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DATE/ 2021.05.25

なぜ嘘をつく?「虚言癖」の原因とは

 誰しも程度の差はあれ、嘘をつくことがあります。嘘をつくとたいてい心が痛んだり、嘘をついた後のことを考えてしまったりしますが、中には平然と嘘をつき続ける「虚言癖(きょげんへき)」を持つ人もいます。

 虚言癖を持つ人とは、どんな人なのでしょうか。そもそも虚言癖とは? 虚言癖の人の特徴やその心理、そして治し方をご紹介します。

虚言癖は性格? 性質? それとも病気? 虚言癖のある人の特徴

 精神科医の林公一氏は『虚言癖、嘘つきは病気か』という本の中で、虚言癖を持つ人の共通項として「たくさんの嘘をつく」「普通では考えられない嘘をつく」の2点を挙げています。また、全員ではないものの「外見からは嘘つきだと見えない」「かなり細かい話を作り上げる」「メリットがないのに嘘をつく」「虚言の瞬間は無自覚だが、後からは虚言だという自覚がある」という特徴もあるとしています。

 たとえば本の中では、虚言癖のある夫に悩まされる妻のケースが紹介されています。本当はサラリーマンなのに職業は外科医だと言って医者になった経緯を事細かく話す、話の中で夫の父親(存命)は2度死んでおり、葬式の様子までリアルに語る、検査もしていないのに「ガンになった」と言い、最初は肺ガンだったのがのちに睾丸ガン、脳ガンに至った……などといったことが書かれています。

 林氏は同書の中で、医学的な研究はほとんどなされていないため虚言癖=病気とは断定できないものの、虚言癖を持つ人はなんらかのパーソナリティ障害(自己愛性、演技性、境界性など)の傾向が強い人が多いため、上記のように病的な虚言癖を持つような人はその疑いがあるとしています。

どんな人が虚言癖になる?

 たいていの場合、嘘をつくのはそれなりに理由があったり、嘘をつかざるをえない背景があったりするものです。では、どうして嘘をつくのでしょうか。そしてどんな人が虚言癖になりやすいのでしょうか。虚言癖となる人の深層心理をさぐりながら、いくつかのパターンを紹介します。

【責められたくない、怒られたくない】
過去に強く責められた経験が忘れられず、自分の心を守るために嘘をついてしまう人がいます。たとえ自分のミスであったとしても他人のせいにしたり、隠し事をしてしまったりするのです。失敗をとがめられたくないがためにその場しのぎの嘘をつき、そのつじつま合わせのためにさらに嘘をつき……と虚言の悪循環に陥ります。

【人に嫌われたくない】
いわゆる八方美人の人は、嘘をつきたがる傾向があります。すべての人に好かれたい、いい人に見せたいという一心で、たとえ嘘でも相手が喜びそうなことを並べ立てます。

【努力したくない】
地道な努力や計画的な行動が苦手な人は、嘘をついてその場をごまかそうとします。何かミスをしても「会社の環境が悪い」「部下が言う通りに動かない」などと自分を正当化し、自分の努力不足を認めようとしない傾向があります。

【もっと人に認められたい、注目されたい】
承認欲求が強い、いわゆる「かまってちゃん」思考を持つ人は、嘘をつくことで人から注目されたい、賛美を得て優越感にひたりたいと考えがちです。周りの気を引くために、嘘がどんどん現実離れしていきます。このようなタイプは愛されずに育ったなど家庭環境が原因で、愛に飢えている傾向があります。

【自尊心を守りたい】
「自分は誰よりもすごい」と自身を過大評価するタイプも虚言癖になりやすいです。「自分のことを分かってくれない人は下等だ」などと人を見下し、他人を貶めるため根も葉もない噂を流したり、暴言を吐いたりします。異常に高いプライドのため、嘘をつき続けて本当の自分とはかけ離れた人物像を作り上げてしまう場合も。

【弱みを見せたくない】
「自尊心を守りたい」タイプともつながりますが、こちらは自分の本来の姿が「他人より劣っている」と自覚しているがために嘘をついてしまうパターンです。能力的にも人間的にも他人より劣っていることを人に知られたくないために、嘘をついて自分を大きく見せようとします。劣等感や自己肯定感の低さの裏返しともいえるでしょう。

【自分の利益や保身を優先したい】
自分さえよければいい、などと自分最優先で考える人は嘘をつきたがります。特権意識が強く、良い待遇を受けたいが為に嘘をつき続けてしまうのです。他者への共感性に欠けており、相手が傷ついても無関心でいられます。

虚言癖の治し方

「嘘をつくのがやめられない」などと、嘘をつく自分が苦しいと感じている人はいるかもしれません。虚言癖を治すためには、どんなことをしたらよいのでしょうか。

・なぜ嘘をつくようになったのかをはっきりさせる
嘘をつくようになったきっかけや原因がわかれば、もし次に嘘をつきたくなっても踏みとどまることができるでしょう。

・なぜ治したいのかを明確にする
無自覚に嘘をつく人も多い中、治したいと思えたあなたは前進しています。ただなぜ治したいのかがはっきりしていなければ、すぐに心が折れてしまうでしょう。治った後どうなりたいのか、はっきりさせておきましょう。

・本心を打ち明けてみる
嫌われたくない、弱みを見せたくないなど、嘘をつく人のほとんどの場合「本当の自分を隠したい」という心理が働いています。しかし、すべての人に好かれる人間などいないものです。そのことをまずはしっかり自覚し、誰かと本心でぶつかることにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

・相手の気持ちを考えるようにする
虚言癖となる人は、自分のことばかりで他人を思いやる心に欠けている傾向があります。もしあなたが嘘をつけば、嘘をつかれた相手はショックを受けたり、悲しんだりするでしょう。今後あなたを信用しなくなるかもしれません。そうした想像力を働かせることも、虚言癖を直す一歩となります。

・カウンセリングを受ける
虚言「癖」という名の通り、一度身についたクセは自力で治すのがとても大変です。自己流で治そうとして余計に苦しみ、自暴自棄になってしまう可能性もあります。自分の虚言癖のせいで生活もままならなくなっている場合は、専門のカウンセラーにしっかり診てもらうのも手。自分自身をこれ以上傷つけないためにも、早めの受診がおすすめです。

 他人を困らせ、傷つける嘘は百害あって一利なし。ここで少しでも治したい!と思えたら、上記の方法をチェックしてみてくださいね。

<参考サイト>
・「虚言癖」を引き起こす原因と「嘘をつく人」の特徴│TABI LABO
https://tabi-labo.com/217641/lie-human-ppl

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