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DATE/ 2023.08.01

すでに絶滅した日本の動物はこんなにたくさん

 豊かな環境に恵まれている地球ですが、自然環境の変化や人為的な要因によって絶滅してしまった生き物たちがいます。それは日本でも例外ではなく、この世から姿を消してしまった日本の固有種もたくさんいるのです。

これまでに絶滅した日本の動植物は110種類

 環境省は日本に生息・生育している生き物のうち、絶滅した生き物、あるいは絶滅のおそれがある生き物を「レッドデータリスト」にまとめています。

 レッドデータリストに載っている生き物は主に「絶滅種」「野生絶滅種」「絶滅危惧種」「準絶滅危惧種」のカテゴリーに分類されています。

「絶滅種」……我が国においてすでに絶滅してしまったと考えられる種。
「野生絶滅種」……飼育・栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種。
「絶滅危惧種」……絶滅の危機に瀕している種。リスト上では絶滅危険度にあわせて1類、1A類、1B類、2類に分けられる。
「準絶滅危惧種」……現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧種」に移行する可能性のある種。
(※以上、環境省HPより適宜抜粋。絶滅危惧種の1類、1A類、1B類、2類の数字は、実際はローマ数字。)

 以下、レッドデータリストを参考に、動物・植物ごとに、絶滅種と野生絶滅種(カッコ内)の数をまとめました。

【動物絶滅種・野生絶滅種】
・哺乳類:7
・鳥類:15
・爬虫類:0
・両生類:0
・汽水・淡水魚類:3(1)
・昆虫類:4
・貝類:19
・その他 無脊椎動物
計:49種類(野生絶滅種:1種)

【植物】
・維管束植物:28(11)
・蘚苔類:0
・藻類:4(1)
・地衣類:4
・菌類:25(1)
計:61種類

13分類総計:110種類 (野生絶滅種:14種)
(※以上、環境省レッドリスト2020より)

 日本において、絶滅した動植物は実に110種類。野生絶滅種を加えると、124種類にのぼります。

 それでは、かつて日本に生息していた絶滅種のうち、代表的な生き物を5種類、ご紹介しましょう。

ニホンオオカミ

 かつて日本に広く分布していたニホンオオカミは、明治維新以降、西洋犬の輸入による狂犬病やジステンバーといった伝染病被害、害獣として徹底駆除されたなどの要因により、1905年1月の捕獲歴を最後に絶滅したとされています。今はたった3体の標本からでしか、往時の姿を知ることができません。

 オオカミというと体格が大きくがっしりしたイメージですが、日本固有種(タイリクオオカミの亜種とも)であるニホンオオカミは、身体の大きさ(尾は含まない)が81.2~111.5cm、尾の長さが30.3~41cmと小型サイズ。標本を見ると、オオカミというよりイヌのような姿をしています。

ニホンカワウソ

 河川流域、海岸に生息し、魚やエビ・カニを食べていたとされるニホンカワウソは、本州以南亜種と北海道亜種の2種類がいましたが、いずれも乱獲や生息域の減少、漁網に絡まっての事故死、水質汚染などが原因でその数を急速に減らし、本州以南亜種は1979年に高知県で目撃、北海道亜種は1950年代に知床で捕獲されて以来公式記録はなく、絶滅したとみられています。

 体は55~58cm、尻尾は35~56cm、体重は4~11kgとされ、水面から顔を出して周囲を警戒できるよう、目と鼻が頭の上にあるのが特徴です。毛皮は保温性に優れ、やわらかく光沢があることから、密猟の標的になってしまいました。

オガサワラガビチョウ

 小笠原諸島の海岸そばの森林に生息していたとされるツグミの仲間です。ガビチョウとは漢字で「畫眉鳥」と書き、目のあたりの文様から名づけられたとされています。体長は10cmとツグミとしては小型で、色は全体的に深いオリーブ色ですが喉・腹は白く、背中に入った黒いしま模様が特徴的です。

 絶滅してしまった原因は諸説ありますが、小笠原に寄港する欧米の捕鯨船に乗っていたブタやネズミが島に大量に流入したことがきっかけといわれています。地上で生活するオガサワラガビチョウの巣がブタやネズミによって荒らされ、卵や雛が捕食されてしまったのです。やがて本格的に移住者がやってきた1830年には環境悪化に拍車がかかり、オガサワラガビチョウはその姿を消してしまいました。

ミナミトミヨ

 京都府・兵庫県内を生息域としていたトゲウオ科トミヨ属の淡水魚で、トミヨ属ではもっとも南に生息していたことから名づけられました。体調は45mm~4cmほどと小さく、名前の通り背びれがトゲトゲしているのが特徴です。

 湧き水のある池、セリ田といったきれいな水辺を好むため水質の悪化に弱く、農薬散布や都市開発による生息域の消失、湧き水の枯渇などが原因で数が激減。有効な手立てもないまま、兵庫県では1930年代、京都府では1960年代に絶滅とされました。日本の魚類では絶滅種第1号の淡水魚とされます。

タカネハナワラビ

 シダ植物ハナヤスリ科のシダ植物で、落葉広葉樹林の下に生息。三股に分かれた葉は高さ5~10cmと、とても小さなシダです。寒い環境を好み、朝鮮半島や千島列島のパラムシル島ほか、日本では北海道の有珠山に自生していました。しかし1997年に有珠山で噴火が起こり、自生地は全滅。タカネハナワラビは絶滅となってしまったのです。

 ハナヤスリ科ではイオウジマハナヤスリも同様に絶滅したほか、ハナワラビ属ではミヤマハナワラビ、イブリハナワラビ、ヒメハナワラビ、ミドリハナワラビが絶滅危惧種に、ホウライハナワラビが準絶滅危惧種に指定されています。

人間の活動により絶滅スピードが早まっている

 本来地球の長い歴史において、生き物の進化、自然淘汰によっての絶滅は当然あるものです。しかし昨今の絶滅は、人間の営みによる乱獲や環境破壊が主な原因となっており、生き物の絶滅スピードは自然界のそれをはるかにこえているといわれています。

 たった1種滅んだだけでも生態系のバランスは大きく崩れ、地球環境を悪化させる原因になります。現在起こっている異常気象の数々も、生態系のゆがみが一因であるという指摘もあります。

 今ある在来種を守るために私たちひとりひとりが何をするべきか、より真剣に考えなければならない時に来ているのかもしれません。

<参考サイト>
・レッドリスト・レッドデータブック(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/index.html
・環境省生物多様性センター いきものログ(環境省)
https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/zukan?_action=zukanall
・環境省レッドリスト2020
https://www.env.go.jp/content/900502268.pdf
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