テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.10.10

なぜ勉強しなくてはいけないのか?

 子ども時代に誰もが思ったことがあるであろう「なぜ勉強しなくてはいけないのか?」という疑問。大人になったいま子どもにそう聞かれたら、あなたはどう答えますか?

 「大人になったら困るから」「良い大学に入るため」といった理由を口にしがちですが、今勉強することに違和感を持っている子どもに数年先の未来のことを語っても、納得してもらうのは難しいでしょう。ではどんな言葉が子どもに届くのか、教育のプロや著名人の語った言葉を紹介しましょう。

これからの時代に必要な能力を伸ばすため

 この問いに対して、東京大学名誉教授で教育学者の汐見稔幸氏は「好奇心や思考力、表現力を伸ばすため」と答えています。学校において、これまでは「テストでどれだけ良い点がとれるか」が大切なことでしたが、これからの時代は「自ら課題を見つけて、それにどう対処し、そのことをどう周囲に伝えていくか」ということが大切になってくると同氏は語っています。

 時代の流れは加速し、私たちは学校で学んだ知識だけでは生きるのが難しくなってきています。SNSで流れてくる不確かな情報をどう選び取るのか、経験したことのない困難をどう対処していくのか…その答えは教科書には載っておらず、自分で考えて答えを出す必要があります。その過程で必要になる思考力、そして自分の言葉で考える表現力を磨くことが、勉強する意味だといいます。

知識を増やして視野を広げるため

 次に、有名な物理学者アインシュタインの言葉を紹介しましょう。「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる、自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる」という言葉があります。私たちは学ぶことによってさまざまな知識を身につけますが、それは新しい考え方を知って新しい世界の扉を開くことでもあります。勉強することはその繰り返しで、続けていけばどんどん自分の視野を広げることができるのです。

 具体的な話でいえば、英語を話せるようになれれば海外の人と話せるようになりますよね。そして、英語でのコミュニケーションができるようになれば、英語圏の人の物の考え方を知ることができます。学ぶことで得た知識や技術で自分の世界が広がるのだと思えば、勉強への捉え方も変わるのではないでしょうか。

詰め込み教育から、自分で考える教育へ

 今回紹介した言葉を見て「自分が子どもの頃とは違う」と感じる人もいるかもしれません。かつてはテストで良い点を取って良い大学へ進み良い会社へ就職することが良しとされてきましたが、多様性が認められ個性を重視するようになった今、むしろ必要なのは「自分で考えられる力をつけること」なのだと強く感じるのではないでしょうか。

 令和の時代に勉強する意味を問われたら「こうだから勉強しなさい」と頭ごなしに押しつけるのではなく「じゃあ勉強すればどんな良いことがあると思う?」と子どもと対話をしながら、その子なりの正解を見つけていくのが時代に合った対応なのかもしれません。子どもと一緒に、大人も勉強する意味を考えてみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
東京大学名誉教授はこう答える! 子どもに「どうして勉強しないといけないの?」と聞かれたら│StudyHacker こどもまなび☆ラボ
https://kodomo-manabi-labo.net/why-study
【なるほど】なぜ勉強しなきゃいけないの? の最適解がTwitterで話題 - 「うまい例え」「世界の真理か?」の声│マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20201005-1374590/
「勉強をする意味と理由」は偉人の名言からわかる│中部教育ラボ
https://chubukyoiku-labo.jp/meaning/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」

なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(2)江藤淳の「リアリズムの源流」

文芸評論を再考するに当たり、江藤淳氏の「リアリズムの源流」を振り返ってみる。一般的に日本で近代小説が始まった起源は坪内逍遥だといわれるが、江藤氏はそれに疑問を呈す。そして注目したのが、夏目漱石の「坊ちゃん」であ...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/02
與那覇潤
評論家
2

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係

地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ

国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05
小原雅博
東京大学名誉教授
3

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
4

「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?

「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?

キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか

キリスト教とは何か。「文明の衝突」が世界中で現実化する中、この問題は日本人にとっても重要なものになっている。上智大学神学部教授・竹内修一氏は、「キリスト教とは何か」という問いは、同時に「イエスとは誰なのか」も意...
収録日:2016/12/26
追加日:2017/02/28
竹内修一
上智大学神学部教授
5

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者