社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
現代の病気を進化医学から考えてみた
人類の進化という観点でみると、現代社会における病気や健康についてどのように考えるべきでしょうか。
長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学長)によると、人類の生活環境が大きな変化を遂げたことで、病気のあり方も大きく変わったといいます。また、実は感染症による危ない病気は近年発生したものばかりだとも。はたして、どのようなことなのでしょうか。長谷川氏の話をもとに考えていくにしましょう。
・感染症:溶原菌、ウイルスなどが人に寄生して起こる疾患
・生活習慣病:現代の生活習慣、食事の構成などに起因する疾患
・遺伝疾患:特定の遺伝子変異によって引き起こされる疾患
・がん:細胞の増殖の変異にかかわる疾患。年齢とともにリスクが上がる
そのうえで指摘するのは、「私たちの体がどんな状況で進化してきたのかを考える必要がある」ということ。ただし、そのような「進化医学」の研究が進んだのは1990年代以降と、比較的新しいことなのです。
長谷川氏は、こう話します。
《私たちの体のいろいろなつくりや機能は、文明生活、すなわち先進国の快適な環境下で進化したわけではありません。何万年、何十万年、何百万年にわたる人類の暮らしに適応して、この体ができたのです。
そういう人類進化史の中で、ヒトが暮らしていた環境とは、どんなものだったのかをまず知らなければいけません。
文明によって変わってきた環境は、もとの環境とはかなりずれてきていて、それによっていろいろなことが生じていることは、やはり知っておいたほうがいい》
その「ずれ」が病気にも大きく関わっているのです。人類が地球上に生まれてからこれまでの期間の99パーセントは狩猟採集生活でした。現在のような文明生活に入ったのは、実はごくごくわずかな期間。そう考えれば、人間の体が適応できていない部分もあるのも当然であると思えてきます。
人類がチンパンジーから分かれたのは約600万年前、ホモサピエンスが生まれたのは約20万~30万年前、さらに産業革命が起きたのは約150年……と人類史の流れを見ていくと、とても多くのことを考えさせられます。
そして、現代生活において、私たちがもっともに気になるのは生活習慣病についてではないでしょうか。先ほど紹介したように、これまでの長い歴史で培ってきた人類の身体の特性と、現在の生活が、まったく適応していないのです。昔に比べて歩かなくなっていることもそう。昔に比べて陽に当たることが少なくなっていることもそう。昔に比べて細かい字を読むようになっていることもそう。昔に比べて遅くまで寝なくなっていることもそう。
たとえば人類は、狩猟採集生活で歩き回るように身体の構造ができています。それを考えると、やはり1日に7000歩~14000歩、1週間で10万歩をめざすべきだといいます。
さらに食事については、超加工食品に警鐘を鳴らし、あるべき食生活として「いろいろな種類のものをたくさん食べることが大切」だと長谷川氏は話します。
現代生活のおかしさはどこにあるか。また、生活のなかで、何に気をつけ、何をすべきなのか。人類の進化という観点からみていくことで、そのことをとても深く考えるきっかけになるはずです。これからの暮らし、体や健康への意識を変える大きな転機となるかもしれません。
長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学長)によると、人類の生活環境が大きな変化を遂げたことで、病気のあり方も大きく変わったといいます。また、実は感染症による危ない病気は近年発生したものばかりだとも。はたして、どのようなことなのでしょうか。長谷川氏の話をもとに考えていくにしましょう。
私たちの体がどんな状況で進化してきたのかを考える必要がある
まず人間の病気を大別して4つを挙げると、長谷川氏はいいます。・感染症:溶原菌、ウイルスなどが人に寄生して起こる疾患
・生活習慣病:現代の生活習慣、食事の構成などに起因する疾患
・遺伝疾患:特定の遺伝子変異によって引き起こされる疾患
・がん:細胞の増殖の変異にかかわる疾患。年齢とともにリスクが上がる
そのうえで指摘するのは、「私たちの体がどんな状況で進化してきたのかを考える必要がある」ということ。ただし、そのような「進化医学」の研究が進んだのは1990年代以降と、比較的新しいことなのです。
長谷川氏は、こう話します。
《私たちの体のいろいろなつくりや機能は、文明生活、すなわち先進国の快適な環境下で進化したわけではありません。何万年、何十万年、何百万年にわたる人類の暮らしに適応して、この体ができたのです。
そういう人類進化史の中で、ヒトが暮らしていた環境とは、どんなものだったのかをまず知らなければいけません。
文明によって変わってきた環境は、もとの環境とはかなりずれてきていて、それによっていろいろなことが生じていることは、やはり知っておいたほうがいい》
その「ずれ」が病気にも大きく関わっているのです。人類が地球上に生まれてからこれまでの期間の99パーセントは狩猟採集生活でした。現在のような文明生活に入ったのは、実はごくごくわずかな期間。そう考えれば、人間の体が適応できていない部分もあるのも当然であると思えてきます。
人類がチンパンジーから分かれたのは約600万年前、ホモサピエンスが生まれたのは約20万~30万年前、さらに産業革命が起きたのは約150年……と人類史の流れを見ていくと、とても多くのことを考えさせられます。
生活習慣病を予防するために必要なこと
さらに、実は感染症のうち「危険」とされているものの大部分が19世紀末以降のものだと長谷川氏は指摘します。厚労省が感染症1類~4類の指定をしていますが、それを見ると、まさにその通りで驚くばかりです。そして、現代生活において、私たちがもっともに気になるのは生活習慣病についてではないでしょうか。先ほど紹介したように、これまでの長い歴史で培ってきた人類の身体の特性と、現在の生活が、まったく適応していないのです。昔に比べて歩かなくなっていることもそう。昔に比べて陽に当たることが少なくなっていることもそう。昔に比べて細かい字を読むようになっていることもそう。昔に比べて遅くまで寝なくなっていることもそう。
たとえば人類は、狩猟採集生活で歩き回るように身体の構造ができています。それを考えると、やはり1日に7000歩~14000歩、1週間で10万歩をめざすべきだといいます。
さらに食事については、超加工食品に警鐘を鳴らし、あるべき食生活として「いろいろな種類のものをたくさん食べることが大切」だと長谷川氏は話します。
現代生活のおかしさはどこにあるか。また、生活のなかで、何に気をつけ、何をすべきなのか。人類の進化という観点からみていくことで、そのことをとても深く考えるきっかけになるはずです。これからの暮らし、体や健康への意識を変える大きな転機となるかもしれません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂
今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点
猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題
教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担
人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
だべったら生存期間が倍に…ストレスマネジメントの重要性
新しいアンチエイジングへの挑戦(1)患者と伴走する医者の存在
「百年健康」を旗印に健康寿命の延伸とアンチエイジングのための研究が進む医療業界。そうした状況の中、本職である泌尿器科の診療とともにデジタルセラピューティックス、さらに遺伝子を用いて生物としての年齢を測る研究など...
収録日:2024/06/26
追加日:2024/10/10
石破新総裁誕生から考える政治家の運と『マカーマート』
『マカーマート』から読む政治家の運(1)中世アラブの知恵と現代の日本政治
人間とりわけ政治家にとって運がいいとはどういうことか。それを考える上で読むべき古典がある。それが中世アラブ文学の古典で教養人必読の書ともいえる、アル・ハリーリー作の『マカーマート』である。巧みなウィットと弁舌が...
収録日:2024/10/02
追加日:2024/10/19
遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18