社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.01.26

意外と知らない!ストレッチとマッサージの違い

 身体が凝って固まったときには、マッサージやストレッチを行うと少しずつ解消します。ではこの二つにはどういう違いがあるのでしょうか。ストレッチは自分で身体を伸ばすもの、マッサージは誰かにやってもらうものという印象を持つ人は多いかもしれません。たしかに一部こういう側面はありますが、正確ではありません。詳しく見てみましょう。

ストレッチの効果

 大きく言えば「ストレッチ」は「関節を動かしながら筋肉を伸ばして血流を改善するもの」です。ストレッチの中にも、比較的早く動作を繰り返すことで筋肉を伸縮させる「動的ストレッチ」とゆっくりと関節を動かしたのちにそこでしばらく静止させる「静的ストレッチ」があります。

 運動前に「動的ストレッチ」を行うと、交感神経が高まって体温が向上します。身体の可動域を高めることができるので、怪我の予防に効果的です。「ラジオ体操」は代表的な動的ストレッチと考えていいでしょう。一方、運動後には「静的ストレッチ」が向いています。関節を動かしてゆっくりと筋肉を伸ばし、一定時間保持するものです。これにより副交感神経が高まり、筋肉の緊張を和らげることができます。

 また一般的に身体が凝った状態だと関節が動かしづらくなっています。こういったときには、「静的ストレッチ」を先に行ってから「動的ストレッチ」に移行した方が効果は高いようです。さらに日頃からこういったストレッチを行っておくことにより、筋肉に柔軟性が生まれます。筋肉が柔らかい状態にしておくと、怪我をしにくくなる効果もあります。

マッサージの効果

 一方、「マッサージ」は関節を動かさず、押したり揉んだりして部分的に圧力をかけて血流をよくするものです。つまり、外部から身体に圧力をかけることでコリをほぐします。これには東洋医学での「つぼ」という概念の影響を受けている「あん摩」や、「つぼ」の影響を受けて日本で発展した「指圧」、西洋で古くから行われてきた、オイルなどを用いながらリンパの流れを改善するマッサージなど、さまざまな種類があります。

 おおよそこれらは、基本的に心身をリラックスさせながら筋肉を局所的に刺激して血流を促します。このことでコリをほぐしたり、疲労回復に導いたりする効果があるようです。ちなみに「あん摩」と同様、東洋医学の考え方に基づいて行われる「鍼灸」にも、血液の循環をよくしたり、自律神経を整えたりする効果があるようです。

それぞれ異なるアプローチ

 ストレッチもマッサージも共に「血行を促進する」という意味では、同じ効果があると考えていいでしょう。血行が促進されることでコリや関節痛から解放されたり、むくみや冷えが解消されたりします。血行が良くなれば疲労も抜けやすくなります。このときの方法にストレッチとマッサージがあるわけですが、ポイントはその「アプローチ」の仕方です。

 ストレッチは筋肉全体に働きかけて、筋肉を柔らかくしたり身体が活動しやすい状態にしたりするものと考えていいでしょう。ストレッチを生活に取り入れることで筋肉が凝りにくくなったり、柔軟性が向上して怪我をしにくい身体になったりします。これに対してマッサージは、局所的に筋肉をほぐす応急処置と言えそうです。ただしマッサージは、心身をリラックスさせる効果(リラクゼーション効果)がとても高いです。緊張した身体をリラックスさせることで血流が良くなり、結果的にストレスが解消したり疲労回復したりと、生活の質の向上に役立つといえます。

<参考>
ストレッチング│e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-082.html
あん摩マッサージ指圧治療とは│公益財団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
https://www.zensin.or.jp/kokumin/anma.html
動的ストレッチングか静的ストレッチングか?【前編】|ミューラージャパン公式コラム
https://www.muellerjapan.com/blog/archives/16088/
鍼灸の基礎知識|公益社団法人 日本鍼灸師会
https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード

「50億人を救う」と宣言したゲイツとの粋なエピソード

内側から見たアメリカと日本(3)ビル・ゲイツの世界戦略

ラストベルトはアメリカの経営者により生まれたが、それは決して攻撃ではなく、合理的な経営判断による必然的なりゆきだった。その一例として島田氏は、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が中国でスピーチした光景を思い出す。世...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/17
3

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
4

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
5

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用

公共図書館では質の高い「レファレンス」サービスを提供しているが、活用する人は限られている。だが、実は全国の図書館ネットワークを縦横無尽に活用できる、驚くほどに便利な仕組みなのだ。今回は図書館のレファレンスで何が...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/15