人は禁止されると、何故やりたくなるのか~悪への衝動を弱める「逆説的治療」
1920年、アメリカで禁酒法が制定された。しかし、人々は自宅で酒を自ら作り、不法の酒場でこぞって酒を楽しんだ。一説によると、1933年に禁酒法が終わったとき、アメリカの酒場は禁酒法制定前の2倍以上にまで増えていたという。この法律は、まったく反対の効果をもたらしてしまったのである。
抵抗や禁止を受けると、それに逆らおうとする気持ちが強まってしまうのは、よくあることだ。中学・高校時代の「反抗期」にはよく見られる現象だし、『ロミオとジュリエット』のような「禁じられた恋」が燃え上がることも珍しくない。しかし、なぜ人は禁止されると、それをやりたくなってしまうのだろうか。
アンビバレンスの大きな特徴の一つは、一方の気持ちにだけ肩入れして、そちらに誘導や無理強いしようとすると、しばしば反対のことが起きてしまうことだ。禁酒法時代のアメリカ人や『ロミオとジュリエット』は、まさにその典型例といってよいだろう。
幸いなことに、そうした考えやイメージを思い浮かべ、それに不安や罪悪感を抱く人が、そうした行動を実際にやってしまうことは、まずないという。本当に行動に及ぶ人は、不安や罪悪感ではなく、快感や高揚感を覚えるのだそうだ。むしろ、そうしたことに強い罪悪感を覚えるのは、おぞましい行動とは無縁の人、マジメな人なのである。
効果があるのは「逆説的治療」だ。たとえば、おぞましいことをもっと想像すると、おぞましいことへの衝動が弱まってくる。重要なのは、問題を無理に取り除こうとするのではなく、まずはありのままに受け止めることである。自分のアンビバレンスを認めることが、第一に大切なのだ。
抵抗や禁止を受けると、それに逆らおうとする気持ちが強まってしまうのは、よくあることだ。中学・高校時代の「反抗期」にはよく見られる現象だし、『ロミオとジュリエット』のような「禁じられた恋」が燃え上がることも珍しくない。しかし、なぜ人は禁止されると、それをやりたくなってしまうのだろうか。
「アンビバレンス(両価性)」は正常心理
意外と広く知られていないことだが、人間は正反対の気持ちを同時に抱える生き物だ。これを英語では、「アンビバレンス」、日本語では「両価性」という。正常な心の動きで、誰にでも普通にあることだ。ある人を好きになると同時に、ある部分を嫌うのは、何も珍しいことではない。アンビバレンスの大きな特徴の一つは、一方の気持ちにだけ肩入れして、そちらに誘導や無理強いしようとすると、しばしば反対のことが起きてしまうことだ。禁酒法時代のアメリカ人や『ロミオとジュリエット』は、まさにその典型例といってよいだろう。
「おぞましい想像」に悩むのはマジメな人
世の中には、自分がひどいことをしてしまうのではないか、大きな罪を犯してしまうのではないかと本気で心配する人がいる。たとえば、自分の子どもやペットを誤って傷つけてしまうのではないかと心配し、自分にはそうした願望があるのではないかと思い込んでしまうのだ。幸いなことに、そうした考えやイメージを思い浮かべ、それに不安や罪悪感を抱く人が、そうした行動を実際にやってしまうことは、まずないという。本当に行動に及ぶ人は、不安や罪悪感ではなく、快感や高揚感を覚えるのだそうだ。むしろ、そうしたことに強い罪悪感を覚えるのは、おぞましい行動とは無縁の人、マジメな人なのである。
ありのままを受け止めればよい
では、こうした想像に対しては、どのように対処すればよいのか。これに限らず、たいていの問題行動というのは、止めるように言えば言うほど、悪化していくという。邪悪や罪悪感を排除しようとすればするほど、邪悪で不道徳な考えやイメージが強まってしまうのだ。効果があるのは「逆説的治療」だ。たとえば、おぞましいことをもっと想像すると、おぞましいことへの衝動が弱まってくる。重要なのは、問題を無理に取り除こうとするのではなく、まずはありのままに受け止めることである。自分のアンビバレンスを認めることが、第一に大切なのだ。
<参考文献>
・『あなたの中の異常心理』(岡田尊司著、幻冬舎新書)
・『あなたの中の異常心理』(岡田尊司著、幻冬舎新書)