テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.04.07

「定年前にやっておけばよかったこと」第1位は?

 定年退職後はどんな生活をすればいいのでしょうか。長寿国として知られている日本ですが、今後も寿命は延び続けるようです。週刊ポストの記事では、現在55歳から60歳の男性の半数は90歳を越え、女性の半数は100歳近くまで生きるという推定が示されています。こうなると、定年退職は人生の折り返し地点の一つ、くらいに考えていいのかもしれません。ということで、ここで一度定年退職後の生活をイメージしてみましょう。どう過ごせば悔いのない人生と言えるのでしょうか。資料として「再雇用制度で働く会社員の意識調査」の結果を参考にしてみましょう。

定年退職前にしておけばよかったこと1位は「資産運用」

 「再雇用制度で働く会社員の意識調査(第2弾)」を行ったのは、高齢者の就労支援を行う株式会社マイスター60という会社です。この会社は「年齢は背番号 人生に定年なし」がキャッチフレーズ。高齢化が言われ1990年に設立された、シニア人材に特化した派遣会社の草分け的存在です。少し前のデータですがアンケートは2019年11月にインターネットリサーチとして行われ、対象は「定年退職後に再雇用制度を使って働いている60歳から65歳の全国の男性500名」です。以下は、アンケートで「定年退職前にしておけばよかったと思うこと」に関しては回答の多かった順にトップ5です(「特に無い」24.8%を除く)。

資産運用:38.4%
健康・体力維持改善:31.0%
趣味づくり:23.6%
資格の取得:23.0%
外国語の勉強:18.6%

 「資産運用」がトップです。「お金」が一番問題であることがわかります。また、同調査の分析では、「(同社の調査で)6割以上が再雇用制度を使っている一方で、再雇用制度で給与が現役時の半額以下に減額したとの回答は約4割」で多くの人が収入面で問題を感じているとしています。

老後の「お金」に関して自信がないとの回答は46%

 同アンケートの「あなたはこれからの人生で『健康』『お金』『生きがい』『人間関係』などに自信がありますか」という質問についても興味深い結果が出ています。

 「趣味・生きがい」に関しては「とても自信がある」7.0%、「どちらかというと自信がある」39.4%、「分からない」34.2%、「どちらかというと自信がない」15.4%、「全く自信がない」4.0%です。「とても自信がある」「どちらかというと自信がある」と答えた肯定的回答は36.4%、これに対して「どちらかというと自信がない」「全く自信がない」と答えた否定的回答は19.4%となっています。肯定的回答が否定的回答のおよそ2倍です。「趣味・生きがい」に関してはそれなりに充実している印象です。

 では「お金」に関してみてみましょう。「とても自信がある」2.6%、「どちらかというと自信がある」15.8%、「分からない」35.6%、「どちらかというと自信がない」32.6%、「全く自信がない」13.4%です。「とても自信がある」「どちらかというと自信がある」と答えた肯定的回答は18.4%、「どちらかというと自信がない」「全く自信がない」と答えた否定的回答は46.0%となっています。肯定的回答の2倍以上が否定的回答になっています。「趣味」と比較すると「お金」の問題の方がかなり大きいことがわかります。

 他の2つの項目も見てみましょう。「健康」に関しては、肯定的回答は36.4%、否定的回答が30.0%。「友人や人間関係」の項目は肯定的回答が30.4%、否定的回答が30.2%です。この2つに関しては、肯定的回答と否定的回答が拮抗しています。比較的、多くの人が将来の「お金」に関して「自信がない」ことがわかります。

定年後も自己研鑽に取り組む人は31.2%

 定年退職後はスキルや経験、資格といったものがある場合とない場合では、求人の数や給与額が大きく変わります。もちろん、資格は定年退職後でも取得可能ではあります。しかし、実際に定年退職後にこういった自己研鑽に取り組んでいる人は少ないようです。同アンケートでの「再雇用制度で働くにあたって、自己研鑽の取り組みを行っているか」という質問では、「積極的に取り組んでいる」5.8%、「どちらかというと取り組んでいる」25.4%、「全く取り組んでいない」28.4%、「どちらかというと取り組んでいない」40.4%となっています。つまり、およそ7割が自己研鑽には取り組んでいません。

 学び直し、リカレント教育(生涯学習)といった自己研鑽を再雇用の時に磨こうと思っても、なかなか踏み出すことがたいへんであることは想像がつきます。まずお金がかかります。老後の資金を学びに投資できるかと言われれば、かなりの余裕がなければ難しいでしょう。また、「気持ちの持ち方」「体力」「周囲の期待値」「頭の柔軟さ」といったものも現役の頃とは少し異なるのかもしれません。やはり現役の時から方向性を定めて勉強しておかなければ厳しいと言えます。

40代50代でのリカレント教育が定年退職後の在り方を決める

 産経新聞の記事によると、MBA(経営管理)やMIPM(知的財産マネジメント)などの学位を取得するコースがある金沢工業大虎ノ門大学院(1年制社会人向け)では40代50代の入学者が年々増加し、2017年には58%に達したとのことです。また、日経ビジネスの記事では、リカレント教育について「MBAなど上位層のビジネスパーソンを対象にしてきた大学院だけではなく、平均的なビジネスパーソンの学び直しを支援する方向へと裾野が広がってきている」としています。また文部科学省の調査では、大学への社会人入学者数は着実に増えているとのことです。

 このことは40代50代でその後の人生設計への意識から、自己投資する人が増えていることを意味しています。定年退職後を見通せば、この40代50代で何をするか、この年代で得た経験や知識、資格といったものが定年退職後の生き方の鍵を握ることは間違いなさそうです。

<参考サイト>
・再雇用制度で働く会社員の意識調査【第2弾】2020.1.27 | マイスター60
https://www.mystar60.co.jp/topics/%e3%80%90%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%80%912018-10-3-3-2-2-2-2-2-2-2-2/
・平均寿命は嘘をつく 2人に1人は100歳超まで生きる衝撃データ|マネーポストWEB
https://www.moneypost.jp/365956
・存在感増す「リカレント教育」 ミドル世代が「学び直し」|産経ニュース
https://www.sankei.com/life/news/180119/lif1801190005-n1.html
・KIT虎ノ門大学院
https://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/index.html
・リカレント教育、副業、出向…… 外に出てキャリア再考|日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00248/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
2

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 執行役員
3

サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方

サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方

会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂

人生の中で、さまざまな決断を迫られる50代。特にサラリーマンはその先の生き方について考えさせられる時期だ。作家・江上剛氏も、大きな「50代の壁」にぶつかり、人生が大きく変わったと言う。1997年に起こった第一勧銀総会屋...
収録日:2021/08/31
追加日:2021/11/09
江上剛
作家
4

デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題

デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題

危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化

ショーヴィニズム(排外主義)、反エリート主義、反多元性を特徴とする政治勢力が台頭するなどポピュリズムと呼ばれる動きが活発化する中、「デモクラシーは大丈夫なのか」という危惧がかなり強まっている。アメリカのトランプ...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/03/28
齋藤純一
早稲田大学政治経済学術院政治経済学部教授
5

 「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握

「知識の爆発」の時代、不可欠なのは世界の全体像の把握

知識の構造化のために(1)テンミニッツTVの問題意識

現在の世界において、世界の全体像を把握するのは非常に困難である。知識の爆発が起き、専門家でさえ、状況を網羅的に理解するのが不可能になっている。その際に有効な方法は、各分野において信頼できる専門家を複数見つけ、そ...
収録日:2019/07/19
追加日:2019/09/01