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DATE/ 2023.08.05

「道の駅」なぜ増加?東京は1つだけって本当?

 新たな観光の目玉として、近年注目されている「道の駅」。その数は年々増加しており、現在は日本全国で1,204駅(令和5年2月28日時点)となっています。

 道の駅は、なぜこれほどまでに人気なのでしょうか。

「道の駅」とは

 道の駅は車で移動する人のための施設で、休憩場所や道路情報の提供、そして地域とのつながりを目的とした施設です。高速道路のサービスエリア、パーキングエリアの一般道版といったイメージで、エリア内にはトイレや食事場所、地元の特産品を売るお店などがあります。運営は民間ではなく、自治体または公的な団体が行っているのも特徴です。

 道の駅のアイデアが生まれたのは1990年。とあるシンポジウムで「道路にも鉄道のようにトイレのある駅をつくってみてはどうか」という市民からの提案を受け、1991年に山口県、岐阜県、栃木県の3県で仮設の休憩・案内施設が設置され、実証実験が行われました。

 その結果「地元の特産をアピールできた」「コミュニティが生まれた」などの効果が認められ、1993年4月、国の認可を受けた103の施設が「道の駅」として誕生したのです。

「道の駅」その独特の魅力

 道の駅がオープンすると、地域内外問わず多くの人が利用するようになりました。自治体主導ということもあり、単なる休憩施設としてだけでなく地元のものをPRする場、人との交流を楽しむ場の役割も求められ、直売所やイベント会場、温泉、運動場、美術館、宿泊施設、デイサービス……などなど、地域に寄り添いつつ、地域の特色を前面に押し出した、個性豊かな道の駅が続々と登場しました。

 昨今は移動のついでというよりも、観光の目的として道の駅を選び、訪れる人が少なくありません。いまや道の駅は “地域活性化”“地域創生”の中心ともなっています。

東京にはたった1駅しかない!?「道の駅」の設置条件

 2023年2月28日現在、全国の道の駅は1,204駅。46都道府県中、道の駅が最も多いのは北海道で127駅、次に岐阜県の56駅、次が長野県の53駅となっています。

 逆に最も少ないのが東京都で、八王子にある「八王子滝山」のたった1駅のみ。次が神奈川県の4駅、大阪府の10駅と、都市部ほど道の駅が少ない傾向となっています。

 これはなぜかというと、国が指定している「道の駅の設置条件」が、都市の事情にそぐわないためと考えられます。

 道の駅を設置するためには、以下の要件があります。

・24時間利用できる「充分な容量を持った駐車場」「清潔なトイレ」「子育て応援施設(ベビーコーナー等)」があること
・情報提供機能を持つこと
・文化教養施設、観光レクリエーションなど地域振興施設を設置すること
・主要経路をバリアフリー化すること

 これらの要件を全て満たすためには、十分に広い敷地と環境整備が必要不可欠です。全国の多くの道の駅が山間部にあるのはこのためで、地価が高く、かつ住宅が密集して騒音が発生しやすい都市部では、要件が満たしにくいのです。

 また東京や神奈川の場合、すでに観光スポットやコミュニティ施設が充実しており、わざわざ道の駅をつくって地域活性化に繋げる必要がないという理由もあるのでしょう。

今後は「防災拠点」の役割も

 国は今後の方針として、道の駅を「地方創生・観光を加速する拠点」と位置づけ、道の駅のソフト・ハード面を強化するほか、「防災拠点としての機能強化」を掲げています。

 利用者を楽しませてくれるテーマパークとして、そして地域住民にとってはますます心強い存在となっている道の駅。今後どのようにパワーアップしていくのか、要注目です。

<参考サイト>
・道の駅公式ホームページ
https://www.michi-no-eki.jp/
・「道の駅」の歴史(国土交通省 北海道開発局)
https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_kei/slo5pa000000dimf.html
・道の駅案内(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/index.html
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