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DATE/ 2024.09.04

乾電池に絶対してはいけないこと

 家電の作動や防災用品の備蓄品として、何かとお世話になる乾電池。しかし使い方や保管の仕方を誤ると、発火など重大な事故につながる危険があるため、取り扱いには十分気をつけなければなりません。

 今回は、絶対やってはいけないマンガン・アルカリ乾電池の使い方や、正しい保管方法について解説します。

【NGケース1】新品の電池・古い乾電池を混ぜて使う

 未使用の新しい乾電池と、使いかけのものや使用期限が過ぎた古い乾電池を一緒に使用するのはNGです。意外とやりがちですが、これは電池の「液漏れ」「破裂」を起こす可能性があり、非常に危険な使い方となります。

 電池の中は+と-の両極間に電気を発生させるための電解液(水酸化カリウムなど)で満たされています。液漏れは、この電解液が外に漏れてしまった状態のことです。

 混在した状態で機器に装着し通電してしまうと、新品の電池の働きによって、残量の少ない古い電池からエネルギーを無理に取りだし続ける状態、いわゆる「過放電」が起こります。その状態が続くと、電池内部の化学反応によりガスが発生。内部の圧力が上昇して外缶を突き破り、液が漏れ出してしまうのです。

 電解液の主成分である水酸化カリウムは、非常に強いアルカリ性です。そのため、皮膚に触れると化学やけどを起こすほか、目に入った場合は失明のおそれすらあります。また漏れた液が使用機器につくと、故障の原因になります。

【NGケース2】機種の違う電池を混ぜて使う

 メーカーが違うものや銘柄が違うもの、マンガン・アルカリを混在させて使用するのは絶対に避けましょう。電池容量やエネルギーが異なるために、容量の少ない方が過放電になり、液漏れの原因や破裂にいたる場合があります。

 乾電池の機種によっては混在させて使うこともできますが、その時は必ずメーカーのHPで混在可能な機種かどうかを確認しましょう。しかしそれは緊急の場合にのみにとどめたいところ。電池を取り替える際は『新品、同種』が大前提です。

【NGケース3】電池に強い衝撃を与え、損傷させる

 高いところから落としてしまうなどして電池を傷つけてしまうと、液漏れや破裂につながります。椅子の上や机の上など、転がりやすい場所に置きっぱなしにしたり、粗雑に扱って落としたりしないよう気をつけましょう。

【NGケース4】電池を機器に入れたまま長期間放置する

 使いかけの電池をそのまま機器内に放置しておくのは危険です。機器によっては電源オフの時でも微弱な電流が常時通電していることがあり、知らない間に電池が消耗しています。そうなるとエネルギーが常に放電し続ける過放電状態となってしまい、放置すると液漏れ・破裂する危険性が高まります。

 これから長期間使わないと思われる機器(買ってすぐに飽きたものや、シーズン中にしか使わない季節家電など)をしまう時には電池を外し、電池はそのまま処分したほうが安全です。また機器の動作が不安定になるなど電池切れのサインが見られたら、過放電を防ぐため、できるだけすみやかに新品と交換しましょう。

【NGケース5】電池と金属類(アクセサリーなど)と一緒に保管する

 +端子と-端子が直接接触すること、電流を通しやすい金属類を介してつながること(無負荷状態)を「短絡」、または「ショート」といいます。ショート状態となると、そこに過大なエネルギーが集中発生し、電池がにわかに発熱して液漏れ・破裂を起こす危険性があります。

 実際に起きた例として、あるホームセンターの店舗がポリ袋にボタン電池をまとめて保管していたところ、ショートによる発火で店舗が全焼してしまったという事故がありました。

 電池が発熱すると、やけどの危険はもちろん、最悪の場合、火災につながりかねません。保管の際はアクセサリーや鍵、針金、コインなど金属製のものとは一緒にしないこと、また処分の際は電池同士が触れることのないよう、セロハンテープやガムテープなどで巻いて絶縁するようにしましょう。

【NGケース6】+端子、-端子を逆にして電池を入れる

 ショートする可能性が高い危険な使用法が、機器に入れる際に誤って+端子と-端子を逆に入れてしまう「逆接」です。逆接することにより、機器内で+端子と-端子が直接つながるような回路となってしまうため、ケース5と同じく急激な大電流を起こすことになり、ショートしやすくなってしまうのです。

 機器に電池を装着する際は+と-が合っているか、しっかりと確認しましょう。

【NGケース7】高温多湿の場所に保管する

 電池の適切な保管温度は10~25度といわれています。前述したように電池内は化学物質で満たされているため、30度を超えるような高温の場所や直射日光が当たる場所、湿気の多い場所に放置してしまうと、想定外の化学反応が起きる可能性があり、液漏れや破損による事故はもちろん、電池の劣化にもつながります。

 特に昨今の気候は変化が激しく、日本の夏の気温は40度にも達するほどになっています。なかでも備品を置く屋外の倉庫やコンテナ内は高温になりがちです。入れっぱなしの電池がないか、保管している場所に問題がないかを定期的に点検する習慣をつけましょう。

 なお保管の方法として「冷蔵庫で保管するといい」という噂がありますが、冷蔵庫から取り出したあとは室温による急激な温度変化で結露がしやすくなり、サビの原因となるため適切でありません。

もしも異常を発見したら

 もしも電池の破損を発見したら、電池には直接触れず、ゴム手袋などを装着した状態ですみやかに処分しましょう。液に触れてしまった場合はすぐに大量の水で洗い流し、清潔なタオルで拭き取ります。皮膚に異常を感じたら、ためらわず医師に相談してください。

 衣服も同様に、しっかり水で洗い流してすぐに洗濯を。目に入った場合は決してこすらず、大量の水で洗い流し、すぐに専門医まで受診するようにしましょう。機器に付着した場合は、綿棒ややわらかいティッシュなどで丁寧に拭き取り、使用可能かどうかはメーカーに問い合わせるなどして慎重に見極めるようにしてください。

 電池はその手軽さから、子どもでも扱う機会が多い日用品です。お子さんがいる家庭や学校では特に、電池の適切な扱い方やその危険性について、しっかり大人が伝えるようにしたいですね。

<参考サイト>
・電池の発熱、液漏れ、破裂に注意しましょう!(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/2018/pdf/consumer_safety_release_180720_0001.pdf
・液もれの対処方法・電池の正しい使い方と保管方法(Panasonic)
https://panasonic.jp/battery/contents/guide/storage.html
・安全に関するご注意/ボタン電池の適正分別・排出の確保について(三菱電機)
https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/denchi/product/attention.html
・電池にまつわるトラブルの内容は具体的にどんなものですか?(一般社団法人電池工業会)
https://www.baj.or.jp/battery/trouble/q03.html

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