●ロシアは米ロ関係の緊張感を決して図らない
皆さん、こんにちは。今回は、前回に引き続いて、4月27日、28日にロシアで開かれた「第5回モスクワ国際安全保障会議」に出席した私の印象と会議の内容をご紹介したいと思っています。
ロシア政府はこの大会に力を入れており、セルゲイ・ショイグ国防大臣、セルゲイ・ラブロフ外務大臣、FSB(ロシア連邦保安庁)長官のアレクサンドル・ボルトニコフ大将などが国際テロ、安全保障に対する重要なメッセージを発していました。
ラブロフ外務大臣も、もちろん基本的にはショイグ国防大臣と同じメッセージですが、外交官である分、独特な表現のあやがありました。いずれにしても、まず2人に共通するのは、ラブロフ外務大臣の表現を借りると、ロシアがシリア情勢に関して現実的に事態に対処している唯一の外国の当事者だと位置付けたことです。ラブロフ外務大臣は、シリア紛争でのロシアの態度は真剣そのものだと語り、シリア軍と協力していることも率直に認めました。そして、シリア政府と協力して行っているロシアの軍事干渉こそが、テロリストを屈服させ、敵対行為の停止に向けた環境を整えて、人道支援の供給、政治的正常化に向けたプロセスの開始をもたらすと主張したのです。その際、政治的正常化に向けたプロセスの開始は、もちろんアメリカとの協力関係の中でも可能だと述べ、ロシアは米ロ関係の緊張を決して強めないと強調した点に、ショイグ国防大臣と比べて、ラブロフ外務大臣の外務大臣たるゆえんがありました。
その一方で、IS(イスラム国)に関しては、単なるテロの脅威というだけでなく、ISの存在、その冒険的な活動が各国主権の否定につながっていると述べ、ISは国際秩序の破壊分子であり、全ての国にとって許すことができないと、強い表現で批判していました。その上、一部で化学兵器を利用したことが報じられているように、化学的な知識や技術の高度化によって、ISがさらに危険な存在になる可能性が新たに浮上してきたと、ラブロフ外務大臣は述べています。
それから、今起きている事態は、スンナ派対シーア派の闘争、すなわちサウジアラビアを軸とするアラブのスンナ派と、イランを軸とするシーア派、シリアのアラウィー派というシーア派分派による闘争という側面もあるけれども、一方では、10年来のイラン、シリア、イラク、リビア...