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タクシー「ちょい乗り」は実質「ちょい値上げ」
2キロまでならお得!?新旧運賃を比較
タクシーの初乗り運賃が410円。いわゆる「ちょい乗り」タクシー制度が、2017年1月30日より、東京23区と武蔵野市、三鷹市を営業地域とするタクシーで始まりました。「ちょい乗り」タクシー制度は、タクシー会社の初乗り運賃の値下げ申請を受けた国土交通省による2016年8月の実証実験から検証しての実施となります。今回の改定は、従来の2㎞730円から約1㎞410円へ、「ちょい乗り」のお得感をアピールするものです。初乗りで320円のディスカウントになり、距離加算の改定が280mで90円から、237mで80円であることから、距離数での改定を単純計算で比較すると、以下のようになります。(実際は、時間距離併用制運賃として1分30秒ごとに80円加算されるので、渋滞などによって料金は少なからず変動しますので、以下はあくまで目安とお考えください)
<新運賃の目安(カッコ内は旧運賃との差額)>
・1.0㎞まで:410円(320円安)
・1.5㎞まで:490円(240円安)
・2.0㎞まで:730円(同値)
・2.5㎞まで:890円(70円高)
・3.0㎞まで:1050円(50円高)
・3.5㎞まで:1210円(30円高)
・4.0㎞まで:1370円(10円高)
・4.5㎞まで:1530円(80円高)
・5.0㎞まで:1690円(60円高)
このことから、「ちょい乗り」という言葉通り、実質的に旧乗車賃に対して、短い距離で安価設定にしつつ、2㎞以上については実質的に値上げしているという仕組みになります。値上げ分で、従来の中長距離利用者層の減数分を、「ちょい乗り」客層の増加を見込んでの料金体系と考えることができそうです。
都内で考えるとどうなるの?実際にイメージしてみると…
都内の距離感でいうと、たとえば新橋駅東口からの乗車で、比較的混雑ぎみの銀座方面に向かって、ちょい乗り運賃の410円で行くことができたのは銀座8丁目付近、さらに和光の時計塔、三越のある銀座4丁目の交差点までの運賃は、何度かの乗車でバラツキがあり、490円から650円ほどになります。外国人観光客想定でみていくと、このあたりまではちょい乗り改定の恩恵は高そうです。都内23区の場合、地下鉄やバスがあるのでそれらとの比較になってしまいますが、路線の少ない六本木ヒルズから表参道までの2㎞強でみていくと、根津美術館あたり1.5㎞付近で下車すると、80~240円ほどのお得感がでてきそうです。
中長距離利用客からのクレームによるトラブルも多い
ちょい乗り価格改定がスタートしてからのニュースを参照すると、利用客にとってもタクシー運転手にとっても賛否両論あるようです。「安くて、利用したい気持ちになる」という高齢者の声や、「2人なら、バスよりもタクシーがお得」と喜ぶ利用客の声がある一方、これまで以上に早く料金メーターが加算されることで、『いつもより料金が高い』『遠回りしたんじゃないか』など、中長距離利用客からのクレームによるトラブルも多いとのことです。距離数からの価格を比較してみるとよく分かりますが、実際はちょい乗りの利便性を隠れ蓑にしたタクシー会社によるちょい悪な中長距離の実質値上げとなっており、この施策が吉とでるか凶とでるかは、1年を通してみていく必要がありそうです。
<参考サイト>
・国土交通省ホームページ:関東運輸局プレスリリース平成28年12月20日(東京のタクシー初乗り短縮運賃の公示について)
http://www.taxi-tokyo.or.jp/pdf/info20161221.pdf
・国土交通省ホームページ:関東運輸局プレスリリース平成28年12月20日(東京のタクシー初乗り短縮運賃の公示について)
http://www.taxi-tokyo.or.jp/pdf/info20161221.pdf
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