●多数の難民を吸収している湾岸諸国
皆さん、こんにちは。
前回に引き続き、湾岸諸国における難民問題の現状について、その一端をお話ししてみたいと思います。
難民といえば、どうしてもシリア人だけを連想しがちですが、同じように内戦や戦争を経験している現在のイエメンからも多くの難民が発生しています。サウジアラビアにおけるイエメン人の数は、今回の戦争が起きて以来、100万人を超えたとされています。不法にサウジアラビアに入ったイエメン人とその難民たちは、結果として全て在留許可をもらっています。そして、労働と居住の許可をもらっています。
ヨーロッパへの難民は、ヨルダン、あるいはレバノン、トルコといった中東の国々の扱いやそこでの生活と比べると、現在まだつつましやかであり、そしてシリア人の難民の生活は始まったばかりです。ともかく難民たちの一部はシリア人難民を中心に、ヨーロッパにおいて受け入れられたという面があります。にもかかわらず、湾岸がこうした難民のかなりの部分を吸収しているということも認識しておかなければなりません。
●ヨーロッパと湾岸諸国それぞれの難民受け入れ
もっとも、スウェーデンやドイツといったヨーロッパの特に難民を受け入れることに前向きな国については、そのヒューマニティーや人道性ゆえに高く評価しなければならないと思います。意外に日本では知られていない事実ですが、1970年代のレバノン内戦以来、難民に最も温かく接し、そして受け入れてきたヨーロッパ有数の国は、ドイツでした。ドイツ人のこうした人道主義的なスタンスは、多くの点で諸外国が、もちろん日本も含めて学ぶべき点が少なくありません。
一方、湾岸諸国はこの間もお話ししましたように、そこに労働などのために滞在していた家族が、他の家族をこの内戦の結果呼び寄せることになり、そうした家族の再結集、家族の再会などを通して、彼らに多くのスペースを与えているということを、バランスをもって見なければなりません。今回はそうしたシリア人以外にイエメン人も加わることで、既にいる各種難民の数は湾岸諸国、GCC(湾岸協力会議:Gulf Cooperation Council)6カ国においては150万人を上回るようになったといわれております。
●湾岸の国々で難民が目立たない理由
従って、産油国であるこの湾岸の国々、GCC諸国は、一部でいわれているほどまったく利己的な国家であるというわけではないのです。彼らはそもそも外国人をかなり受け入れることによって生活していますし、この6つの国は自分たちの仕事と生活のために外国に向かって門戸を開放している国でさえあります。彼らは従来からも、スーダンやソマリア、あるいはエリトリアといったアフリカの国々、さらにアフガニスタンなどから戦争や政治的迫害から逃れてきた難民を受け入れています。
これが目立たないのは、彼らが難民キャンプのようなテント生活を集団でしているというわけでもなく、また、時に彼らを難民として認定し「難民」ということを正面に出しているということをしていないせいもあります。すなわち、彼らが各国の社会において、それぞれの能力や事情によって労働を見つけ、そこで生活しているから目立たないということもあります。いずれにしましても、サウジアラビアのように非常に厳しい入国制限を課している国でも、困窮や苦境の中で祖国を捨てざるを得なかったアラブの同胞や紅海をはさんだアフリカの人びとに対しては、国を開放しているという面は否定できないと思います。
●80パーセント以上というGCC諸国の高い外国人比率
しかしながら、湾岸での市民の人口比率に占める外国人の割合、数を考えたとき、一層の難民を受け入れていく、あるいは無制限に難民を受け入れるということが難しいのも事実です。例えば、UAE(アラブ首長国連邦)やカタールのようなGCCの国では、既に人口の80パーセント以上が外国人になっています。そして、クウェートにおいては50パーセントを外国人が占めています。サウジアラビアでは40パーセント、バーレーンでは、およそ人口の3分の1が外国人になっています。
こうした点をもしヨーロッパと比べるならば、ヨーロッパなど他の国では、こうした高い外国人比率は、さすがにお目にかかれないのも事実です。イギリスでは8パーセントとされており、ドイツやギリシャもほぼそれに近い数字だとされています。ちなみに日本では、この外国人比率は人口のどのぐらいを占めているのでしょうか。おおよその数で申しますと、さまざまなレベルにおいて考えますと、2パーセントほどが外国人だということですから、これは世界史的に見て、極めて珍しいほど少ない数、比率になっています。
いずれにしても、...