社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.06.09

家族と社会をダメにする「思考停止ワンワード」って?


 「別に...」「特に...」「何でもいい...」など、一言で適当にその場をやり過ごすことが、家族のコミュニケーションにおいて多くなっていないだろうか?

 空気のように楽に流したいことも少なからずあるストレス社会において仕方のないことかもしれないが、家庭環境から言葉にすることを省略していく傾向は、逆にストレス社会を育むことになりかねない。

 子どもにとって、家庭内で交わされる言葉によるコミュニケーションは、学校教育の下地になるだけでなく、人格教育にとっても重要である。

 自分の感情や意見をあらわすコミュニケーションのトレーニングは、基本的に家庭がベースになる。夫婦喧嘩は犬も食わぬといわれるが、かつて、ああ言えばこう言うとばかりにその言葉の応酬は、子どもたちにとって少なからず感情にマッチした語彙を育み、問題を収束させる感覚、フィジカルな暴力によらぬ問題解決の学習モデルになっていたはずである。

 「あうんの呼吸」「背中で語る」といった美化された日本的なコミュニケーションもあるが、江戸の文化を見るまでもなく少なからず過剰な言葉によるコミュケーションがその前景にあることを忘れてしまったかのようだ。

 そうした最低限の言葉による問題解決の学習機会を失うとどうなるか。フィジカルに訴えて暴力が過剰になり、なお、その暴力も封じられた現代において、負の感情は吹きだまり陰湿化する。結果、見えないイジメに至るか、または自らの精神を病む。

 「別に・・・」「特に・・・」「何でもいい」は、やがて「ウザい」「きもい」「むかつく」といった言葉にすることを省略する思考停止型ワンワードに集約され、感情を押し留め、問題解決を遅らせることになりかねない。

 これからの社会は格差が広がり、国際化とともに「多様化」「流動化」「細分化」の方向から社会の「バラバラ感」はさらに大きくなることが予測される。

 そうした社会と向き合うために、「自分が何を感じ、何を思い、どうしたいのか?」を伝えるための第一歩として、家庭からその場のお茶を濁す「別に...」「特に...」「何でもいい...」といった思考停止ワンワードを廃していくのはいかがだろうか。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,700本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?

戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方

2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
2

カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由

カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由

平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』

平和のための「国家連合」。このアイデアの源はサン=ピエールなのだが、現在ではカントの著作『永遠平和のために』が起源だともてはやされることが多い。その理由としては、「なぜ国家連合が必要なのか」「そもそもなぜ平和が...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/22
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
3

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割

豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割

豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
黒田基樹
駿河台大学法学部教授 日本史学博士
4

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾

逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる

「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
5

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状

生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地

日進月歩の進化を遂げている生成AIは、私たちの生活や仕事の欠かせないパートナーになりつつある。企業における生成AI技術の利用に焦点をあてる今シリーズ。まずは世界的な生成AIの導入事情から、日本の現在地を確認しよう。(...
収録日:2024/11/05
追加日:2024/12/24
渡辺宣彦
コグニザントジャパン株式会社代表取締役社長CEO