テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.02.11

世の中からいつの間にか消えた「モノ」は?

 昭和・平成・令和と年号が変わるにつれ、世相も街の景色も変わっています。昔は当たり前に使われていたのに、今はほとんど使われていないもの、今の十代に話しても通じないもの、懐かしさを感じるものを探してみました。

黒いアレや赤いアレのない家はなかったのに…

 いまだに昭和の世界を垣間見せてくれるのは、日曜夕方の「サザエさん」。1969(昭和44)年の放送開始以来、玄関先の電話台に置かれたダイヤル式の黒電話は、その象徴的な品物です。

 1985(昭和60)年、日本電信電話公社がNTT(日本電信電話株式会社)へと民営化され、電話端末が自由化されると、黒電話は徐々に姿を消していきました。端末機器は電気通信事業者からレンタルされるものから家電店で購入するものへ。さらにコードレスホン化、留守番電話や多機能電話を経て、今では一人1台以上の携帯を持つ時代。固定電話自体を設置しない家庭も増えただけに、電話機の下に敷かれていた白いレースの感触まで懐かしいですね。

 黒電話が圧倒的だった60~70年代、子ども部屋にはたいていペナントが飾られていました。観光地の土産物屋には、麗々しく地名を入れたペナントが必ずあり、大学のクラブやサークルも競ってオリジナルをつくったものです。ペナントの需要が減ったのは、「カメラが普及したから」「お土産としてもらっても困るから」「携帯ストラップが登場したから」など、諸説がささやかれています。ちなみにプロ野球が今でも「ペナントレース」と呼ばれるのは、優勝旗が四角いフラッグではなく、長三角形のペナントだったから。

 黒のダイヤル電話に金モール華やかなペナントの頃、ひざ小僧をすりむいて帰ると、どの家でも常備されている「赤チン(マーキュロクロム液)」が迎えてくれました。学校の保健室でつけられるのは「ヨーチン(ヨードチンキ)」。どちらもすり傷・切り傷によくしみ、「赤チンでなければ消毒した気がしない」というファンも少なくなかったものです。原材料を製造する過程で水銀を含んだ原液が出ることから法規制がなされ、2020年12月末に最後の工場が生産を終了しました。

お風呂上がりはコーヒー牛乳派? フルーツ牛乳派?

 世界的に風呂好きで有名な日本人ですが、家庭のお風呂(内風呂)普及率が6割近くに達したのは、1回目の東京五輪前年の1963年(2008年には95.1%)。夕食の前か後で銭湯へ行くのは庶民にとって社交を兼ねた楽しみな日課でした。

 銭湯の脱衣場に必ず設置されているもので、今の十代には使い道の分からないものがあります。牛乳瓶のフタを開けるアレです。正式名称は特になく、「紙蓋取り」「安全牛乳栓ぬき」などと呼ばれていたようです。

 ペットボトル全盛の現在、牛乳の紙蓋とともに消えつつあるのが、びん入り飲料の「王冠」。王冠のひだは21個あり、内側はコルク貼り、塩ビ、ポリエチレンと変化してきました。日本で王冠が開発されたのは1908(明治41)年。100年以上の歴史を持つ王冠ですが、「栓抜きがないと開けられない」「一度開けたら閉められない」などの理由から、今では昭和40年代後半の最盛期と比べると半分以下に減っているのだそう。

 牛乳の紙蓋、ビールやコーラの王冠、どちらもなんとなく集めてしまう宝物ではなかったでしょうか。ついつい集めてニマニマしていたのに今や使われなくなったものに、テレカ(テレホンカード)があります。緑色の公衆電話に入れていたプリペイドカードは1982(昭和57)年12月にNTTが発行・発売をはじめたもの。ポケベルから携帯電話へと時代が移り変わった今、テレカどころか公衆電話も圧倒的に減ってしまいました。今やテレカは金券としてではなくコレクターズアイテムとして、ヤフオクやメルカリで売買されています。

家もオフィスもインターネットが景色を変えた

 インターネット普及以前、家庭でパソコンを持つのは余程の趣味人で、オフィスですら清書用にワープロ(ワードプロセッサ)が使用されていました。歴史をひもとくと、1978(昭和53)年に東芝が初めて開発したワープロ専用機の価格は630万円。持ち運び可能な大きさのパーソナル仕様になったのは1980年代後半で、価格も平均16.4万円になります。「書院」(シャープ)、「OASYS(富士通)」、「文豪」(NEC)「Rupo」(東芝)が日本語ワープロ専用機の4大ブランドでした。

 家庭から消えてしまった通信機器としてはFAXも数えられるでしょう。オフィスではまだまだ現役ですが、メールやSNSでの通信が中心となった現在、紙や消耗品の必要なFAXは家庭では無用の長物となってしまいました。

 この50年間で通信機器と同じぐらい隆盛の激しいのが、いわゆる媒体(記録メディア)。ビデオテープやカセットテープ、レコードなどは近年復刻されることも増えていますが、ほぼ駆逐されてしまったのがMD(ミニディスク)です。同様に1990年代に「光磁気ディスク」として登場した「MO(magneto-optical disc)」もUSBメモリーやDVDに席を譲り、生産・販売終了しています。

 インターネットの出現は周りの風景を一変させてしまいましたが、オブラートなどのように、薬を包む用途から「キャラ弁」に欠かせないアイテムに変身を遂げているものも。探せば見つかる「消えたモノ」でノスタルジーを演出するのもいいですね。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

健診結果から考える健康管理・新5カ条(5)コレステロールは運動では減らない

コレステロールは中性脂肪と混同されがちだが、まったく異なる性質の脂(あぶら)である。コレステロールには、消化酵素になるなど3つの使い道があるが、摂り過ぎると運動しても簡単になくならないため、血管の変化を引き起こし...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/13
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
2

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!

『法華経』といえば紀元1世紀から3世紀に成立したといわれる大乗仏教の代表的経典である。厳しい修行や哲学的思索を行う出家が中心だった当時のインド仏教に対し、誰もが平等に成仏できると説く『法華経』は画期的なものだった...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/04
鎌田東二
京都大学名誉教授
3

地図で読む「ヨーロッパにおけるパワーの東漸と西進」

地図で読む「ヨーロッパにおけるパワーの東漸と西進」

地政学入門 ヨーロッパ編(2)地理的条件と東西の攻防

第一次、第二次世界大戦におけるヨーロッパの攻防を地政学の観点から見ると、いったいどのような背景が読み取れるだろうか。アルプスと平野、海といった地理的条件から、ヨーロッパの「西と東」の攻防の歴史を読み解く。そうす...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/12
小原雅博
東京大学名誉教授
4

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?

「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10
柿埜真吾
経済学者
5

株式リターンの歴史検証…大きな構造変化の影響を見抜く

株式リターンの歴史検証…大きな構造変化の影響を見抜く

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(2)株価リターンの歴史から考える

トランプ関税の影響を、歴史を踏まえつつ分析していく講義。第2話ではいよいよ、アメリカ、ドイツ、香港、日本などの株価の歴史を追いながら検証していく。実は株価の歴史的な動きを把握するためには、「株価」の動きでみるので...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員