「自分をコントロールする力」を伸ばす方法
何度注意をしても宿題よりゲームを優先してしまう、ご飯前なのにスナック菓子を食べるのを止められない。こんなわが子の姿を見て、「このままではいけない。なんとかしなければ」と感じている方も多いのではないでしょうか。今回は、子どもの「自分をコントロールする力(自制心)」を育むにはどうしたらよいのかについて、発達心理学・発達認知神経科学を専門とする京都大学大学院准教授の森口佑介氏からお話をうかがいました。
森口氏によれば、この実行機能には感情面と思考面、2つの側面があるということです。感情面の実行機能とは、衝動的な感情や欲求を自分でコントロールすること。たとえば、大好きなポテトチップスがあり、もっともっと食べたいけれど、もうすぐご飯だからこの辺で止めておこう、と自制する。そのために「自分をコントロールする力」がそれに当たります。
もう1つ、思考面の実行機能は、習慣や癖をコントロールする力のことで、平たくいえば「集中力」。友だちのおしゃべりやテレビの音などで多少周囲がざわついていても、目の前のやるべきこと、例えば勉強に集中できれば、思考面での実行機能がうまく働いているということになります。また、もしうまく実行できなければ、やり方を変えるなどして別の方法に取り組んでみる。こうした切り替え能力も思考面の実行機能に含まれます。
実行機能は小学校から青年期にかけても発達するのですが、幼児期に比べてその成長度は緩やかということですから、やはり幼児期のうちに、いかに実行機能を育てるかが鍵ということになります。
第一に、規則正しい生活習慣を身につけること。なかでも特に重要なのが睡眠です。近年、日本人の平均睡眠時間が減少傾向にあり、子どもといっても例外ではありません。よって、ごく当たり前なことですが、夜はしっかりと寝ることがポイント。なぜなら、夜寝ている間に疲れた脳は修復され、そのことが脳の成長につながるからです。そのためには、だらだらと昼寝をさせないこと。適当な時間にお風呂に入って、就寝時間がきたら部屋を暗くして布団に入ること。こうした小さな生活習慣の積み重ねが、よい睡眠、規則正しい生活へとつながるのです。
また、メディアとの付き合い方にも注意が必要です。子どもに「テレビは1日○時間まで」とルールを設けている家庭も少なくないかもしれませんが、誰も見ていないのにテレビがつけっぱなしになっているという状態も、子どもの実行機能発達によくない影響を及ぼすそうです。他にも、親がスマホを見っぱなしで子どもの顔を見ようとしない、会話もない、というのは避けるべきことです。
お父さん、お母さんに絵本を読んでもらいながら、気持ちよく寝入った記憶、ご飯のときにその日あったことを話した思い出。そんな当たり前の家庭の日常が、実は子どもの自制心を育むのに大事なことだったのですね。
自制心の2つの側面-感情面と思考面
自分をコントロールする力、すなわち自制心は、発達心理学の分野では「実行機能」と呼ばれています。目先の誘惑に負けずに本来するべきことを実行できる能力、と解釈すればよいでしょう。要するに目標を立てて遂行し、達成するための能力ということです。森口氏によれば、この実行機能には感情面と思考面、2つの側面があるということです。感情面の実行機能とは、衝動的な感情や欲求を自分でコントロールすること。たとえば、大好きなポテトチップスがあり、もっともっと食べたいけれど、もうすぐご飯だからこの辺で止めておこう、と自制する。そのために「自分をコントロールする力」がそれに当たります。
もう1つ、思考面の実行機能は、習慣や癖をコントロールする力のことで、平たくいえば「集中力」。友だちのおしゃべりやテレビの音などで多少周囲がざわついていても、目の前のやるべきこと、例えば勉強に集中できれば、思考面での実行機能がうまく働いているということになります。また、もしうまく実行できなければ、やり方を変えるなどして別の方法に取り組んでみる。こうした切り替え能力も思考面の実行機能に含まれます。
自制心を育てるなら3歳から5歳が鍵になる
実は、この実行機能は感情面、思考面ともに3歳から5歳くらいの幼児期に著しく発達することが実験によって分かっています。まだまだ赤ちゃんだと思っていたのに、幼稚園や保育園の年長さんになる頃から、聞き分けよく我慢できるようになったりするのを感じる親御さんも多いのではないでしょうか。「よく我慢できたね」などとほめ言葉で声をかけることが増えてくるのもこの幼児期です。実行機能は小学校から青年期にかけても発達するのですが、幼児期に比べてその成長度は緩やかということですから、やはり幼児期のうちに、いかに実行機能を育てるかが鍵ということになります。
子どもの実行機能を伸ばすために
実行機能を育てるには幼児期が鍵と聞くと、その具体的な方法が気になるところですが、実はこれがいたってシンプルなのです。第一に、規則正しい生活習慣を身につけること。なかでも特に重要なのが睡眠です。近年、日本人の平均睡眠時間が減少傾向にあり、子どもといっても例外ではありません。よって、ごく当たり前なことですが、夜はしっかりと寝ることがポイント。なぜなら、夜寝ている間に疲れた脳は修復され、そのことが脳の成長につながるからです。そのためには、だらだらと昼寝をさせないこと。適当な時間にお風呂に入って、就寝時間がきたら部屋を暗くして布団に入ること。こうした小さな生活習慣の積み重ねが、よい睡眠、規則正しい生活へとつながるのです。
また、メディアとの付き合い方にも注意が必要です。子どもに「テレビは1日○時間まで」とルールを設けている家庭も少なくないかもしれませんが、誰も見ていないのにテレビがつけっぱなしになっているという状態も、子どもの実行機能発達によくない影響を及ぼすそうです。他にも、親がスマホを見っぱなしで子どもの顔を見ようとしない、会話もない、というのは避けるべきことです。
すべての基本は親子の絆から
よい睡眠と適切なメディアとの付き合い方によって、規則正しい生活習慣を身につけ、子どもの実行機能を伸ばすことができる。一見、簡単なことのように思えますが、これらはすべて、親子の愛情関係、強い絆が基盤となっていることはいうまでもありません。お父さん、お母さんに絵本を読んでもらいながら、気持ちよく寝入った記憶、ご飯のときにその日あったことを話した思い出。そんな当たり前の家庭の日常が、実は子どもの自制心を育むのに大事なことだったのですね。