イランのダブル選挙
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「美しい友情の始まり」はイラン民主主義に結実するのか?
イランのダブル選挙(4)国民が発信したシグナル
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
明治大学特任教授・山内昌之氏が2月に行われたイランの選挙について、投票率の数字だけでは読み取れない、イラン国民の政治体制に対する隠されたメッセージについて解説する。これはイラン民主主義の将来を見据えた歴史的分析である。(全4話中最終話)
時間:9分14秒
収録日:2016年3月2日
追加日:2016年4月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●軽視できない国民の社会的理性


 皆さん、こんにちは。今日は、イランの選挙のプロセスと結果についての私の分析の最終章になります。

 イランの現大統領、ハッサン・ローハニは、これまで行われてきた選挙と同じように、やはりある種の限界を持った大統領であることは、申すまでもないわけです。つまり、イランにおける選挙とは、民衆の異議申し立てを巧妙に使う。あるいは、不満を感じる民衆や有権者たちが、現在のイスラム政治体制が与えている枠組みや選択肢の中で、それなりに民主的な装いと手続きによって、何を選ぶのか。もしくは、このイスラム政治体制の中でどのように新しい息を継ぐのか。さもなければ、そういう枠組みを壊さない指導者を選ぶのか。言ってしまいますと、ローハニは、こうしたイラン政治で働いてきた社会的な理性や政治的な判断力を非常にクレバーに使って当選した大統領だということになるのです。そして、イランにおいては、今のイスラム政治体制という枠組みがある限り、こうした基本的な抑止力や自己規制が働かざるを得ない構造になっている。ここにイラン政治の特徴があるのです。


●投票した者としなかった者の間にある弁証法


 一見すると、メディアで報道されているような改革穏健派対保守強硬派という二項対立や二つの対比関係は重要に思われますが、イランの政治で重要なファクターを隠しています。それは、何よりも歴史的に中東きっての非常に長い伝統を持ち、文明論的に高い自負心を持つイラン人の、ある重要な政治における一種の弁証法を隠すことになっているということです。弁証法、すなわち、相対立する構図、対立はしているけれども、その対立の中から一つ新しいものが生まれるという構造が、ヘーゲル以来の弁証法の構造です。

 つまり、このイランの弁証法の構造とは何かというと、最初の話に戻りますが、私の考えでは、投票した者としなかった者、投票する者としない者との間の弁証法です。投票した人も、イランにおける民主主義の存在や、民主主義的に機能するとは到底思っていないイラン・イスラム政治体制に、全幅の信頼を置いているわけではない。しかしながら、彼らはあるメッセージを、イラン国内だけではなく、イラン国民として世界に発信したいという思惑が、彼らを投票に走らせたということです。


●選挙を通じて世界に発信された二種類のメッセージ


 そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
編集部ラジオ2025(23)垂秀夫元中国大使が語る習近平中国
垂秀夫元中国大使に習近平中国と米中関係の実態を聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える
今井むつみ
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(2)日本を根本から検討し直す
常識を覆せ…「無税国家」「剰余金分配国家」は実行可能だ
松下幸之助
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子