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海底で働く自律型海中ロボットの作業をスライド解説!

自律型海中ロボットは何を目指すか(3)海に眠る鉱物資源

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
情報・テキスト
近年、日本周辺には海底鉱物資源が豊富にあることが分かってきた。海中ロボットの研究を進める九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏は、日本は地の利を生かして新技術開発を率先して行うべきだ、と主張する。ハードルが高いからこそやりがいのあるその技術開発の一端を伺う。(全4話中第3話)
時間:13:21
収録日:2016/01/12
追加日:2016/07/13
タグ:
≪全文≫

●有望資源コバルトリッチクラストの弱点


 次は、コバルトリッチクラストです。マンガン団塊は団子のようになっているのですが、コバルトリッチクラストは、平頂海山という海山の中で平らな山頂になっているところにアスファルトのようにベターッと覆っているというように理解していただければいいかと思います。ですから、その性質、含有している金属、レアメタルとかレアアース、それはマンガン団塊と同じようなものがあります。

 これは、白金の資源として非常に期待されているところがあるのです。しかし、研究は進んでいません。あとで申し上げる熱水鉱床と違って、ここは死の砂漠のようなものです。つまり、飛行場のようなところを研究しても、あまり面白くない。熱水鉱床は温泉地帯ですから、ここへ行くといろいろな面白いことや、アクティブなことがあって楽しい。ですから、科学者たちは、熱水鉱床には行きます。熱水鉱床という言い方はちょっとまずいかもしれません。熱水地帯と言ってもいいかもしれませんが。そこに行って研究をしています。しかし、この死の世界のような、あるいは飛行場の滑走路のようなコバルトリッチクラスト地帯には、あまり研究者がいないということが事実です。しかしながら、鉱物資源としては非常に期待されています。


●知りたいのは厚さ-計測の新技術を開発


 これはそのサンプルの断面ですが、ここにアスファルトのようなものが見えていますね。10センチぐらいの厚さの黒いものがあります。これがコバルトリッチクラストです。下は母岩ですね。このコバルトリッチクラストがどのくらいの厚さかということが、とても重要です。それが鉱物資源の埋蔵量を決めますから。

 しかし、この厚さを調査するのは、なかなか難しいのです。具体的には、ドリルで穴を空けてこの厚さを測るという、力学的なやり方でしかなかなかできませんでした。そこで、われわれが何をしていたかというと、実はこれに関していろいろな研究をしてるいるのですが、音波を上から出すと、この表面で反射する音と、この中間、母岩とコバルトリッチクラストの間で反射する音が返ってきますね。そうすると、この厚さ分だけ時間差ができます。その時間差を測って、なんとかこの厚さを非接触で測るのです。皆さん方がお腹をグリグリ超音波でやると、結石がたまっているのが分かったりしますが、あれと同じような原理です。それによってこの厚さを測ろうという道具を開発してきました。もう20年前ぐらいから、いろいろやっていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そこで、われわれは新しい技術を使って、厚さを測ることに成功したのです。その紹介は、あとで少ししましょう。


●地域的利点からも率先して技術開発をすべき


 これは、平頂海山の図です。平頂海山の上にマンガンリッチクラストがこのようにベターっとなっています。こういうところにくっついています。例えば、1500メートルぐらいの深さです。この上は平らなので砂がたまっているのですが、この下にもマンガンリッチクラストがあるのか、ないのかとは、よく分かっていません。しかし、砂に埋もれているものは取りにくいから、露出しているものをベリベリっとはがしてきて、あるいは、グラインダーでグリグリグリっとやって取ってくれば、鉱物資源、白金が取れるのではないか、と期待されているわけですね。

 これは日本ですが、実は日本のそばに平頂海山というか、海山が山のようにあるのです。プレートテクトニクスで、太平洋の底は、アメリカ側からずっと何億年もかかって日本にやってきています。つまり、太平洋のアメリカ側は若い海底で、日本側は古い海底なのです。そうすると、この古い海底のところに長い間かかってコバルトリッチクラストができるということなので、太平洋の西側に特有の、と言ってもいいのですが、そういう鉱物資源なのです。つまり、これは日本の側にある日本独自の、という言い方は変ですが、日本にとって地域的にやりやすい鉱物資源であると思っています。したがいまして、日本がこれを攻めて開発をするということは、日本にとってやりやすいことだと思うのです。アメリカだと遠いということですね。

 それで、私はコバルトリッチクラストを開発するための技術開発は、日本が率先してやるべきだと思っています。今は採算が合わないかもしれない。しかし、数十年後には採算が合うようになるだろう。それは、今から技術力を高めなくてはいけない、ということです。これに対して、実は中国も韓国も同じく近いのですから、興味を示しています。彼らに負けないようにするためには、われわれは率先してここの開発をするための技術開発をしなければならないと思いますね。


●新技術は開発意欲にも影響する


 その一番重要なのは潜水機械で...
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