テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.10.06

病気の前段階?「未病」とは?

 薬用養命酒のCMをはじめ、雑誌やテレビでも言われだした「未病」という言葉。そのルーツは古き中国の医書にあった。そして、現代を生きる私たちに病気というものの考え方を今一度考え直させてくれるものなのである。

「未病」って何?

 熱はない。でも、疲れる、食欲がない、咳が出る。どれもひどい症状とまではいかないけれど、「何となく」だるい。誰もがそんな経験があるだろう。

 この「何となく」な体の不調を、「不定愁訴(ふていしゅうそ)」という。未病とは、このような病気になる前の段階のことを言う。

病む前に治すという考え方

 「未病」のルーツは約二千年前にさかのぼる。

 中国の古い医書、『黄帝内経』には、「聖人不治己病治未病」(賢い人は病気になってから治すのではなく、未病のうちに治す)とある。この中の「未病」(イマダ病二ナラザル)がピックアップされ、日本でも注目されるようになった。

 今日の医療では、病を薬で治し、悪いところを切り取る。しかし、そんなものがない時代には病が骨身に染み入る前に、表皮を伝っている段階で身を守らなくてはならなかった。

百歳まで生きる

 『黄帝内経』によれば、それが書かれたよりももっと昔の人間は、百歳まで生きたという。今では百歳も珍しくないが、これだけ医療が発達しての長寿である。しかし当時、民間療法の類しかなかった時代に百が寿命とされていたのだから驚きだ。

 季節によって生き方を変え、欲におぼれる(酒を飲みすぎる、女を求めすぎる、遊んで体を疲労させすぎる)ことなく少しでも不調が現れたら養生することで、病気になるリスクを大幅に下げられるという。

 肝臓の数値が少し悪くなっても胃の痛みが強くなっても、病気とは言われていないから大丈夫、という考え方は、その症状を悪化させることにつながる。ちょっとした不調を見逃さないということは、先に待っている病気を防ぐことになる。

ふるきをたずね今に活かそう

 『黄帝内経』には、季節ごと、体質ごとにどのように過ごせばよいかについても書かれている。食事や生活に気を配り、精神的な部分でもケアをしっかりすることは、昔から大切なこととされていたのだ。

 そんなことわかっているという人は多いかもしれない。しかし今の発達した医療に身を任せるだけでなく、生活を顧みている人がどれほどいるだろうか。

 大きな病気にかかったとき、抗生物質が必要になってくるときはある。悪い部分を切除しなければならない場合もある。だがそれには副作用などの大きなリスクがともなう。生活を正すだけで不調から立ち直れるのだとすれば、余計な薬を飲まなくても済むのだ。

 『黄帝内経』を端緒に、今では「未病」かどうかのチェックができるサイトもあり、書籍も出ている。加えて、何より自分の感覚を大切にしたい。あなたの体をよく知っているのは、あなた自身なのだから。

<参考文献>
・『病を治す哲学 伝説的医書「黄帝内経」の驚異』(青島大明著 講談社+α新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?

東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
2

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点

猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事
3

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
中西輝政
京都大学名誉教授
4

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原

『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
堀口茉純
歴史作家
5

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事