トルコ民主主義の行方
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
クルド票・反クルド票の双方を集める危険な賭け
トルコ民主主義の行方(3)出直し選挙へ
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トルコの外交と内政は、ともに八方ふさがりの状況に陥っていると歴史学者・山内昌之氏は見る。それを象徴するのが、2015年6月に行われた総選挙の結果であり、その後のエルドアン大統領率いる与党の対応だ。11月にも出直し総選挙が実施されることが決まった、その原因と政府の迷走とは?(全3話中最終話)
時間:10分35秒
収録日:2015年8月5日
追加日:2015年9月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコ与党の議席減がクルド人対応に結び付いた


 皆さん、こんにちは。

 トルコの外交と内政との関係について触れてきました。前後することになりますが、この6月にトルコで行われた総選挙の結果について、少し補足して解説しておきます。

 この選挙で、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とアフメト・ダウトオール首相の与党であるAKP(公正発展党)は、従来議会で持っていた多数の議席を失い、単独では40パーセントに満たない議席にまで大きく減らすことになりました。

 そこでエルドアンは、自分の考えていた議会における憲法改正の発議、自らの権限すなわち共和国憲法の改正による大統領権限の修正・強化、これらの思惑が実現できないことを見通しました。

 そして第二に、この間に連立工作を行ったのですが、いずれの党もAKPとの連立を最終的には拒否するのです。今は暫定政府が成立しますが、連立が成立しなければ憲法上の定めによって総選挙をせざるを得ないことになります。結果として、遅くとも秋口までにそれが行われる気配が濃厚になってきました。(編集部注:その後、2015年11月1日実施を表明)

 エルドアンとしては、この機会に多数派を形成するために何を目指していくかが問題です。そのための切り口で一番重要なのは、反クルド票など、自分たちから流れて別なところに行った票をもう一度取り戻すにはどうしたらいいかということです。

 2年前に休戦していたクルドとの関係を、今回もう一度緊張化させたのは、そのためです。クルド人に対して厳しい対応をすることによって、保守的かつ右寄りの有権者たちの票を取り戻したい。その思惑をもって、クルドに対する対決を強化している。こういうふうに内政と外交が結び付いたということなのです。


●クルド票・反クルド票の双方を集める危険な賭け


 この間の選挙において、エルドアンの政党の議席を奪ったのは、HDP(人民民主党、ヘデプ)という政党です。HDPはクルド人の支持者が多い政党で、およそ10パーセント以上の得票率を獲得しました。10パーセント以上というのは大変な数字で、クルド人だけではなく、トルコ人の票も入ったことを意味します。つまり、クルド問題に関して、トルコ人の一部にも非常に同情する人たちがいることが分かったのです。なんとかしてトルコ人有権者をここから切り離した...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄