社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.01.04

アジアで影響力のある国ランキング

 オーストラリアのシドニーに拠点を置くシンクタンク、ローウィー研究所は「ASIA POWER INDEX(アジアパワー指数)2021年版」を発表しました。この調査は2018年に始まり、今年で4回目となります。調査対象は26の国と地域です。今回はこのランキングを少し詳しく見てみましょう。

1位アメリカ、2位中国

 評価する上での指標の大項目は「軍事力」「国防ネットワーク」「経済力」「経済的関係性」「外交的影響力」「文化的影響力」「復元力(レジリエンス)」「将来の資源」という8つです。この下に131の指標を設けて評価し総合的なスコアが集計されています。これによると、ランキングトップ10は以下の通り。順位の次の数値は総合100点満点中での獲得スコアです。

1位 82.2 アメリカ
2位 74.6 中国
3位 38.7 日本
4位 37.7 インド
5位 33.0 ロシア
6位 30.8 オーストラリア
7位 30.0 韓国
8位 26.2 シンガポール
9位 19.4 インドネシア
10位 19.2 タイ

 1位はアメリカ。地理的には太平洋を挟んでほぼ反対側と言ってもいい国ですが、やはりアジアでの影響力は絶大です。2位は言わずと知れたアジアの大国、中国。ここからダブルスコア以上を離されて3位に日本が入っています。ちなみに日本は2020年でのスコアから2.4ポイント低くなっています。3位日本と4位のインドとの差はわずか1ポイント。人口の増減や今後の経済発展から考えれば、もしかしたら来年の順位は入れ替わっているかもしれません。調査では40ポイント以上を主要国のしきい値としています。つまりアジアの主要国はアメリカと中国のみということになります。

日本が評価されているポイント

 日本のデータに注目して見ましょう。8つの大項目別に日本の獲得スコア詳細を見てみます。右の数値は100点満点中のスコアです。

軍事力 7位 26.2 
国防ネットワーク 3位 48.1
経済力 3位 31.9
経済的関係性 3位 40.3
外交的影響力 3位 84.5
文化的影響力 3位 43.5
復元力(レジリエンス) 9位 37.2
将来の資源 6位 11.5

 3位に位置する大項目は「国防ネットワーク」「経済力」「経済的関係性」「外交的影響力」「文化的影響力」です。これらの分野では、日本はアジアの中でもまだある程度の影響力を維持していると言っていいのかもしれません。一方、前年度の調査からすると「国防ネットワーク」で0.7ポイント上昇して「経済力」が変化しなかった点以外、ほかの6項目すべてで力を落としています。

復元力(レジリエンス)が低い要因は資源に関する問題

 特に「経済的関係性」では前年比-7.2ポイントとなっています。また「外交的影響力」は、スコアとしては比較的高いですが、前年度2位だった地点からランクダウン。加えて「復元力(レジリエンス)」は2ランクダウンです。この「復元力(レジリエンス)」は、いわば問題が発生したときの適応能力です。この評価は日本の評価全体を通しても特に低いようです。

 この要因について分析では「資源の安定性の低さと、エネルギー貿易収支がマイナスであるため」としています。「復元力(レジリエンス)」内の一階層下の項目まで見ると、特に「RESOURCE SECURITY(国の経済の機能に不可欠なエネルギーやその他の重要な資源への安全なアクセス)」での評価が低く、25位となっています。どのように資源やエネルギーを安定させるかということは、この国の宿命と言っていいかもしれません。

<参考サイト>
COMPREHENSIVE POWER|LOWY INSTITUTE ASIA POWER INDEX
https://power.lowyinstitute.org/
JAPAN|LOWY INSTITUTE ASIA POWER INDEX
https://power.lowyinstitute.org/countries/japan/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?

平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?

平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想

平和は、いかにすれば実現できるのか――古今東西さまざまに議論されてきた。リアリズム、強力な世界政府、国家連合・連邦制、国連主義……。さまざまな構想が生み出されてきたが、ここで考えなければならないのは「平和」だけで良...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/08
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
2

『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり

『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道

役者絵からキャリアを始め、西洋の画法を取り入れながら読本の挿絵を大ヒットさせた葛飾北斎。その後、北斎が描いていった『北斎漫画』や浮世絵などの数々は、海外に衝撃を与えてファンを広げるほどのものになっていく。60代は...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/06
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
3

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方

眠る環境は各家庭の状況や個人の好みによって大きく異なるが、一般的に「良い睡眠」のために望ましい環境はどのようなものだろうか。布団や枕などの寝具、エアコンなどの室温コントロールを含めた寝室の環境、また寝つきの良く...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/07
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
4

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景

チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授