人工知能のディープな可能性
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ディープラーニングの特徴量抽出でロボットが人間に近づく
人工知能のディープな可能性(3)日本が重視すべき側面
科学と技術
松尾豊(東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻長 教授)
ディープラーニングが可能にしたのは、森羅万象の中から「何が重要か」という特徴を取り出すことだった。現在の計算システムが誇る高い処理能力によってもたらされたこの技術は、やがて言葉を理解する人工知能すら生み出すだろう。そのような人工知能を、日本はどう生かすべきか、東京大学大学院工学系研究科准教授・松尾豊氏が解説する。(全4話中第3話)
時間:11分55秒
収録日:2016年1月15日
追加日:2016年5月16日
≪全文≫

●現在の計算処理技術がもたらした、人工知能技術の進展


 昔から人工知能の分野には、「モラべックのパラドックス」という問題が知られています。これは、子どもができることほど、コンピュータにやらせるのは難しい、ということです。

 実は、人工知能の研究が始まってから比較的早い1960~70年代に、定理を証明する人工知能であるとか、チェスを打つ、あるいは医療の診断をするような人工知能などは、次々に実現しています。ところが、画像を認識したり積み木を上手に積むといった、子どもでもできるようなことは、一向にできるようにならない。何十年たってもできるようにならない。ということで、これは非常に逆説的である。簡単に思えることほど人工知能にとっては難しいということで、パラドックスだと言われてきたわけです。

 それが、ここ3年ぐらいの間に急速に変わりつつあります。画像認識では人間の精度を上回るぐらいになりましたし、運動の習熟もできるようになってきました。結局そこで何がポイントだったかというと、世の中の森羅万象から、「どういう情報が重要なのか」という、特徴量を取り出すところ、情報を抜き出すところが、実は一番計算量が多く、最も大変だったのです。

 これは、現在ディープラーニングで画像認識する場合にも、最新のGPUのサーバーを使って、これを何台も並列に並べて、何十時間、あるいは時には何千時間も計算し続けて、それによって、ようやく人間と近いところまで学習が進むわけです。つまり、現在のコンピュータの計算量をもって、ようやく可能になってきているということです。


●「特徴量の抽出」は、赤ちゃんの時にやっている


 人間の場合、おそらくこういった特徴量の抽出という作業は、赤ちゃんの時にやっているのではないかと思っています。0~1歳の時に、ただ泣いて寝ているだけかというと、そんなことはなく、非常に重要な学習をしているはずです。おそらくは、先ほどのオートエンコーダのような仕組みによって、自分が次に何を見るのか、何を聞くのかを予測しながら、その予測に寄与するような特徴量を取り出していっている。それを下から次々と積み上げている。こういうことだと思います。

 2歳ぐらいになると、言葉を覚え始めます。お母さんが「猫だ」というと、それが猫であることが分かるようになります。赤ちゃんがそれを猫だと覚え...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子