新しい東方問題~EUの課題
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
窮乏ギリシャが蒸し返すナチス戦争賠償
新しい東方問題~EUの課題(3)複雑さを増す戦後賠償や金融問題
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
現在、ギリシャ金融危機やウクライナ問題、イランの核開発問題などさまざまな問題に直面しているユーロ圏だが、この状況は19世紀の東方問題とは様相を異にする新しい東方問題の誕生と言える、と歴史学者・山内昌之氏は語る。シリーズ「新しい東方問題」第3回。
時間:10分39秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫

●現代の債務返済機構と19世紀の債務管理局


 皆さん、こんにちは。

 ギリシャが借金を返すだけの国家、借金返済マシーンに事実上転落しているということについて前回お話ししましたが、ユーロ圏は、ギリシャにおいてこういう債務返還を確実ならしめるために、ギリシャの国有財算を処分していく、そうした債務返済機構を設けようとしています。これも合意の中に含まれたのです。

 この債務返済機構というユーロ圏の措置は、私たちが歴史の中で見る19世紀後半のオスマン債務管理局の仕事を連想させます。オスマン債務管理局とは、オスマン帝国、トルコの負債を確実にヨーロッパ諸国の債権者たちに返すためのものでした。債務返済にあたり、一番確実で取りっぱぐれがないのは、関税です。トルコの関税、輸出輸入税を全て債務管理局が押さえて、それを債権の回収として使っていった。こういう仕事をしたのが、オスマン債務管理局です。

 今もイスタンブールに行きますと、債務管理局が残っていまして、ちょうどイスタンブール旧市街のイラン総領事館、昔のイラン帝国の大使館だった所ですが、その大使館の通りを真っすぐ行きますと、同じ並びにオスマン債務管理局跡の立派な建物があります。私は見たことはないのですが、地下には巨大な金庫が今でも据え付けられたままだとされています。


●もともとの東方問題


 結局、今のこうしたギリシャ、それからウクライナ、あるいはイランという問題に共通する国際現象は、あえて申しますと、新しい東方問題の誕生と言えるかもしれません。

 東方問題というのは、もともと1820年代のギリシャ独立戦争を契機として、そのギリシャの独立を阻止しようとしたオスマン帝国、すなわちトルコに対してヨーロッパが干渉したことによって生じた外交問題の呼び方です。もっと具体的に申しますと、この問題をめぐり英仏が、ドイツはまだ統一していませんでしたが、ドイツの諸領邦が、あるいは、イタリアも統一前においてはイタリアの各諸国、こうした国々プラスロシアやオーストリアという大国が競争を行い、時には協調も済ませ、そして、時には同盟も結びながら、この局面を展開していったのです。こうした一連のギリシャ独立戦争以来のオスマン帝国の領土や外交をめぐる問題、これを包括する外交の概念が、東方問題と呼ばれたものであります。


●新しい東方問題にみる二つ...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(1)ハミルトンの経済プログラム
フェデラリスト・ハミルトンの経済プログラム「4つの柱」
東秀敏
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(4)「国のかたち」を守った男たち
全責任をかぶることを恐れず本義を貫く…樋口季一郎の決断と行動
門田隆将
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(4)注目されるタスクベース・アプローチ
AIは「まあまあの技術」?…タスクベース・アプローチでわかること
宮本弘曉
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(1)因果関係とは何なのか
原因と結果の迷宮―因果関係と哲学
一ノ瀬正樹
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
50代からの親の介護~その課題と準備(3)仕事と介護の両立のために
介護離職は最後の手段、介護休業制度を上手に活用すべし
太田差惠子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(8)『門』の世界観と日本の近代化
伊藤博文暗殺…日本近代化で本当にいいことがあったのか
與那覇潤
ウェルビーイングを高めるDE&I(2)人と組織を取り巻く環境変化:後編
なぜ日本の幸福度は低すぎるのか?会社任せで失われる自律性
青島未佳