新しい東方問題~EUの課題
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ギリシャ債務問題で思い出すヘロドトスの言葉
新しい東方問題~EUの課題(1)ギリシャのうそと借金の代償
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ペルシア戦争をはじめ、古代史においてイランとともに史劇の主役を演じたギリシャ。古代ギリシャの歴史家ヘロドトスによると、古代イラン人は「最も恥ずべき行為の第一はうそをつくことで、第二は借金をすることだ」と考えていたという。翻って現代のギリシャは、うそと借金にまみれている。歴史学者・山内昌之氏が古代ギリシャの知恵を紹介しながら、過ちを繰り返すギリシャに諌言する。シリーズ「新しい東方問題」第1回。
時間:9分45秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年8月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●ペルシア戦争に絡んでいたギリシャとイラン


 皆さん、こんにちは。

 紀元前499年以降、ペルシア戦争が、当時のアケメネス朝ペルシアとギリシャのポリス国家との間に繰り広げられたことは、高校の世界史でも馴染みが深いテーマであります。しかし、このペルシア戦争には、現代の国際危機の当事者である三つの主体と地域が絡んでいたことは、あまり知られていません。戦争の発端は、古代のイラン、すなわちアケメネス朝ペルシアの国王ダレイオスが、現在のウクライナに当たる地域に遠征を企てて、ドナウ川をはるかに越えて大遠征を行ったことにさかのぼります。しかし、そこで彼は非常に苦しい経験をすることによって、ギリシャやイランには、一時行方不明になったという誤報が伝えられます。

 いずれにしましても、ヨーロッパの併合を企て一時行方不明も伝えられた、こうした苦難あふれる遠征の機会を利用して、当時アジアの最西端にあった小アジア、すなわち、今のトルコの西端にあったイオニア地方のギリシャ人たちが反乱を起こしました。これがペルシア戦争の発端になったわけであります。


●現代ギリシャはうそと借金にまみれている


 最近のギリシャの債務問題と、イランの核協議に関する最終合意を見るにつけて、古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの言葉を思い出す人も多いでしょう。私がヘロドトスの言葉で非常に感心するのは、古代イラン人が述べたという次のような箴言(しんげん)です。それは、「最も恥ずべき行為の第一はうそをつくことで、第二は借金をすること」という言葉で、そのように古代のイラン人は考えていたというのです。

 ですから、現代のイランの商人や取引する人たちも、「俺たちはうそをつかないのだ。古代からそう言われているではないか」と言って、胸を張るそうです。しかも、「戦争をした相手国のギリシャの歴史家が言っているのだから、間違いないだろう」と言って、したたかな商才ぶりを発揮したりするというのです。

 それはさておき、『モラリア』の作者、ギリシャのプルタルコスに言わせると、順番は逆になっていまして、第一が借金をすることであり、第二がうそをつくことだというのです。いずれにしましても、借金をした者はどうしてもうそをつくということで、現代人も拳拳服膺(けんけんふくよう)しなければいけない真理がそこには含まれているのです。

 翻っ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(3)戦前から紐解く財政構造
日本も資産格差は案外大きい?…預金の偏在と世代格差
養田功一郎