テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.02.14

「新しいNISA」はやるべき?そのメリットは

 政府は先ごろ「資産所得倍増プラン」を表明しました。これは以前から進められてきた「貯蓄から投資へ」のシフトをさらに推し進めるものです。個人の資産形成を促す流れは明確なものとなっています。これまで施策としてNISAやIDECOといった投資制度が作られてきましたが、今回はNISAが拡充されます。当面の目標としては「NISAの総口座数とNISAにおける累計買付額を5年で倍増させる」といったことが掲げられているようです。まずはそもそもNISAとはどういったものなのか確認したのち、今回の施策である新しいNISAの詳細を見てみましょう。

これまでのNISA

 NISA(ニーサ)とはNippon Individual Savings Accountの略で、イギリスで行われているISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにして考えられています。簡単に言えば、NISA口座にある金融商品から得られる利益に対する税金が非課税になる制度です。金融商品の利益にかかる税率は20.315%(所得税15.315%、地方税5%)です。これが非課税になるメリットはかなり大きいと言えます。たとえば20万円の譲渡益が発生した場合、NISA口座外での売買を行ったときにかかる税金は約4万円程度となります。NISA口座での売買であれば、この額が非課税となります。

 NISAは2014年から運用されている「一般NISA」と、2018年から運用が開始された「つみたてNISA」の大きく2種類があります(18歳未満を対象としたジュニアNISAもあります)。これまでは一般NISAが最長5年で年間120万円が上限、つみたてNISAは最長20年で年間40万円とされてきました。つまり、一般NISA(株式・投資信託・ETFが購入可能)は5年間で最大600万円までの非課税投資が可能、つみたてNISA(投資信託のみ購入可能)は20年間で最大800万円までの非課税投資が可能でした。

既存NISAとの違い

 これに対して、新しいNISAでは制度が恒久化されます。つまり、新しいNISA口座で運用すれば非課税期間は無期限となります。さらに投資枠は年間120万円までの「つみたて投資枠」と、年間240万円までの「成長投資枠」となります。それぞれこれまでの「つみたてNISA」「一般NISA」に該当するものですが、これが併用可能となり、合計した年間上限額は360万円まで拡大されたことになります。加えて生涯投資上限額は1800万円まで拡大されることになります(うち、成長投資枠は1200万円まで)。

 従来のものに比べて規模がかなり大きくなったと言えるでしょう。投資の利益(譲渡益や配当金)に課される税率が20%超であることを考えれば、すでに資産運用している人は活用しない手はないでしょう。ただし、現在他の口座(特定口座や一般口座など)で保有している金融商品をNISA口座に移すことはできません。また。NISA口座はほかの口座と損益通算できないということは知っておきましょう。また、新しいNISAは現行のものとは外枠での扱いです。つまり、現行のNISA口座からそのまま新しいNISA口座にロールオーバーする(移管する)ことはできません。制度が実施されるのは2024年からが予定されています。

 新しいNISAはもちろん新たに資産形成を目指すひとにとっても魅力的です。ただし、投資は預貯金とはことなり元本保証はありません。また資産が増える保証もありません。資産運用をこれから始めようと考えている人は自分のライフプランや家計の状況を鑑みて判断する必要はあります。投資にはリスクが伴うので、ある程度のリテラシーが必要です。生活資金はしっかり維持したうえで、余剰金で行うという点はまず意識しておきましょう。

<参考サイト>
新しいNISA|金融庁
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html
「資産所得倍増プラン」により家計の資産形成は大きく前進する見通し|大和総研
https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20221208_023466.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

地政学入門 ヨーロッパ編(6)「ロシア世界」と民族自決原則

「ルスキー・ミール」という言葉で代表される「ロシア世界」――それは、実際の国境にとどまらず、自国語を話す周辺領域の市民をも包括した概念。プーチンはそれを使ってウクライナ侵攻を正当化するが、国家外の自民族の保護を優...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/09
小原雅博
東京大学名誉教授
2

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

トランプ2.0と中東(2)保守主義者から主権主義者へ

トランプ2.0の政治手法や姿勢からは、支持者が信じる保守主義の影が薄れている。「自国第一主義」を守るためなら、桁外れの関税も議事堂襲撃も恐れない。むしろ大国仲間としてロシアに接近する風すらうかがえる。見えてくるのは...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/08
山内昌之
東京大学名誉教授
3

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

第2次トランプ政権の危険性と本質(5)トランプの政治手法の問題とは?

トランプの経済政策は、文化戦争の手段としての反グローバリズムという軸で理解するしかないが、そのような政策を進めるトランプ政権の政治手法の問題点はなにか。その背景には、陰謀論者が全部入ってしまったような閣僚の問題...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/07
柿埜真吾
経済学者
4

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

健診結果から考える健康管理・新5カ条(7)良い生活習慣が健康寿命を延ばす

健康診断の結果に一喜一憂するだけではなく、そのデータを活用し、生活習慣を見直すことが大切である。今回は、内臓脂肪の管理が健康維持に直結する理由や、体重増加と糖尿病リスクの関係、さらには良い生活習慣が寿命に与える...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/27
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
5

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気

東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏による「老いない骨のつくり方」シリーズ講話。鄭氏はレクチャー冒頭で、「情報に溺れず正しい情報を選択する能力がいかに大切か」と語り、誤った情報は「人生の栄養失調」に...
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/20
鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授