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「昭和」とはどういう時代だったのか?
		        	    
 「昭和」とはどういう時代だったのでしょうか。今回は、歴史記述の形式のうち、年月の順を追って事実の発生・発展を記述する「編年体」、いわゆる年表形式で、「昭和」という時代を振り返ってみたいと思います。
国内外を巻き込む暗い影響は、1930(昭和5)年のロンドン軍縮会議、右翼社会主義の台頭、統帥権干犯問題、昭和6(1931)年の満州事変、昭和7(1932)年の満州国建国、五・一五事件、オタワ会議、昭和8(1933)年の国際連盟脱退等、日本帝国主義の矛盾を拡大させていきます。さらに昭和11(1936)年の二・二六事件、昭和12(1937)年の盧溝橋事件、日中戦争等を経て、昭和14(1939)年の第二次世界大戦の開戦となります。
そして昭和15(1940)年に日独伊三国同盟と翌年には日ソ中立条約が締結された一方、ABCD包囲網が始まります。さらに昭和16(1941)年にハル・ノートの提示と日米交渉決裂、真珠湾攻撃をもって日米開戦となり、日本も第二次世界大戦禍に飛び込んでいくことになります。翌年以降はミッドウェー海戦と東南アジア侵攻が開始され戦禍は拡大を続けますが、昭和20(1945)年の東京大空襲、アメリカ軍の沖縄上陸、原爆投下、日ソ中立条約破棄を経て、ポツダム宣言を受諾。第二次世界大戦は終結し、日本は敗戦国となります。
敗戦後の日本はGHQの占領政策下に置かれます。婦人の解放、労働組合の結成奨励、学校教育の自由主義化、専制政治の廃止、経済制度等の民主化が進められるなか、昭和21(1946)年には東京裁判が行われ、日本国憲法が制定されます。
また、戦争と敗戦による食糧難とインフレの昂進に苦しむ一方で、昭和25(1950)年に始まった朝鮮戦争の影響も受けて、特需による好景気が始まります。そして世界的には、東南アジア諸国の独立運動が活発化を始めます。
一方、神武景気とも称される好景気を迎え、昭和30(1955)年代には、「国民所得倍増計画」が掲げられ、関門トンネル開通、東京タワー完成、東海道新幹線開業、東京オリンピック開催など、戦後復興が開始されたカラーテレビ放送によって、全国に届けられます。他方、イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそくなどの公害問題が大きくなるなど、高度経済成長の功罪が浮き彫りになっていきます。
また世界に目を向けると、昭和28(1953)年に朝鮮戦争休戦協定成立後に平和共存の潮流が活発化し、アジアだけでなくアフリカ諸国民の植民地主義への反対や、民族独立を求める力が強まっていきます。そして、昭和35(1960)年のベトナム戦争、昭和37(1962)年のキューバ危機、昭和40(1965)年の日韓基本条約締結など、国際的な戦争と平和への動きに各国がより深刻な影響を及ぼしあうようになっていきます。
昭和43(1968)年には東名高速道路開業し小笠原諸島が返還されます。昭和44(1969)年に東大安田講堂事件が発生した同年、アメリカはアポロ11号による人類初月面着陸に成功します。翌年の昭和45(1970)年に日本初となる人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功し、日本万国博覧会(大阪万博)は大盛況をおさめます。しかし同年のよど号ハイジャック事件、翌年のあさま山荘事件など、過激な事件も目立ちました。
昭和47(1972)年からは「日本列島改造論」による政策が実施され、いよいよ列島が平準化されていきます。札幌オリンピック開催、沖縄返還、オイルショック、ロッキード事件、成田空港開港、日中平和友好条約締結など、社会的に関心が高い出来事が起こる一方、昭和58(1983)年には東京ディズニーランドが開園し、ファミリーコンピューターが発売されるなど、大衆化された娯楽も変化していきます。
昭和60(1985)年頃からは、資産価額の高騰によるバブル経済に突入します。筑波万博の開催、青函トンネル開通、瀬戸大橋開通など科学の進歩を体感する一方で、日本航空123便墜落事故やチェルノブイリ原発事故が発生します。
そして、昭和最後の年となる昭和64(1989)年の年明け早々に宝算87歳をもって昭和天皇が崩御。平成に改元され、「昭和」という時代が終わることとなりました。
他方、個々の出来事は悲惨であったり劇的であったりするものの、グローバル化、マス化(大衆化)、都市化(地方文化の平準化・均一化)のような、幕末から明治時代にかけて興った国際化や大正時代に顕著になった民主化など、近代資本主義化の進化と深化の一方向の流れとみることもできます。
そして、どちらにしても「昭和」という時代は、国内の動きだけで留まる課題はなく、世界と軌を一にせざるを得ない、つまり、一国を主語とした年表の記述だけでは見えてこない歴史、まさにグローバルな地図の絶え間ない躍動を考慮する必要性を感じます。
ところで、歴史記述の形式には、人物を通して歴史を記す「列伝」という形式もあります。列伝の視点を持つことは、歴史が一通りの解釈にとどまらない可能性を示唆し、また、歴史に多様性と客観性を適用することの楽しさと、今日的な価値を与えてくれます。
ちなみに、「昭和」という時代を象徴する人物といえる昭和天皇は、天皇即位時25歳でした。そして、昭和元年は大正15(1926)年12月25日に改元、そして昭和64年も1月8日に改元して平成(1989)元年となったため、なんとどちらも1週間しかありません。そのため、厳密な昭和元年および昭和64年生まれの人はレアな存在といえます。
なお、令和3(2021)年における、昭和最後の年である昭和元(1926)年生まれの方の年齢は95歳、同様に昭和最後の年である昭和64(1989)年32歳となります。
グローバルな地図を多方面から何層にも描きつつ、さらに多様な視点から見た列伝形式の年表をいつくも編んで適宜参照することが、ますます大きな変化を迎えると予想される令和という時代を見通す際の、大きく重要な手がかりになるかもしれません。
		        押し寄せる近代・怒濤の国際化
大正最後の年となる大正15(1926)年の年末、大正天皇が崩御され昭和と改元、「昭和」という時代が始まります。大正時代から続く資本主義経済の急速な発展や近代化の象徴ともえいえる学校制度の拡充発展期ではあったものの、翌昭和2(1927)年の未曾有の農村不況や金融大恐慌に見舞われ、さらに昭和4(1929)年にアメリカで勃発し全世界が巻き込まれた世界大恐慌にも襲われた重苦しい始まりとなりました。国内外を巻き込む暗い影響は、1930(昭和5)年のロンドン軍縮会議、右翼社会主義の台頭、統帥権干犯問題、昭和6(1931)年の満州事変、昭和7(1932)年の満州国建国、五・一五事件、オタワ会議、昭和8(1933)年の国際連盟脱退等、日本帝国主義の矛盾を拡大させていきます。さらに昭和11(1936)年の二・二六事件、昭和12(1937)年の盧溝橋事件、日中戦争等を経て、昭和14(1939)年の第二次世界大戦の開戦となります。
そして昭和15(1940)年に日独伊三国同盟と翌年には日ソ中立条約が締結された一方、ABCD包囲網が始まります。さらに昭和16(1941)年にハル・ノートの提示と日米交渉決裂、真珠湾攻撃をもって日米開戦となり、日本も第二次世界大戦禍に飛び込んでいくことになります。翌年以降はミッドウェー海戦と東南アジア侵攻が開始され戦禍は拡大を続けますが、昭和20(1945)年の東京大空襲、アメリカ軍の沖縄上陸、原爆投下、日ソ中立条約破棄を経て、ポツダム宣言を受諾。第二次世界大戦は終結し、日本は敗戦国となります。
敗戦後の日本はGHQの占領政策下に置かれます。婦人の解放、労働組合の結成奨励、学校教育の自由主義化、専制政治の廃止、経済制度等の民主化が進められるなか、昭和21(1946)年には東京裁判が行われ、日本国憲法が制定されます。
また、戦争と敗戦による食糧難とインフレの昂進に苦しむ一方で、昭和25(1950)年に始まった朝鮮戦争の影響も受けて、特需による好景気が始まります。そして世界的には、東南アジア諸国の独立運動が活発化を始めます。
加速する大衆・列島の平準化
昭和26(1951)年にサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約が締結し、さらには翌年のサンフランシスコ講和条約の発効と同時にGHQは廃止され、日本は主権回復となりました。しかし安保闘争や自衛隊問題など、その後に続く日米安保体制下の新たな課題を生むことになっていきます。一方、神武景気とも称される好景気を迎え、昭和30(1955)年代には、「国民所得倍増計画」が掲げられ、関門トンネル開通、東京タワー完成、東海道新幹線開業、東京オリンピック開催など、戦後復興が開始されたカラーテレビ放送によって、全国に届けられます。他方、イタイイタイ病、水俣病、四日市ぜんそくなどの公害問題が大きくなるなど、高度経済成長の功罪が浮き彫りになっていきます。
また世界に目を向けると、昭和28(1953)年に朝鮮戦争休戦協定成立後に平和共存の潮流が活発化し、アジアだけでなくアフリカ諸国民の植民地主義への反対や、民族独立を求める力が強まっていきます。そして、昭和35(1960)年のベトナム戦争、昭和37(1962)年のキューバ危機、昭和40(1965)年の日韓基本条約締結など、国際的な戦争と平和への動きに各国がより深刻な影響を及ぼしあうようになっていきます。
昭和43(1968)年には東名高速道路開業し小笠原諸島が返還されます。昭和44(1969)年に東大安田講堂事件が発生した同年、アメリカはアポロ11号による人類初月面着陸に成功します。翌年の昭和45(1970)年に日本初となる人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功し、日本万国博覧会(大阪万博)は大盛況をおさめます。しかし同年のよど号ハイジャック事件、翌年のあさま山荘事件など、過激な事件も目立ちました。
昭和47(1972)年からは「日本列島改造論」による政策が実施され、いよいよ列島が平準化されていきます。札幌オリンピック開催、沖縄返還、オイルショック、ロッキード事件、成田空港開港、日中平和友好条約締結など、社会的に関心が高い出来事が起こる一方、昭和58(1983)年には東京ディズニーランドが開園し、ファミリーコンピューターが発売されるなど、大衆化された娯楽も変化していきます。
昭和60(1985)年頃からは、資産価額の高騰によるバブル経済に突入します。筑波万博の開催、青函トンネル開通、瀬戸大橋開通など科学の進歩を体感する一方で、日本航空123便墜落事故やチェルノブイリ原発事故が発生します。
そして、昭和最後の年となる昭和64(1989)年の年明け早々に宝算87歳をもって昭和天皇が崩御。平成に改元され、「昭和」という時代が終わることとなりました。
グローバルな地図・多様な列伝
以上、年代順に「昭和」という時代を振り返ってみました。「昭和」という時代は、昭和恐慌や世界大恐慌、第二次世界大戦、敗戦や占領統治のような暗い時期と、戦後復興や高度経済成長、バブル経済、民主化のような明るい時期といった、対比の視点で振り返ることができます。他方、個々の出来事は悲惨であったり劇的であったりするものの、グローバル化、マス化(大衆化)、都市化(地方文化の平準化・均一化)のような、幕末から明治時代にかけて興った国際化や大正時代に顕著になった民主化など、近代資本主義化の進化と深化の一方向の流れとみることもできます。
そして、どちらにしても「昭和」という時代は、国内の動きだけで留まる課題はなく、世界と軌を一にせざるを得ない、つまり、一国を主語とした年表の記述だけでは見えてこない歴史、まさにグローバルな地図の絶え間ない躍動を考慮する必要性を感じます。
ところで、歴史記述の形式には、人物を通して歴史を記す「列伝」という形式もあります。列伝の視点を持つことは、歴史が一通りの解釈にとどまらない可能性を示唆し、また、歴史に多様性と客観性を適用することの楽しさと、今日的な価値を与えてくれます。
ちなみに、「昭和」という時代を象徴する人物といえる昭和天皇は、天皇即位時25歳でした。そして、昭和元年は大正15(1926)年12月25日に改元、そして昭和64年も1月8日に改元して平成(1989)元年となったため、なんとどちらも1週間しかありません。そのため、厳密な昭和元年および昭和64年生まれの人はレアな存在といえます。
なお、令和3(2021)年における、昭和最後の年である昭和元(1926)年生まれの方の年齢は95歳、同様に昭和最後の年である昭和64(1989)年32歳となります。
グローバルな地図を多方面から何層にも描きつつ、さらに多様な視点から見た列伝形式の年表をいつくも編んで適宜参照することが、ますます大きな変化を迎えると予想される令和という時代を見通す際の、大きく重要な手がかりになるかもしれません。
<参考文献・参考サイト>
・『国史大辞典』(吉川弘文館)
・『誰でも読める 日本史年表』(吉川弘文館)
・『暮らしの年表/流行語100年』(講談社編、講談社)
・『年表で読む日本近現代史(増補3訂版)』(渡部昇一著、海竜社)
・昭和時代年表 - 日本史資料室
https://history.gontawan.com/nenpyo-syowa.html
			            
		            ・『国史大辞典』(吉川弘文館)
・『誰でも読める 日本史年表』(吉川弘文館)
・『暮らしの年表/流行語100年』(講談社編、講談社)
・『年表で読む日本近現代史(増補3訂版)』(渡部昇一著、海竜社)
・昭和時代年表 - 日本史資料室
https://history.gontawan.com/nenpyo-syowa.html
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