難民とテロ問題で揺れるヨーロッパ経済
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヨーロッパ首脳は難民とテロ対策で精一杯
難民とテロ問題で揺れるヨーロッパ経済
植田和男(第32代日本銀行総裁/東京大学名誉教授)
「難民とテロの問題を受けて、いまヨーロッパが難しい時期を迎えている」と東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏は語る。それはどういうことなのか。植田氏がヨーロッパの現状を多角的に分析する。
時間:9分33秒
収録日:2015年12月15日
追加日:2015年12月24日
≪全文≫

●ヨーロッパ首脳は難民とテロ対策で精一杯


 最近話題になっているヨーロッパの難民問題、テロ問題と、EU、ユーロ、ヨーロッパの金融政策について、簡単にお話ししたいと思います。

 ご案内のように、大量のシリア難民がヨーロッパに流入し、ひと月くらい前にパリで深刻なテロが起こりました。いろいろと話を聞いていますと、その後、ヨーロッパの首脳たちはさまざまな大事な会議で集まっても、誰もが難民とテロ対策の議論で精一杯で、他の大事な議論にほとんど話が進まないようです。もちろん、先週末には地球温暖化の会議があり、ある程度の進展を見たようですが、さまざまな会議をおおまかに見るとそういった傾向があります。ギリシャ情勢、ヨーロッパの預金保険制度といった重要テーマを含め、ほぼ全ての議論がいったん停止になっています。さらに、現在はシリア経由の難民が問題視されていますが、リビアなどの北アフリカ経由、あるいは東ヨーロッパルートも懸念されています。今後どうなるか、余談を許さない状況にあります。

 こうした中、一つ懸念される大きな変化が、ヨーロッパにおけるドイツの地位に低下傾向が見られることです。直接の原因は、アンゲラ・メルケル首相がダブリン協定を反故にしてまで大量の難民を受け入れたことがテロ危機拡大の一因になったという認識が、ヨーロッパ中にあることです。


●ヨーロッパは財政緩和の方向へ


 このような情勢が経済政策にどういった影響を及ぼしているかといえば、財政政策は明らかに緩和の方向に向かっています。難民とテロ対策という名目で、すでに多くのプロジェクトが進行しており、その一部はEU財政安定成長協定( Stability and Growth Pact)の枠外で行う方向で話が進んでいます。財政支出を増やさないと、右寄りの政党が票を伸ばしていくのではないかとエスタブリッシュメントが恐れているからです。財政政策には当面、緩和の力がかかり続けるでしょう。

 同様のことが金融政策にもいえます。12月の初めにあった前回のECB(欧州中央銀行)理事会で、市場予想をやや下回る決定しかなされなかったことも、ヨーロッパ全体を覆っているこうした空気が影響しているという見方が有力です。ECBのマリオ・ドラギ総裁は、今回の理事会の前の講演などで、思い切ったことをやるという趣旨の発言をしました。今回はその通り...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
こどもと学ぶ戦争と平和(2)「本当の平和」とは何か
「平和」には2つある…今の日本は本当に平和なのか?
小原雅博
いま夏目漱石の前期三部作を読む(9)反知性主義の時代を生き抜くために
なぜ『門』なのか?反知性主義の時代を生き抜くヒント
與那覇潤
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(6)『閉された言語空間』の問題意識
江藤淳と喧嘩…加藤典洋『テクストから遠く離れて』の意味
與那覇潤
大谷翔平の育て方・育ち方(9)大きな使命感を持って
「野球人気の回復に貢献したい」――大谷翔平の強い使命感
桑原晃弥
新しいアンチエイジングへの挑戦(6)ビタミンとお米とアンチエイジング
日本人に必要な栄養素は?幹細胞治療をどう考える?
堀江重郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉