●テロへの心構えは「カメレオンのように」
皆さん、こんにちは。まもなく5月に伊勢志摩サミットが始まろうとしています。また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックの大きな大会が開かれます。こうしたタイミングの今こそ、「テロとは何か」や「テロをいかに防止するのか」といった問題が日本の国民にとっても大変大きな関心事になってきているかと思います。
それを私たちに痛感させたのは、2015年1月の「シャルリー・エブド」雑誌社の襲撃テロ、同年11月のパリにおける同時多発テロ、さらに今年3月のブリュッセルにおけるテロといった一連の事件に他なりません。これにより、欧州の複合危機は中東の複合危機と並んで、私たちにとって大変大きな関心事になってきていたのです。
アフリカの東側にマダガスカルという島があります。ここでは、「カメレオンのように動け。前を見よ。そして後ろにも目を凝らせ」ということわざが用いられます。テロに対する私たちの心構えを示すものとして、このマダガスカルのことわざは、誠に適切だといえるでしょう。
●局地ではなく世界危機の様相を呈する複合危機
4月1日に終わった核安全サミットにおいて、アメリカのバラク・オバマ大統領は、過激派組織イスラム国(IS)の核テロを許さない決意を内外に公言しました。また、昨年1月のパリ週刊誌襲撃テロから今年3月のブリュッセル同時テロに至る間に、フランスのフランソワ・オランド大統領をはじめとするヨーロッパ各国の首脳たちからは、「われわれは戦争状態にある(We are at War)」といった発言が相次いでいます。
通常の国家間の関係においては、仮に緊張状態が高じても、国際政治でいうところの「核抑止力」が効くことが普通です。ところが、問題は、核物質テロを防止する方策が、まだ未知の世界に属しているという点です。結局、21世紀の現代社会においては、かつて私も10MTVでお話ししたように、「ISと国家間のポストモダン型・ハイブリッド型の戦争終結に即効薬はない」というのが、私たちの直面している現状です。
私たちは伊勢志摩サミットをどのように成功させるのか。あるいは来るべき東京オリンピック・パラリンピック大会を、いかに平和裡に世界の人々に向かってアピールし、安全に運営していくのか。こうした点で、日本が大切にすべきは、現在...