イランのダブル選挙
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「保守強硬派VS穏健改革派」よりも重要な問題がある
イランのダブル選挙(1)二項対立の奥で戦われたもの
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
揺れる中東情勢の中で、存在感を高めているのは、経済制裁が解除されたシーア派の大国イランだ。活発化するビジネスを中心に国際社会への復帰が急ピッチに進むイランで、このほど二つの国政選挙が行われた。それらが持つ意味と、国際政治に与える影響について、歴史学者・山内昌之氏が、さまざまな角度から分析を加えていく。(全4話中第1話)
時間:10分17秒
収録日:2016年3月2日
追加日:2016年3月31日
カテゴリー:
≪全文≫

●現大統領支持派が圧勝したイランの国会選挙


 皆さん、こんにちは。

 イランでは、2月26日に国会議員選挙と、イラン独特のものである専門家会議の選挙が行われました。そして、イラン政府から2月28日に国会選挙の中間開票状況が発表されています。

 イランの国会は非常に独特な制度を持っているため、選挙後一カ月ほど経てからでないと最終的な議員数が確定しません。その理由は後ほど説明しますが、定員は290人で、そのうち最終的な議席数としてどれほどを保守強硬派が取り、どれほどを改革穏健派が取るのかについては、その後の経緯を待たなければならないということになります。

 しかし、首都テヘランにおいては、ハッサン・ローハニ大統領支持派である改革穏健派連合(穏健改革派)が30議席の全てを独占したことが判明しています。また、地方をはじめ、他の選挙区においても、改革穏健派が議席を大きく伸ばす見通しです。

 昨年来、米欧との間で核開発の一時停止を定めたウィーン最終合意。それによる経済制裁解除によって外の国々との通商貿易を再開するオープン・ドア・ポリシー。こうしたイラン国政の流れを大きく評価する姿勢が、大統領支持派につながる改革穏健派連合を今回躍進させた理由ではないか。一般的には、このように報じられています。

 他方、反大統領派ともいうべき保守強硬派が、これまで3分の2を占めてきた議席を失うことが確実になりました。現在、国会において、わずかに16議席しか持っていない改革派系がテヘラン選出の国会議員数だけで30を独占したことから、今後のイラン政治や外交において、改革派系が影響力を強めることは確実かと思われます。

 私は、この1月にイランに行き、テヘラン、エスファハーン、シーラーズを訪ねました。そこで今日は、こうしたイランの直近の国会議員選挙の動向について、現地でつぶさに見てきた状況への印象なども含め、国際政治との関係の中で触れることができればと思っています。


●「専門家会議」の選挙でも改革穏健派が票を伸ばす


 日本ではほとんど報道されていませんが、国会選挙と同時にもう一つ重要な選挙が行われています。それは、88人の議席数を持つ「専門家会議」の選挙です。

 イラン・イスラム共和国憲法第1条によって、最高指導者すなわちシーア派12イマーム派の最高指導者は、同時にイラン・...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子