●海底鉱物資源開発の要・熱水鉱床
続きまして、熱水鉱床です。熱水鉱床とは、今わが国が一番力を入れている海底鉱物資源の開発のターゲットです。これは、今から20年ぐらい前に描かれた絵で、最近は若干違うのですが、これで説明します。
海底の下から火山の熱が上がってきます。そうすると、海底の土や岩の中には水がありますから、その水が温められて温泉のように移動します。これが上がってくると、冷たい水が上から入ってきて、また循環して出ていくということになります。そうすると、実は1000メートルも超えるような深いところ、つまり100気圧、それから、300度、400度、500度といった高い温度のところでは、この高温高圧の海水はいろいろなものを溶かして移動します。そして溶かしているものは鉱物資源です。それが噴き出すと、この周りはゼロ度の水ですから、これがいっぺんに結晶になって落っこちます。これが今から20年ぐらい前に考えられた、海底熱水鉱床といわれるものです。熱水性堆積物があります。
しかし、こればかりではなくて、いろいろなところにも溜まったりしてくるということが最近分かってきました。ここの中には何が含まれているかというと、金、銀、銅、まるでオリンピックのようなものが溜まっているわけです。これを取ってくれば、重要なのは銅ですけれども、この銅が山のようにあるということが期待されているわけで、実際にあるのです。
●2種類の熱水活動-拡大軸と背弧海盆
それで、こういう熱水活動、つまり温泉地帯は一体どこにあるのかということを知らなくてはいけません。もちろんわれわれは今、道具をつくって探しているわけですけれども。熱水活動、つまり、海底からこういう温泉が噴き出しているところは、2種類あります。拡大軸(rift valley)と背弧海盆(back‐arc basin)といわれてます。この二つのところに熱水活動があるということが分かっています。
これは、日本を通るところを切片として地球をぼろっと切ったところで、「島弧」と書いてあるのが日本列島ですが、南アメリカ大陸、アメリカ大陸があって、太平洋プレートがあります。ここの東太平洋中央海嶺(East Pacific Rise)と言われているところですが、ここの海底から熱水が湧き出して、ずっと1億年かかって移動して、日本海溝から日本の下に沈み込んでいるというのが、プレートテクトニクスの教えるところです。先ほどありました拡大軸というのは、ここに対応します。つまり、地面が出て広がっているところです。それに対して、背弧海盆は、この島弧(arc)の後ろに火山ができます。火山が熱水地帯で、“back‐arc basin”とは、「島弧の後ろにできている海」を意味しています。
これは“rift valley”の説明ですが、実は日本の熱水地帯とあまり関係がありません。これは大西洋のど真ん中にある中央海嶺といわれるものです。back‐arc basinはどこかというと、このように弧状列島がつながっています。これは小学生の地理の時に習っているかと思います。この弧状列島はどうなっているかというと、この日本の右上のところが沈み込み帯になっており、プレートがそこに沈み込んでいるわけです。これの後ろ側に火山列ができます。ずっと火山です。
●熱水地帯の宝庫・沖縄トラフ
ここの沖縄トラフを見てください。実は沖縄トラフのところがへこんでいます。なぜへこんでいるかというと、ここは少しずつ開いています。開いているところの中に熱水活動が起こるのです。この沖縄トラフの場所は、いろいろ熱水活動があって、今われわれが非常に注目しているところです。このへこんでいるところが沖縄トラフといわれるところですが、第四与那国海丘群、伊是名(いぜな)海穴、伊平屋(いへや)北フィールド、野甫(のほ)サイト、久米島沖ゴンドウサイト、こういう大規模な熱水地帯があり、熱水活動が起こっています。
例えば、第四与那国海丘群がどこにあるかというと、ここ、与那国島と台湾の真ん中あたりにあります。ここは有名な尖閣諸島です。この絵は何を示しているのかというと、黒潮が流れているところです。これは、今年2016年1月8日付(1月7日)の黒潮の流れなのですが、実は第四与那国海丘群は黒潮のど真ん中にあるということをよく覚えておいてください。
●海底の小さな山は「名無し」という現実
それから、これは第四与那国海丘群なのですが、このような海山があります。例えば、有名なのはここですが、非常にアクティブな熱水活動が、今から20年ぐらい前に発見されました。これは音波でつくった海底地形図ですが、ここに名前が書いてあります。この全体は第四与那国海丘群ですが、それぞれの山には名...