社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.01.15

伊達マスクは当たり前?「マスク依存症」になる理由

 花粉症対策やインフルエンザや風邪予防、大掃除のときなどのホコリ対策や喉の乾燥予防など、おもに“体を守るため”に用いるのがマスクの基本的な使い方。しかし、このマスクを違う目的で使う人が増えていることが話題になっています。

 東洋経済オンラインで次のような記事を見つけました。『商品データベースを提供する株式会社プラネットが行った「マスクと伊達マスク」についてのアンケートによると、伊達マスク経験者は20.7%。男女別にみると女性の伊達マスク経験者は33.9%と、実に3人に1人が伊達マスクを経験していたことが明らかになった。さらに年代別にみたところ、「伊達マスクをしている人」は20代女性が44.9%と最も多く、「伊達マスク経験者」は53.1%と半数以上にのぼった。』 つまり、マスクをしている人の大半が風邪や花粉症などの予防や対策のためではないということになります。

 ということで、この伊達マスクとして使うという点にスポットが当てられたことから、「マスクを外すのが怖い」という心理状態に陥ってしまう「マスク依存症」と呼ばれる状態になる人たちが注目されることに。これは「マスクをしているとなんとなく落ち着く」という状態がエスカレートして手放せなくなってしまう状態を指すようです。

スッピンにマスクは女性の味方

 そもそもマスクといえば、顔を隠してくれるという点で女性には非常にありがたい存在です。ちょっとそこまでの買い物や子どもの送り迎えなど、わざわざメイクをするほどでもないけれど、かといって誰かに会ってしまう可能性もあるためスッピンではマズイというとき、マスクさえしていれば安心感がある。そういう意味で使用された方は少なくないと思いますし、それは「伊達マスク」的使用の一部になるのでしょう。

 ちなみに、スタッフの知り合いには、「出勤するのにメイクをするのが面倒だから特別な打ち合わせでもない限り、スッピンにマスクで出勤する」、なんていう強者も実際にいます。

マスク依存症って何が原因なの?

 「マスク依存症」の原因として挙げられることのひとつは容姿に対するコンプレックス。これは確かにマスクをすることで顔の大部分を覆うことができるので、見せたくないものを隠せるという安心感があります。顔を隠すことで自分を匿名化でき、自分をさらけ出しやすくなるという心理的な作用を狙って使う人もいるようです。

 隠すことを目的にするというのは、サングラスをかける感覚に近いのかもしれませんね。他にも口臭が気になって外せないという理由もあるので、対人関係に関する恐れやコンプレックスからくる心理的要因がもとになっていることが多いようです。

心配なのは日常生活への影響

 しかし、やはり常にマスクを手放せないという状態では日常生活への影響が心配されます。たとえば、お風呂やスポーツなどをするときまでマスクをしているのはどうでしょう。顔を出して話すことで交渉が円滑に進むような会議や交渉の場など、人とのコミュニケーションが求められる場で表情を隠すことはマイナスに作用しかねません。特に初対面の相手にしてみれば悪い印象を与える可能性はあったとしても好印象を与える可能性はまずないはずです。

 何にでも依存症という言葉をつければいいという風潮にも疑問を感じますが、何かに頼りすぎる、もしくはなければ生きていけないという状態は、あまり健康的ではないと思われます。マスクに関してはTPOにあわせて着脱できるぐらいにしておいたほうがいいかもしれませんね。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍

習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴

国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
小原雅博
東京大学名誉教授
2

大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた

大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた

内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題

ヒラリー・クリントン氏の全盛期は、当時夫のクリントン氏が大統領だった2000年代だったという島田氏。当時、ダボス会議での彼女の発言が全米の喝采を浴びたそうだが、およそ10年後、大統領選挙でトランプ氏と対峙した際、彼女...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/24
3

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法

「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
4

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観

岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授