テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.11.14

タイヤはなぜ黒一色なのか?

 タイヤといえば黒色と相場が決まっています。特に乗用車などのクルマにおいて、黒でないタイヤを見かけることはほとんどありません。

 かつて、白っぽいタイヤもあったと記憶している人は、なかなかのクルママニアといってよいでしょう。タイヤの側面が白いのは、昔のクルマが登場する映画でも確認できるところです。

 では、なぜクルマのタイヤは黒一色になっているのでしょう?

タイヤはなぜ黒い?

 自転車のタイヤをインターネット検索すると、レインボーのように多彩なカラーバリエーションでタイヤ製品を確認できますが、乗用車などクルマのタイヤにおいては黒一色です。

 この理由は明白で、ゴムの強度を高める素材の色が黒であるからです。

 黄色い輪ゴムなどのゴム製品は、加硫といって生ゴムに硫黄を混ぜて加熱することである程度の強度を高めていますが、タイヤに使われるゴムは、カーボンブラックと呼ばれる黒い炭素の粒を合成することで強度を高めています。

 硫黄による加硫以上、飛躍的にゴムの強度を高められるのがカーボンブラックによる合成で、車重をささえ、路面との摩擦に耐えうるタイヤ性能を獲得するという事情から、タイヤの色は黒一色になっているのです。

タイヤの歴史

 木製の車輪からゴム製のタイヤへ、その歴史を刻んだのは、1888年、イギリスのJ.B.ダンロップによる自転車用空気入りタイヤの発明からです。自動車への転用は、1895年にフランスのミシュラン兄弟によります。空気入りタイヤを装着して、パリ=ボルドー間往復レースに出場したことが最初に記録されています。

 この頃のタイヤは、ゴムの樹の樹液を固めて整形しただけで、色彩的には白色や飴色の製品で、耐久性はそれほどなかったようです。

 そして、カーボンブラック合成によって強化され耐久性を高めた黒タイヤの登場は1912年なります。

カラータイヤの可能性は?

 近年、低燃費やエコが指標になってから、カーボンブラックの混入量は減り、ゴムの補強剤としてシリカ粒子を微細化したホワイトカーボンが使用されるようになってきました。

 ブラックカーボンに依存することなく耐久性を得られることから、ホワイトカーボンに着色することでカラーバリエーションがでてきてもおかしくない状況にはなっていますが、製品としての普及には至っていないようです。

 その理由は、一般的にタイヤは黒という100年の歴史は重く、市場からカラーバリエーションがまだそれほど望まれていないことが挙げられます。

 カラータイヤは、新たなコンセプトで時代を牽引するようなEV(Electric Vehicle、電気自動車)の登場など、画期的なデザインとともにカラーバリエーションが選択できるような近未来に期待したいところです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

リスクマネーの不足とは?日本の金融構造の課題と対策

リスクマネーの不足とは?日本の金融構造の課題と対策

日本の財政と金融問題の現状(3)リスクマネー不足と金融構造の課題

日本では、ベンチャー企業などへのリスクを伴う投資、いわゆる「リスクマネー」の供給が不足している。日本の金融市場においてその状況を打開するためには、マクロな市場整備と機関投資家の育成が必要だ。欧米に事例を参照しな...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/06/24
木下康司
元財務事務次官
2

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

ロシア資源依存からの脱却へ…ヨーロッパに課せられた難問

ロシア資源依存からの脱却へ…ヨーロッパに課せられた難問

地政学入門 ヨーロッパ編(8)未解決の紛争とロシア資源依存

ソ連が解体されるとともに起こった民族紛争の中には、いまだに解決されていないものがいくつもある。それはソ連が抑え込んできた多民族性に端を発する地域的な背景があった。資源のロシア依存というヨーロッパ諸国の課題ととも...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/23
小原雅博
東京大学名誉教授
4

ガザの悲劇…ハマスがいなくなることで起こる逆説

ガザの悲劇…ハマスがいなくなることで起こる逆説

トランプ2.0と中東(4)ガザの悲劇と『マカーマート』

ネタニヤフ首相による戦闘再開はイスラエル社会の分断を強化した。首相は自分の政治生命を延命するために住民たちの命を捨て駒として扱ったわけだが、ガザ住民は同様の仕打ちをハマスからも受けている。親子が生死を分けるさま...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/22
山内昌之
東京大学名誉教授
5

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

グローバル主義が全ての元凶…トランプ政権がめざすのは?

米国システムの逆襲~解放の日と新世界秩序(1)米国システム「解放の日」

第二次トランプ政権は、その関税政策を発動させた日、4月2日を「解放の日」と称した。そこには、アメリカが各国の面倒を見るという第二次世界大戦以降の構図が、アメリカに損害をもたらしているという問題意識がある。「解放の...
収録日:2025/04/25
追加日:2025/05/20
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー