「テロ」とは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
アサシンとは「山の老人」に由来…現代のテロリストとの違い
「テロ」とは何か(3)長期の理想より目の前の危機対策
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、日本にとっても世界にとっても早急に向き合うべき問題として「テロとは何か」を解説する。山内氏が着目したのは、歴史上に見る中世の暗殺集団アサシンと現代のテロリストの違いだ。テロという特異な殺害行為について、歴史的視点を交えて考える。(全4話中第3話)
時間:10分17秒
収録日:2016年4月5日
追加日:2016年5月2日
≪全文≫

●「山の老人」に操られた中世のアサシンたち


 皆さん、こんにちは。

 欧州と中東にまたがる複合危機を生み出しているテロと戦争の問題は、グローバルな危機になる可能性を秘めている、あるいは、既にそうした方向に向かっている危険性さえあります。その中で、こうしたテロや戦争の当事者たちは、一体いかなる存在なのかということについて、少し解釈を試みてみたいと思います。

 欧米の学者の中には、彼らを「アサシン(Assassin)」と呼ぶ人がいます。アサシンとは英語で「暗殺者」という意味ですが、これは実はもともとアラビア語で、アラブに由来する言葉でした。中世のシーア派の一分派にニザール派(ニザーリー)という集団があり、この集団に対して、アラビア語で「ハシシーン」という言葉が寄せられました。このハシシーンがなまって、ヨーロッパでは、特に英語の場合はアサシンと名付けられるようになったのです。

 なぜこのような用語になったかと言いますと、「山の老人」とあだなされるニザール派の絶対的な指導者ハサーン・サバーハ(ハサーネ・サバーハ、ハサン・サッバーフ)と呼ばれる人物がハシーシュ(麻薬)を若者に与えて、その麻薬の力で陶酔させ、陶酔状態のもとで若者を刺客に仕立て上げて各地に派遣し、人々を暗殺していったという伝承が残っているからです。そこから「ハシーシュ(麻薬)を使う暗殺者」という意味で、アラビア語のハシシーンという言葉がアサシンになまって伝えられたというのです。この話はマルコポーロの『東方見聞録』などにもありますし、その前にはダンテの『神曲』などにも通じるヨーロッパ人のイスラムに対するイメージの一つでした。


●近世以降、アサシンの殺害行為は無差別化した


 ところが、このアサシン、ハシシーンたちが実際に暗殺したのは、ヨーロッパから来た侵略者である十字軍、あるいは、その土地のトルコ人がつくった王朝であるセルジューク朝などの高い位にある政治や軍事の指導者たちであって、現在のIS(イスラム国)のように一般の兵士はおろか一般の市民たちも含めて無差別な殺害行為をしたわけではありません。むしろ、今日のISや欧州人テロリストの特徴とは、アサシンのように限定された暗殺を行う暗殺教団だという点にあるのではないのです。

 また、これは最近、イスラム評論家の一人であるアミール・ターヘリーという人...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む(1)米国第一主義の台頭
1920年のアメリカファースト…ハーディング大統領の勝利
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(35)鶴見太郎先生の公開収録を振り返る
【10min紹介】鶴見太郎先生の公開収録を振り返る・・・お寄せいただいた声
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
「満洲」から考える日本とアジア(8)日貨排斥と満洲事変の原因
なぜ満洲事変が起きたか…激烈な日本排斥と朝鮮人迫害、さらに一方的な条約無効化に直面した日本人の決断と失敗
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
50代からの親の介護~その課題と準備(2)マネジメントとしての介護
介護を「プロジェクト」と捉え、マネジャーに徹すべし
太田差惠子
現在の宇宙の姿(2)太陽系から星の世界へ
太陽系とその外に広がる星の世界との関係
岡村定矩
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫