日本経済の救世主は「雇用」の中から出現するか
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
安い労働力を使い捨てる企業が淘汰される時代に
日本経済の救世主は「雇用」の中から出現するか
伊藤元重(東京大学名誉教授)
アベノミクス第2ステージを迎え、実体経済が大いに変わっていく。中でも東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏が注目しているのは「雇用」の分野。そこから、日本経済の救世主が現れる可能性があるという。
時間:14分14秒
収録日:2015年9月17日
追加日:2015年10月22日
≪全文≫

●アベノミクスの行く手を阻むデフレマインド


 アベノミクスも第2ステージに入ってきました。第1ステージでは金融緩和等によりデフレマインドをつぶしていくことで、とりあえず動きを始めました。しかし、肝心なところは、これまでにここで何度も申し上げてきたように、やはり経済のいわゆるメインボディに当たるところです。消費、投資、雇用、地域のいろいろな経済活動などが本当に動き始めるかどうかが、今注目されています。

 これは一般論で考えてもそう簡単な話ではなく、政策が成功すれば、株価や為替や物価に跳ね返ってきます。まして消費や投資、雇用ということになってくると、経済の中に根強く蔓延しているデフレマインドが、やはり非常に悪い影響を及ぼすわけです。

 例えば、一般の国民、いわゆる消費者に話を聞いてみれば、「今は東京の一部ではアベノミクスで少し景気が良くなっているような話も聞くけれども、やはりこれから将来の老後の生活が心配だ」とか「日本経済は、またデフレに戻るのではないか」というような不安を持っています。そのため、積極的に消費を増やす気持ちにはなかなかならず、むしろ守りの姿勢を続けている。これが結果的には、日本の経済をさらに冷やしてしまうわけです。

 企業も同じです。これからの日本は人口が減少していくのだから、国内市場がそれほど伸びていくわけはない。従って、ここであまり調子に乗って投資をしても、そのリターンが回収できるかどうかは分からない。やはりここは、投資には慎重になろう、そのような見方をしている経営者が結構多いために、投資が増えていかず、景気もなかなか厳しくなってきています。


●「雇用」の中から日本経済の救世主が出現するかもしれない


 ここにどのような突破口をこれからつくっていくかということが、非常に重要な話になってきています。従って、アベノミクスのステージ2では、消費や投資が増えていくようなメカニズムをきちんと考えようと言っています。

 例えば、消費でいうと決定的に重要なのは賃金ですから、それを上昇させる方策を今後も続けることだろうと思いますし、投資については、企業に「投資をしていかないと将来がない」という意識を持ってもらうために、いろいろな環境づくりをしていく。その中で、今年度内に法人税を20パーセント台まで引き下げるような話も、今後は大きなステージ・イ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治