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DATE/ 2022.01.11

信号機の電気代はいくら?誰が払っているの?

 我々の安全を守ってくれる大切な信号機。しかしそれも電気が通ってこそ役目を果たせるというもの。信号機は、いったいどれほどの電力を必要とするのでしょうか?

信号機1基分の電気代は月いくら?

 信号機の設置に関わっている、警察庁のHPを参考に算出してみます。

【信号機の消費電力(ワット数)】
 信号機の灯器に使われている光源は電球とLEDで、現在はLEDが主流になりつつあります。いくつかの信号機メーカーのHPを調べてみると、LEDの灯器1灯は10ワット程度。そして「LED式は、電球式に比べて消費電力が6分の1程度である(警察庁HP)」とのことなので、電球式はその6倍の約60ワットと考えられます。

【信号機1基分の電気代】
 警察庁がどの電力会社と契約しているかは不明のため、ここでは東京電力のHPで公開されている「公衆街路灯」の料金表から算出してみます。

<公衆街路灯1灯の月額料金(2021年12月現在)>
10w超~20w:136円20銭(約136円)
60w~100w:505円02銭(約505円)
※参考:東京電力 料金単価表‐電灯(従来からの料金プラン)「公衆街路灯(A)」

 以上から、車両用、歩行者用それぞれの信号機1基分の1ヶ月の電気代は、LED式で約136円、電球式で約505円となります。「車両用は『青・黄・赤』の3灯なんだから、電気代も3倍では?」となりそうですが、原則すべての灯器が同時に点くことはありませんので、1基につき1灯分と考えました。

すべての信号機の電気代は月いくら?

 日本全国の信号機の設置数は20万7,848基。車両用灯器は127万1,934灯、歩行者用灯器は103万579灯で、合計で230万2,513灯。このうちLED灯器は車両用が84万128灯、歩行者用は62万6,065灯となっています。(すべて2020年度末のデータより)

 わかりにくいので、ここでは以下のようにします。

・車両用:約127万灯(LED:84万灯/電球:43万灯)
・歩行者用:約103万灯(LED:63万灯/電球:40万灯)
・灯器数合計:約230万灯(LED:147万灯/電球:83万灯)

 仮に、すべての灯器が点いた状態の消費電力で計算すると、全国すべての信号機1ヶ月の電気代は、

・LED:147万灯×136円=1億9,992万円
・電球:83万灯×505円=4億1,915万円
・月額合計:6億1,907万円
 
 年間で、約74億3000万円となる計算になります。

 前述の通り、すべての灯器が同時に点灯し続けるわけではないので、実際の料金はもう少し低い可能性があります。

 なお信号機の電気代は、信号機を設置する各都道府県の警察署が支払っています。

信号機の設置にかかるコストはどれくらい?

 信号機そのものの具体的な値段は不明ですが、沖縄県うるま市のHPに掲載されている「市民の声」に対する回答(信号機の設置について)の中で、「一か所あたりの費用が400~500万円」とありました。

 信号機の新設にはいくつか条件があり、また条件に合致したとしても道路の状態や周辺住民の意見などを踏まえて検討されるため、そうしたコストも含まれてくるでしょう。

今後も信号機のLED化は進んでいく

 警察庁は信号機の灯器のLED化を着々と進めています。LEDは初期費用はかかるものの、電球に比べて長寿命で省エネ、かつ疑似点灯現象(太陽光などによって、すべての灯器が点灯しているように見える現象)を抑えられるというメリットがあり、現在は灯器の6割以上がLEDとなりました。

 私たちの安全に直結するものだけに、今後も整備状況が気になるところですね。

<参考サイト>
・警察庁HP
信号機
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/hyoushiki-shingouki/hyousikisinngouki.html
都道府県別交通信号機等ストック数(pdf)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/annzen-shisetu/hyoushiki-shingouki/pdf/R02kazu.pdf
・料金単価表‐電灯(従来からの料金プラン)(東京電力)
https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/chargelist01.html
・市民の声「信号機の設置について」(沖縄県うるま市)
https://www.city.uruma.lg.jp/sp/voice/c/12/d/1938
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