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「ゆとりのある老後」を過ごすにはいくら必要?
2019年には「老後2000万円問題」が話題となりました。これは「夫婦2人(男性65歳以上、女性60歳以上)の老後には、2000万円を貯蓄から切り崩す必要がある」という報道です。翌年の2020年に統計対象が見直され、試算上ではもう少し余裕がある話になったようです。ただしこれはゆとりを持って暮らしたいと思うと、もう少し資金が必要になるようです。では一体いくらあれば、安心してゆとりのある老後を迎えることができるのでしょうか。
これに対して、公益財団法人生命保険文化センターが2022年10月に発表した「生活保障に関する調査」によると、老後に夫婦2人で暮らしていく上で最低必要だと思われる生活費は月額23.2万円。つまり、妻が専業主婦だった家では毎月1.5万円程度のマイナスとなります。さらに同調査では「ゆとりある老後生活費」は月額37.9万円となっています。この場合、同じ条件であれば毎月16.2万円のマイナス、夫婦とも正社員で共働きだった場合の平均26.8万円からすると11.1万円のマイナスとなります。65歳で年金をもらいはじめて、その後ゆとりのある生活をする場合、以下の金額を想定しておく必要があります。
【夫婦どちらかが会社員で片方がその扶養に入っていた場合】
退職後25年の場合 毎月16.2万円×12ヶ月×25年=4860万円
退職後30年の場合 毎月16.2万円×12ヶ月×30年=5832万円
【夫婦共働きで正社員だった場合】
退職後25年の場合 11.1万円×12ヶ月×25年=3330万円
退職後30年の場合 11.1万円×12ヶ月×30年=3996万円
また三井住友銀行の発表によると、60歳で定年後、24年間夫婦2人でゆとりのある生活に必要な生活費は毎月約36万円とされています(24年間で合計1億400万円)。先に引用した資料では月額37.9万円だったのでほぼ同じような結果といえるでしょう。またこちらの調査では、夫婦二人合わせた厚生年金を毎月約22万円(24年間で6,340万円)、平均退職金を約2,260万円と見積もり、不足分を1800万円としています。手前の記載では退職金を考慮しなかったので、同じようにここでも退職金を含めた金額として考えると、4060万円となります。
旅行やレジャー 60.0%
日常生活費の充実 48.6%
趣味や教養 48.3%
身内との付き合い 46.2%
耐久消費財の買い替え 31.7%
子供や孫への資金援助 19.4%
隣人や友人とのつきあい 12.5%
とりえず貯蓄 3.9%
その他 0.3%
わからない 0.5%
半数以上の人は「旅行やレジャー」を挙げています。老後はこれまで忙しくていけなかった場所に行ってみたい、ゆっくり過ごしたいという気持ちが生まれることは想像に難くありません。また、「日常生活の充実」とは「食費」、「住居費」、「衣服代」といったものへの消費を意味しています。「耐久消費財の買い替え」は、テレビや冷蔵庫、自動車といったものの買い替えです。
住宅ローンを組んだタイミングによっては、給与収入が減った老後もローンの返済が残る場合もあるでしょう。また老後には、特徴的な支出があることについて把握しておくことも大切です。例えば、「医療費」「介護費」「住宅リフォーム代」といったものは突発的ですが、それなりに大きな金額となります。またこれらの費用が発生するリスクは老後ではかなり高いと言っていいでしょう。こういった出費に柔軟に対応できる経済的ゆとりも必要です。
もしiDeCoを使って毎月2.3万円を利率5%で運用し、35歳から30年積み立てた場合、総額はおよそ1,875万円になっています。老後の自由を確保するために大事なことは、早めに老後の資金計画を立て、無理のない範囲で実行していくことではないでしょうか。積み立てで資金を確保する方法では、長い時間をかけるほど苦しみは少なく、結果は大きくなると考えられます。
「ゆとりある老後」には毎月38万円必要?
2021年3月のデータによると、年金でもらっている平均額は厚生年金保険(第1号)の65歳以上で、男性16万3380円、女性10万4686円です。一方国民年金のみの場合では、男性5万9013円、女性5万4346円となっています。つまり、夫婦が共に正社員で共働きだった場合、平均年金受給額は約16.3万円+約10.5万円でおよそ26.8万円程度となります。これに対して、夫が厚生年金に入っていて妻が夫の扶養に入って働いていた場合の平均年金受給額は16.3万円+5.4万円で21.7万円程度です。これに対して、公益財団法人生命保険文化センターが2022年10月に発表した「生活保障に関する調査」によると、老後に夫婦2人で暮らしていく上で最低必要だと思われる生活費は月額23.2万円。つまり、妻が専業主婦だった家では毎月1.5万円程度のマイナスとなります。さらに同調査では「ゆとりある老後生活費」は月額37.9万円となっています。この場合、同じ条件であれば毎月16.2万円のマイナス、夫婦とも正社員で共働きだった場合の平均26.8万円からすると11.1万円のマイナスとなります。65歳で年金をもらいはじめて、その後ゆとりのある生活をする場合、以下の金額を想定しておく必要があります。
【夫婦どちらかが会社員で片方がその扶養に入っていた場合】
退職後25年の場合 毎月16.2万円×12ヶ月×25年=4860万円
退職後30年の場合 毎月16.2万円×12ヶ月×30年=5832万円
【夫婦共働きで正社員だった場合】
退職後25年の場合 11.1万円×12ヶ月×25年=3330万円
退職後30年の場合 11.1万円×12ヶ月×30年=3996万円
退職金を含めて3000万円から6000万円程度?
ただしこれは退職金を含んでいないので、状況によっては退職金で一部分をまかなえる可能性はあります。退職金は一般的に1000万円から2000万円程度といったところのようです。より豊かな老後を望むには、もちろんそれぞれの家庭で住む場所やライフスタイル、健康の度合いなどによって大きく変化しますが、おおよそ退職金を含めて3000万円から6000万円以上が必要だと考えることができそうです。また三井住友銀行の発表によると、60歳で定年後、24年間夫婦2人でゆとりのある生活に必要な生活費は毎月約36万円とされています(24年間で合計1億400万円)。先に引用した資料では月額37.9万円だったのでほぼ同じような結果といえるでしょう。またこちらの調査では、夫婦二人合わせた厚生年金を毎月約22万円(24年間で6,340万円)、平均退職金を約2,260万円と見積もり、不足分を1800万円としています。手前の記載では退職金を考慮しなかったので、同じようにここでも退職金を含めた金額として考えると、4060万円となります。
「ゆとりのある老後」のイメージとは
では、ここでいう「ゆとりのある老後」とはどのようなものでしょうか。生命保険文化センターは「生活保障に関する調査(2022(令和4)年度)」をまとめていますが、この調査の質問項目に「『経済的にゆとりのある老後生活のための必要額』の使いみちをどのようにお考えですか」という項目があります。選択肢のうち、回答者が選んだ項目ごとの割合は、多いものから以下の通りです。旅行やレジャー 60.0%
日常生活費の充実 48.6%
趣味や教養 48.3%
身内との付き合い 46.2%
耐久消費財の買い替え 31.7%
子供や孫への資金援助 19.4%
隣人や友人とのつきあい 12.5%
とりえず貯蓄 3.9%
その他 0.3%
わからない 0.5%
半数以上の人は「旅行やレジャー」を挙げています。老後はこれまで忙しくていけなかった場所に行ってみたい、ゆっくり過ごしたいという気持ちが生まれることは想像に難くありません。また、「日常生活の充実」とは「食費」、「住居費」、「衣服代」といったものへの消費を意味しています。「耐久消費財の買い替え」は、テレビや冷蔵庫、自動車といったものの買い替えです。
住宅ローンを組んだタイミングによっては、給与収入が減った老後もローンの返済が残る場合もあるでしょう。また老後には、特徴的な支出があることについて把握しておくことも大切です。例えば、「医療費」「介護費」「住宅リフォーム代」といったものは突発的ですが、それなりに大きな金額となります。またこれらの費用が発生するリスクは老後ではかなり高いと言っていいでしょう。こういった出費に柔軟に対応できる経済的ゆとりも必要です。
なるべく早いうちに老後の資金計画を
もちろんそれぞれの価値観の中で、老後何を大事にして生きていくかは異なります。ただし、日本人の平均寿命は、2022年(令和4年)の調査で男性81.05年、女性87.09年です。65歳で年金をもらいはじめたとすれば、男性は16年、女性で22年程度を過ごすことになるかもしれません。この間の生き方の自由を保障するには、それなりの資金が必要です。もしiDeCoを使って毎月2.3万円を利率5%で運用し、35歳から30年積み立てた場合、総額はおよそ1,875万円になっています。老後の自由を確保するために大事なことは、早めに老後の資金計画を立て、無理のない範囲で実行していくことではないでしょうか。積み立てで資金を確保する方法では、長い時間をかけるほど苦しみは少なく、結果は大きくなると考えられます。
<参考>
令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf
プレスリリース「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)」まとまる|公益財団法人生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/files/press/PR_web.pdf
2022(令和4)年度 「生活保障に関する調査」|公益財団法人生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf
定年後の収入と支出を知る|三井住友銀行
https://www.smbc.co.jp/kojin/special/retirement/balance/
iDeCo(イデコ)の運用利回りとは?積立額と運用利回り別にシミュレーションして解説します!|MUFG
https://www.bk.mufg.jp/column/shisan_unyo/b0138.html
令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001027360.pdf
プレスリリース「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査(速報版)」まとまる|公益財団法人生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/files/press/PR_web.pdf
2022(令和4)年度 「生活保障に関する調査」|公益財団法人生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf
定年後の収入と支出を知る|三井住友銀行
https://www.smbc.co.jp/kojin/special/retirement/balance/
iDeCo(イデコ)の運用利回りとは?積立額と運用利回り別にシミュレーションして解説します!|MUFG
https://www.bk.mufg.jp/column/shisan_unyo/b0138.html
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