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DATE/ 2020.08.03

レジ袋有料化…マイバッグでどれくらい節約できる?

 2020年7月1日からレジ袋の有料化がスタートしました。小売業を行っている全ての事業者が対象です。ここでのレジ袋とは、プラスチック製の買い物袋のこと(生分解性プラスチックの配合率100%のもの、バイオマス素材の配合率25%以上のもの、また持ち手のない袋は対象外)。ということで、マイバッグ持参でどれくらいお得になるのか考えてみましょう。

一人当たりのレジ袋に対する年間消費額は約450円

 経済産業省の説明資料によると「プラスチック製買物袋の1枚当たりの価格が1円未満になるような価格設定をすることは、有料化には当たらない。」とされています。つまり、レジ袋は1円以上の価格にしなければなりません。実際は1枚あたり3円から5円という設定にしている店舗が多いようです。また、専門家の資料によると2017年から2018年の調査で日本でのレジ袋消費枚数は、一人当たり約150枚、これはヨーロッパの国々での中位の国の使用量と同等だそうです。つまり、1枚3円と仮定して年間150枚と考えると、年間消費額は450円となります。

 マイバッグ持参に切り替えたとしても節約できるのは450円程度。少しいいマイバッグを買った場合、元を取るには数年かかりそうです。もちろん日頃ちょこちょこ買い物する人にとってはもっとお得になるとは思われますが、おおよその金額はイメージできるのではないでしょうか。どうせ必要なら自分の使いやすい、もしくはお気に入りのエコバッグを使えた方が楽しい、というくらいに考えておくくらいがいいのかもしれません。

プラスチックゴミ問題には様々なアプローチが必要

 レジ袋無料配布が禁止された背景には、廃棄物処理問題や廃棄物輸出に関する問題、海洋プラスチックゴミ問題、地球温暖化問題といったさまざまな問題が絡んでいます。プラスチックは便利な素材です。しかし、自然分解されるまでに多くの時間を要することや、マイクロプラスチックとして生物に取り込まれることなどが問題です。最近は自然に分解されやすい「生分解性プラスチック配合率100%」や「バイオマス素材」と呼ばれる、動植物に由来する有機物(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭を除く)を利用したものも流通しています。

プラスチックゴミ問題を考えるきっかけにはなる

 経済産業省は「廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題に対処するためプラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく」としています。このこと自体は、自然環境保護のために、また国際的な協調路線を維持するためにも、国を挙げて取り組む必要があります。ただし、レジ袋は削減できたとしても、「容器包装プラスチックはこのままでいいのか」「現在の焼却処理(サーマルリサイクル)でいいのか」といった、そのほかさまざまな考えるべき大きなポイントがあることも事実です。こういったプラスチックゴミをめぐる問題に対して、今後、私たちは無関心でいることはできないでしょう。今回のレジ袋有料化は、率直に個人の経済的なインパクトは大きくはないです。しかし、プラスチックゴミ問題全般に意識を向けるきっかけにはなるかもしれません。

<参考サイト>
・レジ袋有料化 - 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html
・3R プラス原則とライフサイクル的観点からみたプラスチック素材 酒井 伸一|廃棄物資源循環学会誌、Vol.30, No.2, PP131-141, 2019
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mcwmr/30/2/30_131/_article/-char/ja/
・海洋プラスチック問題について|WWF
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
・行き場を失う日本の廃プラスチック|JETRO
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/fceb0360455b6cdf.html
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