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定価・希望小売価格・オープン価格の違いは?
フリマなどでは「定価○○」といった表記をよく見かけます。しかし、実は「定価」が定められている商品は「書籍」や「新聞」といったごく一部の商品に限られています。これは「希望小売価格」と「定価」が混同されていることによるもの。また私たちがよく耳にするものには「オープン価格」といったものもあります。では「定価」、「希望小売価格」、「オープン価格」の違いは何なのでしょうか。少し詳しく見てみましょう。
一方「希望小売価格」はその名の通り、メーカーが販売店に希望している価格です。これはメーカーが、卸売業者や販売店それぞれのコストやもうけを予想して出荷価格に上乗せして決めています。しかし、拘束力はありません。メーカーが調整できるのは出荷価格のみです。もし「希望小売価格」に近づけるように販売店に何か圧力をかけることがあれば、独占禁止法違反となります。つまり、販売店がどれだけ安売りしても(また高く売っても)、メーカーは口出しできないのです。
ただしこうなると今度は、市場の相場価格が「希望小売価格」よりも低い商品に対して、小売店が「メーカー希望小売価格から〇〇%OFF!」といった表示で安さを強調するようになります。消費者は「これは安い!」と感じるのですが、これはどこで買ってもそのくらいの価格なわけです。こういった二重価格表示で消費者は混乱します。また、メーカーとしても「安売りされるブランド」のようなイメージがついてしまいます。こういったことから1970年代以降、主に電化製品などを中心に、あらかじめメーカーが価格を提示しない、「オープン価格」が採用されるようになりました。
このように、商品の価格をめぐるさまざまな攻防は延々と続いています。メーカー、小売店、消費者のすべてが平等で、誰もが納得できる価格設定というものがいかに難しいかわかります。また、最近はさらに話が複雑になる要素として、フリマアプリ上での高額転売が増えています。高額転売は商品の価値をゆがめてしまうばかりでなく、製品保証を受けられない可能性も出てきます。
このことに関して、実際に高額転売されているPS5の発売元のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は運営会社メルカリ社に対し「意見表明」をしています。これはともすればメーカーが販売価格に働きかけをすることになることから、メーカーとしてもかなり慎重になるところです。SIEもこのことに無自覚なわけはありません。あえて踏み込んでまでメーカーが意見を言うとことの意味は、かなり大きいのではないでしょうか。この先、高額転売に関してどのような対策を考えていくか、新たな課題と言えるでしょう。
「定価」と「希望小売価格」の違いは拘束力があるかどうか
「定価」とは、販売店が一切調整できない決められた価格です。たとえば書籍はコンビニで買っても、書店で買っても同じ値段です(電子書籍は除く)。この背景には売れない本は返品してよいという、いわゆる「返本制度」があります。これにより書籍は売れ残りで損をしなくて済むことから、書店は経営上のリスクを低く抑えることができます。消費者は書店の品ぞろえが売れる本だけに偏らないことで、幅広いジャンルのさまざまな書籍、情報、学術、文化に触れることができます。また新聞も同様に「定価」が定められています。一方「希望小売価格」はその名の通り、メーカーが販売店に希望している価格です。これはメーカーが、卸売業者や販売店それぞれのコストやもうけを予想して出荷価格に上乗せして決めています。しかし、拘束力はありません。メーカーが調整できるのは出荷価格のみです。もし「希望小売価格」に近づけるように販売店に何か圧力をかけることがあれば、独占禁止法違反となります。つまり、販売店がどれだけ安売りしても(また高く売っても)、メーカーは口出しできないのです。
オープン価格は?どういうときに用いられる?
もともと商品は「定価」で売られていたのですが、「定価」では値上げも値下げもできません。そうなると、流通コストがかかっても、売れ行きが良くても悪くても「定価」で売ることになります。これでは、小売店は採算が取れません。ここから、拘束力のない「希望小売価格」が採用されるようになりました。ただしこうなると今度は、市場の相場価格が「希望小売価格」よりも低い商品に対して、小売店が「メーカー希望小売価格から〇〇%OFF!」といった表示で安さを強調するようになります。消費者は「これは安い!」と感じるのですが、これはどこで買ってもそのくらいの価格なわけです。こういった二重価格表示で消費者は混乱します。また、メーカーとしても「安売りされるブランド」のようなイメージがついてしまいます。こういったことから1970年代以降、主に電化製品などを中心に、あらかじめメーカーが価格を提示しない、「オープン価格」が採用されるようになりました。
オープン価格だと消費者のリサーチ力が試される
「オープン価格」で二重価格表示問題は解決したのですが、そうすると消費者は、今度は自ら世の中の商品価格をしっかりリサーチしたうえで買わなければ損をする「リスク」が生まれてしまいます。価格の目安がないので、その場で高いか安いかを判断できないからです。これを知るには他店を回って自分で相場を知る必要が生じます。こうしたことから、2000年頃から価格コムを代表とするような価格比較サイトが誕生することになります。このように、商品の価格をめぐるさまざまな攻防は延々と続いています。メーカー、小売店、消費者のすべてが平等で、誰もが納得できる価格設定というものがいかに難しいかわかります。また、最近はさらに話が複雑になる要素として、フリマアプリ上での高額転売が増えています。高額転売は商品の価値をゆがめてしまうばかりでなく、製品保証を受けられない可能性も出てきます。
このことに関して、実際に高額転売されているPS5の発売元のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は運営会社メルカリ社に対し「意見表明」をしています。これはともすればメーカーが販売価格に働きかけをすることになることから、メーカーとしてもかなり慎重になるところです。SIEもこのことに無自覚なわけはありません。あえて踏み込んでまでメーカーが意見を言うとことの意味は、かなり大きいのではないでしょうか。この先、高額転売に関してどのような対策を考えていくか、新たな課題と言えるでしょう。
<参考サイト>
流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針│公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/ryutsutorihiki.html
希望小売価格とは メーカー側、目安を提示: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO41797790X20C19A2EA2000
「オープン価格」って何? 「希望小売価格」との違いは? 【ビジネス用語】|マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20190117-754514/
「PS5」に存在しない「定価」 「希望小売価格」と混同する理由(河村鳴紘) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/20201206-00211137/
SIE、PS5の高額転売でメルカリに協力要請 メルカリ「個別の協議内容にあたるため回答を差し控える」|ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/24/news147.html
流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針│公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/ryutsutorihiki.html
希望小売価格とは メーカー側、目安を提示: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO41797790X20C19A2EA2000
「オープン価格」って何? 「希望小売価格」との違いは? 【ビジネス用語】|マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20190117-754514/
「PS5」に存在しない「定価」 「希望小売価格」と混同する理由(河村鳴紘) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawamurameikou/20201206-00211137/
SIE、PS5の高額転売でメルカリに協力要請 メルカリ「個別の協議内容にあたるため回答を差し控える」|ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2011/24/news147.html
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