位)
31位:インドネシア(13位)
32位:日本(30位)
33位:ブラジル(31位)
※「Expat Explorer survey」(2019年)の実施概要:30を超える国と地域に住む、自国から離れて住む18歳以上の18,059人の駐在員を対象に毎年実施。最小回答数を100と定め、2019年版は100以上の回答を得た33の国・地域が統計対象となっている。調査期間:2019年2月~4月。調査対象者:HSBCの顧客・オンラインコミュニティ参加者・ソーシャルメディア利用者。

 ランキング結果に対し経済評論家の加谷珪一氏は、「上位に並んでいる国は2種類に大別することができます。ひとつは高賃金です。スイス、シンガポールがその典型ですが、賃金が圧倒的に高いという特長があります。<中略>一方、カナダ、スペイン、ニュージーランドといった国は、賃金はそこそこですが、ワークライフバランスや満足度といった項目の点数が高く、これが総合順位を押し上げています」と、述べています。

「働きたい国」でなぜ日本はワースト2位に?

 他方、33の国・地域中32位という残念な結果となっている日本について、加谷氏は「日本のランキングが著しく低いのは、何かが大きく足を引っ張っているのではなく、すべての項目において評価が低いことが原因です。<中略>低賃金、長時間残業、教育水準の低下は、今の日本人にとっても重要なテーマです」と、評しています。

 加谷氏が日本の「重要なテーマ」と評する「低賃金」「長時間残業」「教育水準の低下」の片鱗は、以下の「分野別評価」結果からうかがうことができます。

 「日本の分野別評価」(「各国の駐在員が働きたい国ランキング」(2019年)より)

【暮らし部門】35の国・地域中15位
生活の質13位
心身の健康20位
充実感18位
コミユニテイの文化度と受容性26位
政治的安定6位
定着の容易さ(社会へのなじみやすさ)32位

【仕事部門】33の国・地域中30位
収入33位
手取り収入(可処分所得)19位
経済的安定13位
昇進(キャリアアップ)19位
成長の可能性16位
ワークライフバランス33位

【子育て部門】33の国・地域中33位
友達づくり32位
教育33位
学校24位

 2019年現在の日本は、【暮らし部門】はまずまずの結果となっていますが、【子育て部門】は最下位、【仕事部門】も33の国・地域中30位と悪く、さらに部門の下位項目では「収入」「ワークライフバランス」「教育」といった、まさに「低賃金」「長時間残業」「教育水準の低下」に相当する項目が最下位となっています。

職場へのAI導入→生産性向上→ワークライフバランス

 ところで、日本の時間当たり労働生産性は主要先進7カ国で最も低く、大きな課題となっています。

 例えば、2019年12月に日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2019」においても、2018年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は46.8ドル(4,744円)となっており、データが取得可能な1970年以降、主要先進7カ国での最下位の状況が続いています。

 これらのデータから日本は、世界的にみて労働生産性が低く、働く人にとって魅力的ではない国だということがみえてきます。

 しかし現状のままでは、日本は世界に取り残されてしまいますし、なにより日本に住む人々や日本で働く人々を働くことによってかえって不幸にすることになりかねません。そこで加谷氏は、職場にAI(人工知能)を導入し、業務そのものを変革させ、日本の生産性を向上させることを提案しています。

 生産性向上のためのAIの導入というと漠然としていますが、例えば、RPA(robotic process automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)でオフィスの単純事務作業を自動化・効率化したり、IoT(Internet of Things;モノのインターネット)の活用によって製造業の効率化を図ったりするなどが挙げられます。ドイツのシーメンス社は工場全体で、自動車部品メーカー最大手のデンソーは会社全体で、マレーシアは国家全体でIoT化に取り組み、生産性を向上しているといいます。

 職場にAIを導入することが目的ではなく、例えばAIを導入することによって生産性向上させ、結果としてワークライフバランスを実現させることにより、「低賃金」「長時間残業」「教育水準の低下」などの課題を解決していく。それによって世界からみても働きやすい国に職場環境を発展させていくことが、今こそ日本にも、求められています。

<参考文献・参考サイト>
・外国人雇用状況 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03337.html
・Expat Explorer Survey - How markets compare│HSBC
https://expatexplorer.hsbc.com/survey/
・「外国人が働きたい国」で日本が33カ国中32位――この国の“真に深刻な問題”とは - ITmedia
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/27/news026.html
・外国人が「住みたい、働きたい」国ランキング - Business Insider Japan
https://www.businessinsider.jp/post-198008
・外国人が見る日本での暮らしやすさは最下位グループ HBSC駐在員意識調査結果
https://careergrowth.showcase-tv.com/hsbc-expat-explorer-survey-2019/
・外国人が働きたい国ワースト2位をどう評価すべきか
http://k-kaya.com/archives/8900
労働生産性の国際比較|公益財団法人日本生産性本部
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/
・「「IoT」「RPA」の導入で「製造業」「非製造業」とも20%の向上」『リベラルタイム』(2019年5月号、加谷珪一著、リベラルタイム出版社)
・「AI(人工知能)」『イミダス2018』(宿輪純一著、集英社)
・「RPA」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)
・「IoT」『現代用語の基礎知識 2019』(自由国民社)
(10MTV編集部)

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