社会的インパクト投資~社会課題を解決する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
医療や介護――投資は社会課題を解決できるのか?
社会的インパクト投資~社会課題を解決する(2)新しい投資モデル「SIB」
工藤七子(一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF)常務理事)
公的財政支出をいかに抑えつつ、社会課題を解決し、大きなインパクト(影響)を与えるか。日本をはじめ全ての先進国で構造的財政赤字が進む中、社会課題の解決を税金に頼らない仕組みづくりの一つとして今、日本の社会的インパクト投資で「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)が注目されている。日本財団社会的投資推進室・工藤七子氏が語る「社会的インパクト投資」第2話では、このソーシャル・インパクト・ボンドの世界と日本の現状を紹介する。(後編)
時間:14分54秒
収録日:2016年3月18日
追加日:2016年5月9日
≪全文≫

●成果主義で社会課題を解決するボンド


 いま日本のこの分野でおそらく最も注目されているのが、「ソーシャル・インパクト・ボンド」と言われる新しい取り組みです。これは、2010年にイギリスでスタートしたまだ始まったばかりの取り組みですが、これを日本でも導入できないかということで、われわれも検討を続けているところです。このソーシャル・インパクト・ボンドについてご説明していきます。

 ソーシャル・インパクト・ボンドとはどういう仕組みかというと、通常であれば行政が行う公共サービスの提供を、いったん民間投資家(資金提供者)の資金で実施します。それがうまくいって所定の成果が達成されれば、行政が少しのリターンをつけて民間の資金提供者にお金を返します。もし成果が達成されなければ、行政はお金を払わなくていい。こういう仕組みになっています。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)、もしくはPPP(パブリック・プライベート・ パートナーシップ)という官民連携のスキームは日本でも導入されていますが、そのもう少し発展したバージョンとご理解いただければよいかと思います。

 通常、行政は活動費にお金をつけますので、民間に委託をしたり補助金を出したりするときも、「何をやるか」というアクティビティにお金をつけるのが一般的な助成金の世界ですが、ソーシャル・インパクト・ボンドでやろうとしていることは、何をやったかではなく、活動の成果がどう出たか、活動の結果として社会課題解決がどの程度達成されたかに対してお金を払おうという「成果連動支払い」がベースにあります。


●財政問題と社会課題を同時に解決したい


 なぜイギリスでこうした動きが発展したかというと、やはり一番大きな背景としては、財政問題です。先ほど、デーヴィッド・キャメロン首相がこうした政策を後押ししていると申し上げましたが、またイギリスに限らず先進国はどこもそうですが、構造的な財政赤字で、ずっと政府の債務超過が続いていく。これは、先進国に関してはもう今後ずっとこういう傾向が続くわけです。そうなってくると、やはり政府だけではこの公共サービスを支えきれません。どうやってそこに民間のノウハウや資金や知見を導入していくかが、一番大きなテーマになっています。

 もう一つ非常に重要な観点としては、どうやって財政支出を抑制しながら課題...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏