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マスクをする国としない国の違いとは?
2020年4月28日、日本リサーチセンターとイギリスのYouGov社の提携による自主調査結果として、26カ国別の【新型コロナウイルス対策として「公共の場ではマスクを着用する」実施率】を公開しました。
≪着用率:80%以上100%未満≫
香港、中国、台湾、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナム、シンガポール、インド、日本、イタリア、アラブ首長国連邦(UAE)
≪着用率:60%以上80%未満≫
スペイン、メキシコ、サウジアラビア
≪着用率:40%以上60%未満≫
アメリカ(USA)、フランス
≪着用率:20%以上40%未満≫
カナダ、オーストラリア、ドイツ
≪着用率:1%以上20%未満≫
イギリス(UK)、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク
※調査実施日:2020年4月19日~24日
※各≪着用率:〇%以上〇%未満≫内の国名表記は順不同
ただし、イタリアでは3月11日には26%だった割合が4月23日には89%に、同様にスペインでも3月12日の5%から4月23日の66%に大幅に上昇するなど、欧米の中でも感染拡大が深刻な国を中心に、マスクを着用する人が急増しています。
ほかにも、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ(USA)、フランス、メキシコなどの着用率の上昇が目立っています。
他方、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークといった北欧は、調査開始時から直近にいたるまですべて10%未満の着用率となっており、特に着用率の低さが際立っています。
例えば日本では、全世界で流行したインフルエンザ(スペインかぜ)が日本にももたらされた1919年以降、風邪やインフルエンザのような呼吸器系疾患の感染症予防対策としても、「他者にうつさない」ことを目的とした公衆衛生の一環としてもマスクを着用することが浸透していきます。
さらに日本では1960年代頃から現在に至るまで、花粉症が一種の国民病といわれるほどの広がりをみせているため、有効な対策であるマスクの着用が一般化しています。そのうえ、病気等の理由があるためではなく、顔を隠すことを目的とする「だてマスク」の流行など、マスク着用のハードルが低いことが挙げられます。
また、新型コロナウイルス対策で抜群の対策をみせている台湾は、SARS(重症急性呼吸器症候群)で受けた大きな被害の教訓を生かし、いち早くマスクの確保・増産ならびに広く公平な配布を成し遂げ、初期から現在に至るまで、マスク着用率を高く保っています。ほかにも、MERS(中東呼吸器症候群)の被害にあい、もともとPM2・5対策などとしても活用していた韓国でも、マスクの着用率は高いといわれています。
なお、公衆衛生学が専門の関西大学教授の高鳥毛敏雄氏は、日本、台湾、ベトナム、韓国などの感染症対策の例を挙げて、「社会的システムで感染症と戦うということが成功している」と述べています(ただし、日本の事例は結核予防のための保健所という仕組みを主に取り上げています)。
反面欧米では、相手の感情を読み取るために重要な口元が隠されたマスク姿は不気味にうつり「マスク=不審者」のイメージがあったり、「マスクをしている人=病気持ちなのでは」という先入観を持ってしまったりするなど、主に文化面や心理面から、マスク着用へのハードルが高いことがうかがえます。
もちろん、物理的なマスクの入手のしやすさや義務化や懲罰、文化や国民性の違いがあることが前提ではありますが、感染症“対策”としてのマスク着用を判断する国ではなく、公衆衛生“理念”実践の一環としてマスク着用が社会システムに組み込まれた国の方が、“今は非常時で公衆衛生として感染症対策に必要なアイテムである”ということを広く全体に情報共有することができたならば、マスクの着用率は高くなりやすいのではないでしょうか。
新型コロナウイルス禍での国別マスク着用率
【新型コロナウイルス対策として「公共の場ではマスクを着用する」実施率】(26カ国)≪着用率:80%以上100%未満≫
香港、中国、台湾、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ベトナム、シンガポール、インド、日本、イタリア、アラブ首長国連邦(UAE)
≪着用率:60%以上80%未満≫
スペイン、メキシコ、サウジアラビア
≪着用率:40%以上60%未満≫
アメリカ(USA)、フランス
≪着用率:20%以上40%未満≫
カナダ、オーストラリア、ドイツ
≪着用率:1%以上20%未満≫
イギリス(UK)、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマーク
※調査実施日:2020年4月19日~24日
※各≪着用率:〇%以上〇%未満≫内の国名表記は順不同
マスク着用率・アジアは高く欧米は低い傾向
以上のように、【新型コロナウイルス対策として「公共の場ではマスクを着用する」実施率】(26カ国)の調査結果から、マスク着用率は全体的に、アジア地域で高く欧米諸国で低いことがみえてきます。ただし、イタリアでは3月11日には26%だった割合が4月23日には89%に、同様にスペインでも3月12日の5%から4月23日の66%に大幅に上昇するなど、欧米の中でも感染拡大が深刻な国を中心に、マスクを着用する人が急増しています。
ほかにも、アラブ首長国連邦(UAE)、アメリカ(USA)、フランス、メキシコなどの着用率の上昇が目立っています。
他方、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークといった北欧は、調査開始時から直近にいたるまですべて10%未満の着用率となっており、特に着用率の低さが際立っています。
感染症対策に留まらぬ、公衆衛生理念の実践
ではどうしてこれほどまでに、マスクをする国としない国の違いがあるのでしょうか。例えば日本では、全世界で流行したインフルエンザ(スペインかぜ)が日本にももたらされた1919年以降、風邪やインフルエンザのような呼吸器系疾患の感染症予防対策としても、「他者にうつさない」ことを目的とした公衆衛生の一環としてもマスクを着用することが浸透していきます。
さらに日本では1960年代頃から現在に至るまで、花粉症が一種の国民病といわれるほどの広がりをみせているため、有効な対策であるマスクの着用が一般化しています。そのうえ、病気等の理由があるためではなく、顔を隠すことを目的とする「だてマスク」の流行など、マスク着用のハードルが低いことが挙げられます。
また、新型コロナウイルス対策で抜群の対策をみせている台湾は、SARS(重症急性呼吸器症候群)で受けた大きな被害の教訓を生かし、いち早くマスクの確保・増産ならびに広く公平な配布を成し遂げ、初期から現在に至るまで、マスク着用率を高く保っています。ほかにも、MERS(中東呼吸器症候群)の被害にあい、もともとPM2・5対策などとしても活用していた韓国でも、マスクの着用率は高いといわれています。
なお、公衆衛生学が専門の関西大学教授の高鳥毛敏雄氏は、日本、台湾、ベトナム、韓国などの感染症対策の例を挙げて、「社会的システムで感染症と戦うということが成功している」と述べています(ただし、日本の事例は結核予防のための保健所という仕組みを主に取り上げています)。
反面欧米では、相手の感情を読み取るために重要な口元が隠されたマスク姿は不気味にうつり「マスク=不審者」のイメージがあったり、「マスクをしている人=病気持ちなのでは」という先入観を持ってしまったりするなど、主に文化面や心理面から、マスク着用へのハードルが高いことがうかがえます。
もちろん、物理的なマスクの入手のしやすさや義務化や懲罰、文化や国民性の違いがあることが前提ではありますが、感染症“対策”としてのマスク着用を判断する国ではなく、公衆衛生“理念”実践の一環としてマスク着用が社会システムに組み込まれた国の方が、“今は非常時で公衆衛生として感染症対策に必要なアイテムである”ということを広く全体に情報共有することができたならば、マスクの着用率は高くなりやすいのではないでしょうか。
<参考文献・参考サイト>
・新型コロナウイルス自主調査 第6回調査結果│日本リサーチセンター
https://www.nrc.co.jp/nryg/200428.html
・マスクをする国、しない国 何が違うのか?│BBC NEWS
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52045428
・マスクへの抵抗感、欧米でやわらぐ? なぜ態度が変わったのか│BBC NEWS
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53399289
・欧米人が驚くほど日本人が「マスク依存症」になった根本原因│PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/34543
・「マスク」『世界大百科事典』(平凡社)
・「花粉情報」『日本大百科全書』(饒村曜著、小学館)
・「だてマスク」[新語流行語]『イミダス 2018』(集英社)
・「公衆衛生」『日本大百科全書』(岡崎勲著、小学館)
・日本の新型コロナとの戦い支えた保健所、地域に根差す公衆衛生が効果
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-23/QC05S7T0G1L201
・「重症急性呼吸器症候群」『日本大百科全書』(田辺功著、小学館)
・新型ウイルス 台湾 “満足度80%”感染対策
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/03/0312.html
・「韓国MERS感染」[朝鮮半島]『イミダス 2018』(木宮正史著、集英社)
・欧米人がマスク嫌いだったのはなぜ? 日本との「美意識」の違い
https://otekomachi.yomiuri.co.jp/news/20200508-OKT8T217006/
・マスク苦手な欧米、心理学に答えあり 日本人との違いは
https://www.asahi.com/articles/ASN6L7WRLN67UHBI00J.html
・新型コロナウイルス自主調査 第6回調査結果│日本リサーチセンター
https://www.nrc.co.jp/nryg/200428.html
・マスクをする国、しない国 何が違うのか?│BBC NEWS
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52045428
・マスクへの抵抗感、欧米でやわらぐ? なぜ態度が変わったのか│BBC NEWS
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-53399289
・欧米人が驚くほど日本人が「マスク依存症」になった根本原因│PRESIDENT Online
https://president.jp/articles/-/34543
・「マスク」『世界大百科事典』(平凡社)
・「花粉情報」『日本大百科全書』(饒村曜著、小学館)
・「だてマスク」[新語流行語]『イミダス 2018』(集英社)
・「公衆衛生」『日本大百科全書』(岡崎勲著、小学館)
・日本の新型コロナとの戦い支えた保健所、地域に根差す公衆衛生が効果
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-06-23/QC05S7T0G1L201
・「重症急性呼吸器症候群」『日本大百科全書』(田辺功著、小学館)
・新型ウイルス 台湾 “満足度80%”感染対策
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2020/03/0312.html
・「韓国MERS感染」[朝鮮半島]『イミダス 2018』(木宮正史著、集英社)
・欧米人がマスク嫌いだったのはなぜ? 日本との「美意識」の違い
https://otekomachi.yomiuri.co.jp/news/20200508-OKT8T217006/
・マスク苦手な欧米、心理学に答えあり 日本人との違いは
https://www.asahi.com/articles/ASN6L7WRLN67UHBI00J.html
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